本場ギリシャで念願のドルマダキアを食べる
ドルマダキア(Dolmadakia)とはギリシャの伝統料理の一つ。
ブドウの葉にご飯が包まれているひと口サイズの食べ物。
歴史は古く、5世紀のトルコ、サーサーン朝ペルシアでは既に同様の料理の記録が残っており、トルコの他、ギリシャやエジプトなど周辺国に広く伝わる料理。
ロールキャベツの起源と言われている。
シンガポールのドルマダキア
このドルマダキアに出会ったのはちょうど一年前。
9月のシンガポールの夜だった。
混み合うアラブストリートの一角で席の空いたトルコ料理店を見つけ、一緒に日本から仕事で来た同僚数名で入ってみることに。
パートナー会社のメンバーとしてフィンランドから来ていたわたしの彼氏も共に。
何か食べようとメニューを見ると写真に載っていたのがドルマダキア。
訝しげな顔で"何かを緑の葉で包んだ何か"を見る私たち日本人を見て、フィンランド人の彼が可笑そうに「表面はブドウの葉で、中はご飯が入っています。ギリシャで食べたんだけど、美味しいですよ」と言う。
ブドウの葉に警戒しつつも「ご飯」という慣れ親しんだ言葉にちょっとホッとして注文してみることにした。
その後、向かいの店でオーダーしたカクテルを飲みながら(そのレストランでは酒類を置いていなかった)、皆、少し料理のことは忘れ、寛いだ表情で談笑していた。
しばらくすると、ミコノス島の白壁のように真白な皿の上、メニューの写真通りの緑の長方形がいくつか載った料理が運ばれてきて、途端に皆、また怪訝な顔をして皿を覗き込み、フィンランド人だけがニヤニヤして皆の顔を覗き込んでいた。
一同に、摘んで食べてみると、皆、「ん?」と目を見張ってから、「うーん。。」と、もぐもぐしながら何か言葉を探している。
味は、普通に美味しいのだ。
レモンやオリーブオイルがご飯をコーティングし、爽やかな酸味で酢飯のようにも感じなくもない。
米の中に何か野菜のようなフィリングも混じっていて味わい深い。
誰かが「葉だね。」とポツリ。
味付けは美味しいのだが、葉の食感がなじみがなくて食べにくいという感想に。
私の感想としても、ブドウの葉が緑茶の茶殻が大量に口の中に入ってきたときに似た印象で、噛んでも噛んでも口に残り、1つは食べ切れたけど2つ目に行けそうにない。
私の彼は可笑そうに「日本人はノリに巻かれたご飯は食べるのに、ブドウの葉に巻かれたご飯は苦手なんだ。実におもしろい。」と湯川先生のような悪い顔をする。
わたしは「いやいや、海苔は海苔。漉(す)いた海藻と、葉っぱは違うでしょ!」と反論。
彼は「海苔で巻いたご飯も葉っぱで巻いたご飯もフィンランドには無い文化の食べ物で、僕からしたら、最初はなんじゃそれって感じで、どっちも感覚は一緒。食べてみたらどっちも美味しいよ。日本はご飯をもともと何かで巻く国なのに、葉っぱはダメなんだなぁと思うと、素直に興味深い。」
いや、葉っぱがダメなわけではない。
大葉や紫蘇でご飯が巻かれていたら自分は何も考えずに食べる。
日本には、葉っぱに巻かれた米の食べ物に桜餅がある。
読売新聞の発言小町で行われたアンケートで「桜餅の葉っぱを食べる派」は64%と、食べない派を上回っている。
ただ、桜餅の葉っぱは36%の人が食べないように、外す人も多い。
ドルマダキアもその選択ができればハードルが下がるかもしれないが、そんなことはギリシャ人は望まないだろう。
そして、ネットでドルマダキアの日本人レビューを見ていると、想像以上に評価は高い。
逆に、まずいなどという感想は出てこない。
自分達の舌がおかしいのだろうか。
もしかしたら、本当は口に合わなかったけどそんなことを公にわざわざ言うのは中東やギリシャに申し訳ない、そんな人がいるのかも知れない。
または、たまたまこのお店の料理が私たちの口に合わなかったのかもしれない。
なぜならここはアラブ街とはいえシンガポール。
ドルマダキアを一般的に食べる国ではないので、本場の味ではないのかも知れない。
いつか必ず本場の国で食べなければ、わたしはそう心に誓った。
ギリシャのドルマダキア
そしてついに、約1年後の今年の11月、ドルマダキアが常食されている国、ギリシャに行く機会が訪れた。
ギリシャ滞在中、わたしはいくつかのレストランを回ったが、たまたまなのかドルマダキアになかなか出会えなかった。
そして迎えた最終日、ホテルで朝食をとりにレストランへ入るとビュッフェの中にドルマダキアを見つけることができたのだった。
食べてみる。
「ん?」
「うーん。。」
味は、シンガポールで食べたものよりあっさりとしてクリアな味がする。
フィリングが少ないのかもしれないけど、色々入っているよりご飯にシンプルにオリーブオイルとレモンの風味が味わえるので好みだ。
しかし、
「葉だね。」
葉がやはりネックなのだ。
そして今回は、葉がシンガポールで食べたものより繊維がしっかりしていて食べにくく、刻まれてない少し大判のお茶っぱの茶殻を食べたらこんな食感かなという感じ。
シンガポールのものより小さかったけど、半分食べて、後は食べ切れなかった。(ごめんなさい)
私が訝しい顔をしていると、今は結婚してダンナとなった彼が向かい側で「葉はシンガポールで食べた方が美味しかったね。」と、あの時の湯川先生みたいな顔でシニカルに笑う。
ドルマダキアは一般的な料理だからどこで食べてもそんなに変わらないだろうと思ったが、やはりホテルのビュッフェではなく、ちゃんとした店(?)や、ギリシャ人が自分のために作ったような家庭料理で食べないと本当の良さが分からないのかもしれない。
いつか必ず、納得できるドルマダキアを食べなければ、わたしはそう心に誓った。
おわりに
ギリシャの料理が何もかも感動的に美味しかった。
シンプルなのだけど肉や魚、野菜や、味付けに使われるレモンやオリーブオイル、ひとつひとつ全てがフレッシュで瑞々しく自分の身も心も喜んで活力を貰えているよう。
その中で唯一、気持ちよく食べられなかったドルマダキアをいつか必ず美味しく食べたい。
★今回訪れたスパルタでのスパルタンレースやグルメ、アテネでの遺跡巡りについては次回以降書きますのでお楽しみに?!