枯渇することが無い神秘の泉
『クラッシュ・バンディクー』の開発費が判明
Naughty Dogというのはアメリカのサンタモニカにあるゲーム開発会社で、『アンチャーテッド』シリーズや『The Last of Us』シリーズなどの非常にクオリティの高い、いわゆるAAAタイトルと呼ばれるような世界中で売れる大ヒットゲームを手掛けている会社です。
そのNaughty Dogがソニー(SIE)に買収されたのは2001年のことでした。
(記事内にもありますが)当時から「ゲームソフト開発費の高騰により安定性を求めて売却を決めた」という報道がなされていたので、記事の内容は概ね思った通りの内容でした。
ただ個人的に、ひとつだけしみじみと当時を懐かしむ一文があったのでピックアップしたいと思ったのでした。
「当時のPlaystation専用ゲームソフト『クラッシュ・バンディクー』ですら開発費が2億5,000万円かかっていた」
2億5,000万円だったのか!お前!?
現在となっては、もう、高いのか安いのか判断が難しい数字に見えますが、参考のために(感覚を合わせるために)述べておきますが。
当時、我々サイバーコネクトが手掛けていたPlaystation専用ゲームソフト『テイルコンチェルト』の開発費がおよそ7,500万円程だったのです。
1996年から1998年のおよそ1年半くらいの年月をかけて『テイルコンチェルト』の開発を行っていた我々の横で発売された『クラッシュ・バンディクー』(1996年)のクオリティに驚愕したのです。
そのあまりにも高いグラフィッククオリティと遊びの心地良さに「本当に同じゲーム機で開発された作品なのか!?」と震えたほどです。
しかし、その当時は現在ほど(特に海外のゲームスタジオの)開発事情や予算などの情報はまるで出てくることもなく、いったいどれくらいの開発費を使って作られているのかは想像するしかありませんでした。
どうやって想像するかというと、スタッフロールに表示される開発スタッフの人数です。
自分たちが手掛けているゲームの開発規模や人数はわかっているので、それと比較してどれくらい多いのか?という観点でスタッフロールを眺めながら人数を数えていたのでした。
当時の我々の開発人数はサイバーコネクトだけで12名、挿入されるアニメーションの制作スタッフの数がおよそ20名、それとは別に声優さんや主題歌担当のKokiaさんや周防さんの名前を入れても50名程度でした。
それに比べて『クラッシュ・バンディクー』のスタッフロールにはその3倍以上の人数が表示されていたのです。(たぶん150名くらい)
「え、ウチらの3倍以上の人数で作ってるってこと?それだと2億円以上の開発費を1本のゲームソフトに投じているってことになるけど?そんなことってある?5,800円で売るゲームソフトに?そんなに使えるの?」
まだ本当に純粋で無垢で若かった我々は真剣にそんなことを仲間同士で語り合っていたのでした。
それから25年以上の時を経て、ようやくこのタイミングで答え合わせができたということです。
答えは、本当に2億5,000万円だったようです。
やっぱりそれだけのお金がかかっていたんですねぇ。
まぁ、だからといって「それがどうした」というレベルの話でしかありませんよ?
どうということは無い話なんですよ。
『クラッシュ・バンディクー』の開発費が高かったからといって、我々が手掛けるゲームソフトの開発費が上がるわけでもありませんからね。
結局のところ、他所は他所、ウチはウチって話でしかない。
そう、それだけの話なんです。
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こんなにかけてるのはお前らだけ
ただ、その頃の話をしておくと、ですね、クライアントだったバンダイの当時の担当からはこんなことを言われていたのですよ。
「いいですか、7,500万円もの高額な開発費を投じてゲームソフトを開発しているのは御社くらいですよ。わかりますか?我々がどれだけあなたたちに期待をしているかってことが。金額の大きさは期待値のあらわれなんですよ。他の会社はもっと安い開発費で仕事をしていますからね」
たぶんですが、この時のバンダイの担当者の言葉に嘘があったわけでは無いと思っています。
本当に期待をしてくれていたし、我々に投じてくれた開発費が7,500万円でも高額だったことは事実だったんだと思います。
後から聞いた話ですが、他社では3,000万円やだいたい5,000万円未満で開発をする会社が多かったようです。
当時から「クソゲーのバンダイ」と呼ばれる所以というか、その理由がなんとなく伺える気もしますが。
やはりこれも当時から言われていたことではありますが、「じゃあ、高額の開発費を投じれば必ず面白くて売れるものが作れるんですか?安い開発費で作られたものは全てが駄作ですか?そんなことは無いでしょう?ものには身の丈に合った金額設定というものがあります。もちろんお金は無限にあるわけではありませんからね。足りない分は知恵と勇気で補っていきましょう」なんてことを繰り返し洗脳されるほど言われましたね。
それくらい周りが見えていなかったんです。
自分たちのことしか見えていない。
当時のバンダイも我々サイバーコネクトも。
目の前のことだけで必死で余裕が無い。
だから考えない。
いつも足りないのは努力と情熱。
ずっとそう言い聞かせて愚者の行進を続けていたのでした。
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枯渇することが無い神秘の泉
「常に足りないのは努力であり根性でありやる気であり情熱だ」と自分たちに言い聞かせてものを作り続けていました。
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