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うつ病はひとくくりにできない病気

私は精神科で働く中で、
うつ病の病棟にも勤務していました。

自分自身も、うつの症状を経験しましたが、
それだけではなく、
多くの患者さんたちの苦しみを目の当たりにしてきました。

だからこそ、伝えたいことがあります。

「うつ病」と一言で言っても、その症状は人それぞれ異なります。


うつ病のタイプ

「気持ちが沈んで、何も言いたくない」タイプ
表情が暗く、ただじっとベッドで休んでいるだけ。
何を聞かれてもうなづいておわり、気力がない。
食欲も落ちるが、
なんとか自分で食べることはできる。
しかし摂取量は少ない。

「自分の苦しみを知ってほしい!」と泣き続けるタイプ
涙が止まらず、ひたすら訴え続ける。
「こんなに辛いの!」
「誰もわかってくれないの!」
「お願いだから聞いて!助けて!」
心の叫びが止まらず、話が終わらない。

「体が動かない、話せない、寝たきりになる」タイプ
ベッドから起き上がれず、
トイレにも行けないためオムツをつける。
声を出すこともできず、食事も取れず点滴をする。

「笑顔で普通に動けるけれど、実は苦しい」タイプ
 外から見れば普通に見えるため、
「本当にうつ病なの?」と周囲に思われがち。
でも、内側では絶望感と無気力が渦巻いている。

うつ病の症状は、これほどまでに多様です。
そして、これらは私が知る限りの話であって、
すべてではありません。

ただ、どのタイプも共通しているのは
「苦しい」ということ。


入院の受け止め方

うつ病患者にとっての入院も、
受け取り方は人それぞれです。

「これで少し休める……」
と安心する人もいれば、

「家族と離れたくない……」
「病院にいると気を使う……」
と不安でいっぱいになる人もいます。

同じうつ病でも、
・入院することで楽になる人
・逆に辛くなる人 がいるのです。


支えてきた家族の気持ち

患者さんが入院すると、
支えてきた家族の気持ちも様々です。

「やっと治療ができる……」
とホッとする人もいれば、

「病院に預けるなんてかわいそう……」
と罪悪感を抱く人もいます。

中には、
「ずっと支えてきて、もう限界だった……」
という家族も。

うつ病の症状が様々であるのと同時に、
家族の関わり方や気持ちも、
それぞれ異なります。


私の経験

私は高校生の時、
母がうつ病になりました。

無気力ではありましたが、
少しの食事と会話はできました。

ただ、その「会話」が問題でした。

私は普通の思春期の高校生で、
うつ病についての知識もなく、
何も調べていませんでした。無知。

最初は寄り添って話を聞いていましたが、
それが毎日続くと、同じ話ばかり。
自分のつらさ・不満・愚痴…

私自身もストレスを感じるようになり、
正直イライラしていきました…。

「じゃあ、こうすれば?」
「その考え方良くないよ。」
「それって、こういうことでしょ?」

結論を先に言ってしまったり、
アドバイスしたり、
母の考え方を否定したり...💧

こうなると、母も
「お前も、あの話を聞かない医者と同じだ!もういい!!」

……とキレてしまいました。

家族も正直、
大変です…しんどいです…。

高校生をしながら、
母の代わりに家の商売の手伝いもして、
年の離れた妹もいたので、
夕食の準備。
疲弊とまでは言いませんが、
ヘトヘトでした。


家族の負担と入院の意義

うつ病の患者さんを支える家族の気持ちは、
私もある程度、わかってるつもりです。

なので、
「心配だけど、少し解放された」
と感じる気持ちもわかります。

ずっと一緒にいると、
家族の心もすり減ってしまうからです。

「うつ病患者=苦しい」だけではなく、
「支える家族もまた、心身ともに疲れ果てている」
ということを、
もっと多くの人に知ってもらいたいと思います…。

だからこそ、
入院を決めた家族は
自分を責めなくていいんです。

入院は、
患者さんが回復するための時間であり、
支えてきた家族が少し休むための時間でもあります。

無理をし続けると、
共倒れになってしまう。
それが一番怖いことだと思っています。

様々な患者さんから、
家族の思いまで書きましたが、
実際、まだまだいらっしゃいます。
本当に
「うつ病」は、ひとくくりにはできない病気です。

こういう理解が、広がってくれたら、
ありがたいなと思います。


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