【読書メモ】デジタル・ミニマリスト
「無目的にスマートフォンをいじるのを止めたい」「もっと有意義に時間を使いたい」と思っている方はきっと多いと思います。
自分もその一人です。
こうして拙文を認めている目的の一つは、だらだらとインターネットを漂流するだけの暇を削減するためでもあります。
スマートフォンやインターネットの長時間利用に警鐘を鳴らす趣旨の本は、すでにたくさん出ています。
今回紹介する『デジタル・ミニマリスト』は、デジタル機器やサービスの利用を最小限に抑え、有意義な生活を取り戻すためのアイデアをも提供してくれる一冊です。
中でもデジタル機器から離れることで得られる「有意義な生活」の解説が素晴らしいです。
複数の視点からメリットが示されており、読者が陽キャであれ陰キャであれ刺さります。
陰キャの場合:孤独という貴重な時間が失われる
内省よりコミュニケーションを優先する姿勢は深刻な問題につながる。一つには、孤独を避ければ、孤独がもたらすプラスの効果を逃すことになるーー困難な問題を明らかにする力、情緒を安定させる力、信念を貫く勇気、他者との関係を強める力だ。つまり、孤独が欠乏した状態が慢性的に続くと、生活の質は低下する。
カル・ニューポート『デジタル・ミニマリスト 』池田真紀子訳、早川書房 p.129
僕みたいな筋金入りの陰キャは、一人きりで過ごす時間がないと体調が悪くなります。
ぼっちモードに入っている時にLINEの通知音が鳴ると途端に不機嫌になってしまいます。
それでも通知は切れません。社会的に許されないからです。むしろ「メッセージには常にリアルタイムで対応する」のが常識で、僕のようにストレスを感じるほうがおかしいという風潮すらあります。
本書は僕みたいな人間を肯定し、むしろメッセージから遮断されることを推奨します。
この一節と、前後のより詳細な説明パートで、どれだけ救われたことか。
陽キャの場合:オフライン交流のほうがより良いコミュニケーションになる
ソーシャルメディアにおける特定の活動は、実験でそれだけを取り出して見た場合、控えめながら幸福度を向上させる。ここで重要なのは、ソーシャルメディアを利用すると、それよりもはるかに勝つの高いリアルの世界での社交の時間が減るだろうということだ。否定的な研究論文が示唆するように、ソーシャルメディアを使うほど、オフラインでの交流に費やす時間は減る傾向にあり、従って価値の不足幅は大きくなるーーソーシャルメディアのヘビーユーザーほど、孤独感やみじめな気分が強まりやすいわけだ。
同上 p.170
私たちの脳は、オフラインで相手と顔を合わせてする交流が唯一のコミュニケーションだった時代の進化の産物だ。オフラインでの交流は驚くほど豊かな経験だ。なぜなら、ボディランゲージや表情の変化、声の調子など、微妙なアナログのヒントから得られる大量の情報を脳内で処理しなくてはならないからだ。一般的なデジタル・コミュニケーション・ツール上で行われる低帯域幅のおしゃべりは、オフラインでの豊かな交流の幻を作り出すことはできるかもしれないが、人間の脳に備わっている高性能な社交プロセス・ネットワークには物足りない。つまり、せっかくの性能を生かしきれず、人間の高い社交欲を満たすことができないのだ。
同上 p.171
オフラインの交流>>>オンラインの交流 という図式は、誰もがわかっているところだと思います。
ただ、オンラインでの交流が多いほどオフラインの交流が減る、というゼロサム性に気づいている人は少ないのでは?
本書ではこのゼロサムの理由を詳しく説明し、いかに有益な交流を増やすかの具体的方策まで載っています。
これからの時代、どんどんコミュニケーションはオンラインで済ませてしまおうという傾向が強まるでしょう。
すると先述のような、コミュニケーションにまつわる問題が発生しやすくなるわけです。
今後の社会的変化の予防薬としても、本書は役立つことと思います。
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