フィンランド🇫🇮のメルヘン紀行🍎リンゴの園のもぎたて果実で作るアップルパイ
東京の摩天楼の下で生きていたわたしですが、今年からフィンランドで生活を始めて、自然と人とのバグった距離感にもようやく慣れて来ました。
ブルーベリーもイチゴもラズベリーも時々キノコも、都会にいようとその辺の公園にも無限に生えていて、道路の中央分離帯だろうと動物園のラクダの柵の前だろうと自由に存在しています。
人は皆すぐ森に入ってそれらを摘んで食べるし、すぐパイやらジャムやら作るのです。(個人の感想です)
どこのディ○ニー映画だよ!とか、メルヘンかよ!と最初はよくひとり脳内ツッコミをしていたものです。
そんな生活にも慣れたと自負していたある日、うちのダンナ(フィンランド人)が言うのです。
「今度、近所の公園にリンゴ取りに行かない?」
私は飛び上がって言いました。
「フィンランド人はリンゴまで森に摘みにいくのかよ!白雪姫かよ!(意味不明)」
今回はそんなメルヘン大国フィンランドでリンゴを収穫に行くお話です。
ヘルシンキのリンゴ園「Malminkartano apple tree garden」
というわけでやってきました。
ヘルシンキ市内にある、マルミンカルタノ・アップルツリーガーデン(Malminkartanon Omenatarha)です。
複数の種類の約350本のリンゴの木が園内にあり、リンゴの花が咲き出す5月からリンゴの収穫時期が終わる10月まで誰でも入園が可能です。
リンゴの花はわたしもフィンランドに来るまで馴染みがなかったのですが、それはとても美しく、350本のリンゴが一斉に花咲く頃は桃源郷のような絶景が広がっているに違いありません。
開花の時期のリンゴ園は人気のピクニックスポットになっているようです。
そしてリンゴの実が赤く色付く頃には、地域の人がバケツを持って集まりリンゴを収穫していくそう。
見張りの方がいるわけでも、入園料やリンゴ代を取っているわけでもなく、収穫量/人の規定はないですが、だいたいひとりバケツ一杯程度を持っていくようです。
このあたり、厳格でなくとも大きなトラブルにならないところが隣人を想い譲り合うフィンランド人ぽくてホッコリしますね。
あとは、リンゴの木は庭や街路樹としてや森やらその辺にもたくさん生えているので、ここにだけに人が殺到することも無いのだと思います。
いざ、園内へ!
さて、公園に入ります。
私たちが来たのは収穫の最盛期を過ぎた9月はじめ。
大分、収穫され尽くされて来て、園内を見渡してみるとパッと見どこにリンゴがあるのかよくわからない状態です。
リンゴの木に近づくと、よく熟した実が手が届かない木の梢にたくさんありました。
周りの人を観察すると、リンゴ狩りの達人たちは高枝切り鋏などのツールを駆使していたり、木に登って枝を揺らしてリンゴを落としています。
最終的に、近くにいたおじさんが揺らしていた木の下にたくさんリンゴが落ちて、ここのやつ良かったら持っていって!と親切に声をかけてもらい、まとまった量をいただけたので、バケツ一杯の4kgのリンゴが採れました!
種類で異なるリンゴの外観とお味
フィンランドのリンゴは日本と違って小ぶりです。
マルミンカルタノに植えられているリンゴの種類は明言されていませんが、フィンランド原産の品種が多く植えられているようです。
さくらんぼみたいに小さなりんごもありました!
お味は日本のふじリンゴに似て酸味と甘味がありシャキシャキしているものと、食感が少しソフトなものがあります。シナモンみたいにスパイシーな風味のあるものもあります。
実がひとつひとつ小さいせいか、風味がギュッと詰まってどれも甘くて美味しいです。
フィンランド伝統のアップルパイ「Omenapiirakka」を作る
生でそのまま食べても美味しいですが、せっかくたくさんリンゴがあるのでフィンランドでこの時期作られているアップルパイを作ります。
作り方は少しづつ人によって違うそうですが、今回はダンナが調べて来たヘルシンキ新聞社のレシピをベースに作りました。
生地にカルダモンが練り込まれており、上には新鮮なリンゴがたっぷり。
シナモンとフィンランド産のハチミツもたっぷりかけました。
焼き上がる頃には部屋中にシナモンとリンゴの甘酸っぱい香りが漂ってとてもハッピーな気分になれました。
しっとりしたアップルパイが作りたかった、とのことでヨーグルトを入れた生地はしっとりもちもちでカルダモンが香り美味しかったです!
私はアップルパイというとコンポートしたリンゴを使うイメージですが、フィンランドのリンゴはそのままでも充分甘さと酸味がしっかり詰まっているのでコンポートにしなくてもそれを焼くだけでかなり美味しくなります。
シンプルに生地の上に乗っけてテキトーにハチミツか砂糖を振りかけて焼くだけで誰でも美味しいアッルパイが作れるのです。
フィンランドのパイの定義
ところで、わたしはこの"アップルパイ"を作りながら思いました。
これって"パイ"なんだっけ?と。
わたしの中で代表的なアップルパイはこれです。
または、こういうの。
今作っているしっとり分厚い生地にリンゴが入っているのは"アップルケーキ"なのでは?(個人の感想です)
ネットで検索すると「パイとタルトの違い」はあれど「パイとケーキの違い」を明確にしたものはなく、「パイの定義」と検索すると、パイ(Π/π/pi)は直径の円の〜と始まってしまい、それもそう、だけど、違う、そうじゃない。
以下、"アップルパイ"を食べながらの、わたし(🐱)とダンナ(🐻)の会話。
🐱「あのさ、日本ではさ、こういうのはパイではなくて多分ケーキなのよね。」
🐻「違うよ、これはパイ」
🐱「じゃあさ、これはアップルパイだとして、アップルケーキって言われてイメージするものは何?」
🐻「…NO IMAGE。わからん!何も思いつかない!」
🐱「wwwwwwwww」
🐱「日本でいうアップルパイってわかりやすい形だとこれだよ。パイ生地が使われていて具を覆っているのが基本だよ。」
🐻「フフッ、そんな、マクドナルドじゃないんだから。」
🐱「マクドでバイトしてたよねぇ!あのアップルパイはなんてよんでたのさ。」
🐻「(ハッ)…アップルパイ。 でもさ、あれはフィンランドじゃパイじゃないよ。うわ、なんか混乱してきた!」
その後も、ガトーショコラはパイであるだとか、フィンランドのレシピ投稿サイトに複数の同じようなお菓子の名称がパイとケーキで混在しているのを見たりとか、身近にいるフィンランドのミシュランスターのシェフに連絡したり二人でワーワーしましたが、まとめると以下です。
フィンランド語のパイ"Piirakka(ピーラッカ)"
フィンランドでのパイは「生地とフルーツとか具を一緒に入れてオーブンで焼いたもの」。
ケーキは「焼いた生地の上にクリームとか生のフルーツとかが綺麗にデコレーションしてある高そうなやつ」。
そもそもわたし達はお互い第二言語の英語で会話していたからややこしいのですがフィンランド語のPiirakka(ピーラッカ)に英語のPie(パイ)を無理に当てこんで訳すからそれぞれの感覚がズレるので合って、Karjalanpiirakka(カレリアン・ピーラッカ)のように生地がありフィリングがあって、それがオーブンで焼かれているものを総称してフィンランドではピーラッカと呼び、二つの言葉が意味するものは似て非なるもの、ということです。
また、近代ではフランスやアメリカなど海外から"パイ"や"ケーキ"がフィンランドに輸入されており、フィンランドでは一見"パイ"でも"ケーキ"として呼んでいる場合もあるのですが、「それはそれ」という認識で受け入れているみたいです。
【続】フィンランドのパイの定義
パイについて調べ始めると紀元前9500年のエジプトに遡り、だんだん気が遠くなってきたので、フィンランドのパイのことに絞ってChatGPT先生に聞くことにしました。
フィンランド語のPiirakka(ピーラッカ/パイ)とKakku(カック/ケーキ)の違いを教えて
"アップルケーキ"も「Piirakka(パイ)」と呼ぶ理由を教えて
ということです。
リンゴを集めに行ってお菓子を作っただけなのにものすごく壮大になってしまいましたね!
でもスッキリした!
おわりに
今回、リンゴを公園に取りにいくという経験も、フィンランドのパイの定義のことも、色々と自分の常識ではなかった体験ができて、とにかく楽しかったです。
リンゴはまだあるので他のものにも使ってみます。
リンゴのお花の咲く5月後半あたりや、実がなる8月から9月にかけてはフィンランドに旅行に来られる方も多いと思います。
マルミンカルタノのリンゴ園はフィンランドの自然を目からも味わいからも感じられる場所だと思うので、機会があればぜひ立ち寄ってみてくださいね。