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フィンランド🇫🇮の小さな冒険🚗北欧の白い死神を追うロシアボーダーへの旅

7月末。フィンランドの夏も中旬から下り坂に差し掛かります。
気候が良い間に行けるところに行っておこうと思い、フィンランドの東、ロシアとの国境付近の博物館へ行くことにしました!
ヘルシンキから片道300kmの日帰りドライブです。

だいぶ国境ギリギリです

夏しか出来ないドライブへ

ヘルシンキはともかく、街を外れると夏季しか営業していないところも多いので、思い立ったら吉日です。
ナーンタリのムーミンワールドでさえ夏のみの開園です。
夏季期間中営業、というのも終了日がまちまちで施設によって違うので確認してから行くことが大事です。

歴史を感じる経験を求めて

フィンランドの戦争譚でまず挙がるのは1940年前後にあった冬戦争!
沢山活躍した軍人さんがいますが、わたしには雪中の白い悪魔死神とソビエト軍に恐れられたスナイパー、シモ・ヘイヘ(Simo Häyhä)のエピソードが胸アツで、彼のミュージアムにずっと行ってみたかったのでした。
日本でも近年、終末のワルキューレという漫画のキャラクターになったりと人気のある実在の人物です。

ミュージアムは戦争によって分断されたカレリア地方の西側、フィンランドとロシアの国境付近にある施設
冬はとても雪深く、ミュージアムも8月中旬ごろまでの営業と聞いています。

途中立ち寄りも含めて約300km、片道3時間半くらいのドライブ

私史上フィンランドで最高のパン屋!「Satun Makiat」

戦争前、ロシアとの行き来が交差し栄えたコウボラ(Kouvola)の街を過ぎたあたり、車をチャージがてら朝ごはんも兼ねて入ったパン屋さん。
早朝から大賑わいです。

ブュッフェもやってるみたい
厨房がガラス張りで中が見えます

上手く言えないけど、めちゃくちゃ美味しかった!

カレリヤパイにハムキューが乗ってるシンプルな一品。添えられているのはミニムンキ(ドーナツ)

シンプルであることに変わりはないのですが、フレッシュさが違うのか、テクスチャーだったり塩味の加減だったりするのか、今までフィンランドで食べたどのムンキやカレリアパイ、ポテトのパンより美味しかったです。
カレリア地方に訪れたので本場のカレリアパイを食べられてよかったです!

この左下のポテトパンのサンドも美味かった!
スイーツもたくさんある!
ケーキも美味しそう
バゲットも買っておけばよかった

フィンランド軍基地内に潜入。国境警備の歴史がわかる「Border Guard Museum Immola」

ボーダーガードミュージアム(Border Guard Museum Immola)は、シモヘイヘミュージアムへ行く途中にあり、ついでに行ってみるか、と入館方法を見てビックリ。
このミュージアムはフィンランド軍基地の兵舎の一角にあり、電話での事前予約(英語OK)とパスポートなど国際的なIDの持参が必要とのこと。
おそるおそる連絡をとってみたところフランクで丁寧に受付してもらえました。料金は無料です。
ガイドはフィンランド語と英語でもしてもらえます。

金網の向こうに博物館があり予約時間に行ってお迎えを待ちます

予約詳細ページは以下ですが、2024年は6月11日から8月3日までの営業で、私が訪問したのは7月末のギリギリでしたので、もう本年は難しそう。来年を狙ってみてください!

施設前にある、冬戦争と継続戦争を戦い抜いたフィンランド兵の銅像。
国境警備犬第一号のワンちゃん
国境付近の怪しい人物を確保。ワンちゃんが得意げ
一昔前の装備。サバゲーに着ていきたい
国境防衛の偉い人第一号。最新のAIテクノロジーで現代に蘇りご挨拶
フィンランドの兵隊を酒でベロベロに酔わせて侵入を試みた人
ゴッツいポラロイド。昔はデジカメもなく写真の現像に時間がかかるのですぐに確認できるポラロイドは貴重な存在
警備犬の子犬ちゃん。
偽造ID発見機
日本のパスポートがとても綺麗に光ります
浮かび上がる桜吹雪が目に入らぬか
熊さんの向こうに統率の取れた兵隊さんたちの行進が見えます
ガイドの女の子のシャツが漫画ワンピースで目を持っていかれる
国境警備エリアがスェーデン側にはなくロシア側にだけあるのがさすが?!

もっと、ミリタリー満載の展示かと思ったけど国境警備犬コンテンツが多くて心あたたまるミュージアムでした?!
ガイドしてくれた女の子や、電話予約対応と受付カウンターにいた男の子は近所の学生さんだったようで、とてもフレンドリー。

ガイドの女の子は漫画のワンピースTシャツ着ていたりIDストラップも何かのアニメ柄。
説明の時の身振りも格闘ゲームの必殺技を繰り出しそうな勢いで、こういう子友達にいたな、と親しみを感じます。

いかつい軍人が厳重警備の中張り付いてくるかとドキドキしてたので安心しました。笑
軍の施設なので博物館以外での撮影は禁止ですが、展示は自由に撮影が可能です。

冬戦争の舞台と伝説のスナイパーシモ・ヘイヘを知る「Kollaa and Simo Häyhä Museum」

ついにコッラ川での戦いとシモ・ヘイヘについての展示のあるミュージアムへやってきました。
夏季期間のみ営業で少人数なら予約は要らなそうです。料金は大人5€だったはず。
詳細は以下のサイトで確認してください。

ボーダーガードミュージアムから更に森深くなっており、道中はロシアとの国境とも一時500mくらいまで接近しました。
ミュージアムの建物は、ユーティライネンの指揮下でシモ・ヘイヘをはじめ多くの兵隊さん方が訓練をした場所にあり、実際に当時使われていた建物を博物館にしたものです。

メインの建物は焼けてしまい残った訓練所の建物がミュージアムに

シモ・ヘイヘは追撃数など未だ記録を破られていない究極のスナイパーである一方、寡黙で、目立ちたがらず穏やかな人。戦争が無ければもともとは素朴なカモ猟師だったと言われています。
展示の写真から人に愛され健やかな晩年をすごされたのを見て知りほっこりしました。

1階の一室はまるまるシモ・ヘイヘを紹介するお部屋
戦争後の様子や彼のお葬式、訃報を知らせた新聞記事など
シモヘイヘルームの入り口
シモヘイヘの手記や愛用の時計
お部屋の様子
シモヘイヘと愛犬。つぶらな瞳がかわいい!
同じく有名な「モロッコの恐怖」ことユーティライネンからの手紙。黄色いのがサイン
終戦間際に襲撃を受けて運ばれるヘイヘの様子をマネキンで再現。散弾を頭部から顎に受けて負傷し離脱した
シモヘイヘが使っていたであろう銃の薬莢
彼に関する書籍もずらり
ここに派遣された隊員たち。彼ら32人が4000人のソビエト兵を撃退した
戦時中のシモヘイヘ
シモヘイヘルームを別の角度から

2階は冬戦争時を記録する展示がありました。
1番好きなのが下の写真の、戦後の荒野に何が何でもまずはサウナを建てるの図。

戦後、荒地となった場所に家でも病院でもなくまずサウナを建てる。フィンランドぽくて好き!
死のカクテル、火炎瓶。武器が少ない中有効な手立てだった。
フィンランド兵は白ずくめで雪に隠れて忍び寄りソビエト兵に恐れられた。
2階の展示室の様子。ヘイヘも使ったサブマシンガンもある
2階のもう一つの部屋。ここにも白づくめ兵が
クリスマスを祝うユーティライネン大尉の姿も
当時使用されたコンパクトなグレネイド
2室を繋ぐ廊下。建物も当時のままで感慨深い
日本の猟師も使っているフィンランドの銃メーカーSAKOの戦争時の広告。
とにかくブッパなせばいいんだよ、的な戦車の取説

歩くことでヘイヘに敬意を示したかった日本人

展示室にミュージアム訪問者でササヤママサトシさんという方の写真があり、誰やねん、と思ったのですが、72才で300kmを歩いてシモ・ヘイヘミュージアムに訪れた日本人とのことです。

日本人?!でもどなた?!

家に帰ってから調べてみると、日本語での記事が見つからなかったのですが、フィンランド語でニュースになっていました。

子供の頃に読んだゴルゴ13に登場したシモ・ヘイヘがロールモデルとなったキャラに感銘を覚え、いつかフィンランドの彼のゆかりの地に行きたいと願ったササヤマ氏。
なかなか夢は叶わず、ようやく訪れることができたのは氏が72歳になった時。
そしてフィンランドに降り立った彼は、ヘルシンキからミュージアムまで300kmの距離を英雄を讃えるため歩く決意を固め実践したとのこと。
すでに季節外で閉館中だったミュージアム側もこの行動に胸を打たれ、ドアを開け彼がゴールするまで1時間以上も入り口で待ちづづけた。
到着した彼を関係者が総出で暖かく迎え、好きなだけ館内を見てほしい、と展示資料を丁寧に説明した。彼が歩いていた最中は、館長のところへ、閉館中のミュージアムに彼がたどり着いた時、入館できるか心配する人からの電話が止まなかったという。(Googleからの要約)

このことがあったからか、ただ日本人が物珍しいと思われたのか(from Japanと記帳してきたので)わかりませんが、ミュージアムを出た後に受付のおじさんが出てきてずっとこちらを見ていましたw
なにかを言いたそうというより、見送ってるという感じでした。

物珍しかったのかな?と思ったのは、展示の説明が全てフィンランド語のみだったので、海外からの観光客、とりわけアジアからの訪問者はレアだったのかなと感じたからです。

バックミラー越しに敷地を出るまでおじさんに見守られていたのが確認できて、車が門を出たところで建物に入っていったので不思議に思っていました。
外の空気が吸いたいタイミングが重なったとか、とくに意味はないのかもしれませんが、なんとなく。

ミュージアム前は当時訓練に使われた広場

やはり実際に訪れて展示を見たり、地形や気候を体感してみると、教科書やネット上の情報では感じられないものを受け取れてよかったなと思います。
冬戦争やシモ・ヘイヘについては日本語でもたくさん動画が出ていますので、結局誰やねん、という方は是非観てみてくださいね。

彼の映画があったら観てみたいものではありますが、ハリウッド映画化の話が出た時もヘイヘは頑なに断ったとのエピソードがあり、その控えめなところも彼らしいなと思います。

ローカルのスモークハウス「Lohela」

せっかくだから地元のものを買って帰ろうとスモークサーモンを買いに立ち寄ったお店。
シモ・ヘイヘミュージアムとボーダーミュージアムの間にあります。

伝統的な建物のデザイン
内装もウッディでローカル感がある。ここで食事もできます。
一匹まるまる購入。800gで18€くらい

スモークの香りが身にほどよく付きしっとりとして美味しかったです!

ダムの公園が美しいロシアとの国交のメッカ「Imatra」

ボーダーミュージアムからヘルシンキ方面に20分程度、サイマー湖をせき止めて作ったダムのある国境付近の街イマトラ(Imatra)へやってきました。
こちらも小さな街ですが整備されていて、以前はロシアを行き来する旅行者で賑わったのではないかと思います。

街のセントラルのステージでコメディ演劇が行われていました。
ダムにかかる橋
川の絶壁の向こうに古城ホテルScandicが見えます
橋からダムを望む
ダムの反対側は湖水がたたえられた豊かな風景
ダムの放流がされておらず川の底が見えます。遠くに見える川はロシアへとつながっています。右手にさっきのホテルも

ランチに寛げる国境の中国料理「Xiang Fu」

朝のパンから何も食べてなくイマトラの街でで急遽入った中国料理屋さん。美味しかったです。
クンプーチキン?と酢豚をいただきました。
お近くで中国料理が食べたくなったら参考にしてください?!

まずは烏龍茶でほっこり
酢豚。日本で食べた味と似て懐かしい

ミュージアムの展示を見たあと一段と入り込めるストーリー「Tuntematon sotilas(Unknown Soldier)」

ドライブから帰ってきて、一段とフィンランドの歴史が身近になったなと思い、関係する映画を見たいとフィンランドの戦争文学作家ヴァイノ・リンナ原作で同名タイトルのドラマを見ました。フィンランドをはじめ世界中で評価の高い作品です。
原作は日本語で刊行されていませんが以下に紹介がありました。

映画は3時間あるのですが、私が観たのはディレクターズカット版が各1時間の5部作となってTV放映されているものです。
シモ・ヘイヘが活躍した冬戦争の後を描くストーリーで、ミュージアムで見た武器や国境周辺の様子など、ドライブ風景の中で見たものと似た様式の建物などを垣間見ることができました。

主要キャラのイケオジ兵士、ロッカが型破りの軍神ユーティライネン兄や近距離射撃も得意なシモ・ヘイヘを彷彿させられる役でわくわくしました!

ミュージアムでの体験で、より、臨場感をもてたのが良かったのと、映画が切なかったりコミカルだったりとても映像も美しくて良い映画なのでぜひ観てみてください!

国境付近の街の現状

ロシアはウクライナとの戦争中にあるので、隣に面するフィンランドのさらに国境付近まで行って大丈夫なのかと思う方もいるかもと思います。
今回はだいぶ近くまで来ましたが、これまでも数十キロ以内の場所は何度も訪れており、それぞれの街の雰囲気は穏やかで制限があったり、事件が起たりということはありません。
国境を観に行ったりということまではしていませんが、わりと際どいところまで人が住んでいて避難が必要ということもないようです。
ロシアへ続く鉄道や道路があるのですが、もちろん、現在は行けなくなっています。

ロシアへ続く線路

雨が降ったり晴れたりの変な天気でしたが綺麗な虹も見られて満足です!

虹!しかもダブルで!

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