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モラトリアム、文学に勤しむ

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私の小説、エッセイをまとめます。
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#小説

『証言①:或る思想犯の失踪について』

『証言①:或る思想犯の失踪について』

「私は、この部屋で彼と暮らしていました。朝、同じ時間に起きて、同じ朝食を食べ、同じ職場へと、同じ電車で通っていました。仕事内容も基本的に同じで、彼はよく私に相談に来ました。仕事が終わると、同じ電車に乗って帰り、同じタイミングで家につき、同じ夕食を食べます。私たちは常にとは言いませんけど、一日の内のほとんどの時間を共にしていたのです。しかしまあ、彼は疲れると私よりも早く眠ってしまうので、夜、眠る時間

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四千字:小説『ニヤニヤ』

四千字:小説『ニヤニヤ』

スズキは昔から芯の通った男だった。自身の中にある確固たる意志は、時に周りを巻き込み、時に疎まれもしたが、確固たる意志を持つ彼にとってそれは大きな問題ではなかった。彼にとっての問題と言えば、彼が生きている社会の問題それ自体だった。どういうわけか鬱屈した日々を生きることになった彼にとって、そういった問題は真に迫り、自分を当事者として考えないでいることは不可能だったのだ。しかし、周りの人はそうではない。

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『ほぼ帰宅部』

『ほぼ帰宅部』

「りょうはどれにする?」

「俺もその緑のやつ。くそまずいやつ。」

「くそまずいやつをを奢る身の上を考えろ。」

百二十円。二月はまだ寒空、くせっ毛の隙間に見えるピアスの穴が、かじかんで赤くなっているのが見えた。その痛さが、シュウだと思った。

中途半端に田舎、つまんないやつばっかの公立高校。ここはその最寄り、時代遅れの小さな駅舎。地面に張り付いたガムが黒くなっている階段は入り口の近く。その脇に

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シン・不条理

シン・不条理

小学四年生の初夏のある日。給食後の昼休みは、いつもと同じように、校庭に遊びに出た。僕はそこで、同じクラスのメンバーと、"ボールの当てっこ"というなかなか殺伐とした遊びをやっていた。
しかし僕はその遊びの殺伐さに疲れたのか、なんとなく楽しくなくなって、校庭の脇の、大きな桜の木の元へと一人駆けていった。

一人、桜の幹にもたれ、キーキー言っている同学年のチビどもを見ながら息を吸っていると、桜の木の上の

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1分小説『新人類』

1分小説『新人類』

午後0時47分。人類は夜に寝て朝起きるが、当方は早朝寝て昼起きる新人類だ。四時間やそこらで思考が冴え渡るわけもなく、ぼんやりとした朝の風景。はっきりとして見渡すまでもなく、見知った退屈な光景。

布団の中。乾燥、鼻とのどは常に不調。意に反して開かない目を、ブルーライトの光で無理矢理こじ開ける。誰からも連絡の来ないSNSは、誰とでも繋がれるということについてのささやかな矛盾を提供してくれる。可能性は

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1分小説『深夜、東京の地上30メートルでカップラーメンすする。』

1分小説『深夜、東京の地上30メートルでカップラーメンすする。』

「腹減ったな」

真夜中、ワンルームは月明りでまぶしいくらいだけれども、目が覚めたのはきっと食欲のせい。布団を這い出して、転がりながら台所へ。水垢のついたヤカンを東京の水で半分ぐらい満たし、コンロに叩きつけた。湯が沸くまでの間に窓を大きく開けて換気、無駄に見晴らしの良い線路前。食器棚を開けて食料の備蓄を探る。ここも見晴らしがよく、がらんどうの隅にカップ麺一人。赤と白、スタンダード、シンプル、イズ、

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