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コンプライアンスリスクへの対応法
マーケティングの世界にいると、
ついカタカナ語を多用してしまい
がちになる。
一年程前になるが、そんなカタカナ語の
多用を慎むべし、なんてエントリーを
書いたこともあった。
とはいえ、外国からやってきた概念を
上手に日本語に訳せないことも多く、
変な訳を充てる位なら、そのまま
カタカナ語にして使った方が望ましい
場合もあるだろう。
それでも、正しい日本語訳を探す、
あるいは創造するよう努めるのが、
より望ましい姿だと考える。
「コンプライアンス」という言葉も
なかなか日本語に訳しにくい。
一般に「法令遵守」とされることが
多いが、誤訳とは言わないまでも、
この言葉だけでは本質を捉えきれて
いないのは間違いない。
今月頭に、大学時代の友人が、この
コンプライアンスに関する本を出版
した。
著者の大久保和孝氏は、公認会計士と
して今のEY新日本有限責任監査法人に
奉職、経営専務理事にまで登り詰めた
後、一昨年に独立。
様々な企業の取締役、社外取締役、
監査役等を歴任しつつ、各種公職の
類にも任命されて、多忙な日々を
送っている様子だ。
キャリアの初期の頃から、
コンプライアンスやCSRという
キーワードを追いかけており、
あれよあれよと第一人者になって
いって、気軽に友人だなどと
言いにくいほどの活躍をしている。
同書の中で、コンプライアンスの
定義を、郷原信郎弁護士の言葉を
引いて
「社会からの要請に応えること」
と説明しており、「法令遵守」という
言葉からは理解しにくいその本質を
明かしてくれている。
社会の一員たる企業、組織は、
当然関連諸法令を守っていく必要が
あるわけだが、法律を含むルールを
守らなければならない根拠、それは
まさに「社会が要請するから」で
ある。
要請があってこそ、法律が作られ、
規則が発効し、さらにはソフトロー
と呼ばれる社会規範(法令等のような
拘束力はないもの)を守る必要性が
生まれるわけだ。
更に言うと、「Comply」という英語の
意味するところを踏まえ、社会の要請
に基づいて受動的に対応するのでは
なく、あくまで能動的に社会の要請に
適応していく、そんなニュアンスが
あることを指摘している点は、特に
強調しておくべきポイントだと思う。
同書のタイトルとサブタイトルは、
やたらと長いのだが、
よくよく眺めていたら、
サブタイトルの答えがメインタイトルに
なっていることに気が付いた。
つまり、
「激動の時代を生き抜くための唯一の
不祥事予防法」があるとすれば、
「コンプライアンスリスクに対する
リテラシーの高い組織を作る」こと、
一言で言うとそれが答えなのだ。
そして、実際にそんなリテラシーの
高い組織を作るために、何をどうして
いけばよいのか、理論・心構えの部分と、
具体例を含む実践的な部分の両方を、
同書の中で展開しているのである。
読んでもらうと分かるのだが、
経営学、特に組織開発論などの分野で
語られている知見、リーダーシップや
コミュニケーションに関するものを、
「コンプライアンス」という視点から
まとめ直していると言えそうだ。
その意味で、経営者にとってはなじみ
ある言葉で分かりやすく語られている
コンプライアンス入門、という評価も
可能かもしれない。
受動的な「法令遵守」から、
能動的な「コンプライアンス」へ。
社会をより良い場所へと変えていく
自由と責任を、あらゆる組織や個人が
自発的に担おうとする社会へ。
学生時代と変わらず、情熱的な著者の
想いが詰まった一冊。
楽しく読ませてもらった。
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