映画パンフレット感想#29 『胸騒ぎ』
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感想
上記に引用した公式の紹介にあるとおり「海外のタブロイド紙をイメージした」だけあってこのパンフレット、とにかくでかい。
そもそもタブロイド紙とは何ぞやと調べているうちに、「日本におけるタブロイド判は273×406mm」との情報を発見した。実際にパンフの寸法を計測してみると約272×約405mmで、ほぼ同寸。なるほど、ただ新聞風にするため無闇に特大にしたわけでなく、モチーフを忠実に再現してのこのサイズなのかと腑に落ちた。あまりのでかさに「持ち歩きに困る」「どうやって保管しよう」という声も聞かれたが、思い切って半分に折ってしまっても新聞のようでまた一興とも思う。
表紙もかなり凝っているが、中頁のレイアウトやデザインも全頁にわたって新聞のよう。新聞お馴染みの4コマ漫画が掲載されたり、面の最下部に映画や企業の広告を模したものが配置されるなど、随所に遊び心がある。「パトリックのレンタカー」という架空の広告には笑ってしまった。絶対に利用したくない。
デザインやギミックばかりに注目してしまうが、寄稿記事も数が多く内容が充実している。各記事、テーマがバラエティに富んでいるのも嬉しいところだ。ざっくり列挙すると、「北欧ホラー/スリラー映画の代表作を挙げながら傾向を明かしたうえで本作を読み解く記事」「犯罪心理学者の視点から本作の事件を現実的に分析する記事」「聖書や神話のコンテクストから本作を解説する記事」「本作の製作裏話や映画祭での反応など映画の外の出来事を解説する記事」「デンマーク映画史(主にホラー)から本作を解説する記事」の5つ。
オランダ人夫婦の凶行について、映画批評のアプローチで書かれた記事では人智を超えた悪の化身のように捉えているのに対し、犯罪心理学の観点で分析した記事でははっきりとした現実的な説明がなされているのがとても面白かった。監督の意図は、インタビューなどを読むに前者が近しいのだろうが、後者の解釈も決して間違いとはいえない。「観る者によって解釈が変わる映画の面白さ」を改めて知ることになった。
パンフレットにはクリスチャン・タフドルップ監督の長文コメントこそ掲載されているものの、インタビュー記事はない。監督の話に興味がある方には、下記の記事をおすすめしたい。私は本作鑑賞中、細かな意地の悪い描写に何度も笑ってしまったのだが、そのルーツが垣間見える内容だった。
……このnote記事を書きながら改めてパンフレットを眺めていたら……え、なぜここに血痕が……タブロイド紙なんじゃないの……(購入して気づかれなかった方はもう一度よく見てみてください)