
機械音痴主婦、Wi-Fiと格闘する
家のWi-Fiが突然つながらなくなってしまった。
いつものようにテレビでyoutubeを見ていたら、急に「ネットワークに接続していません」的な表示が出て映らなくなり、テレビを何度か再起動をしても状況は変わらず、映らないままだ。
これは一大事である。
幸い在宅ワークなどはしていないが、日常生活に大いに支障が出る。
まずYouTubeを見ることができない。
我が家のスマートテレビは、地上波が映らない仕様かと錯覚してしまうくらい、YouTubeしか映らない。
子ども達が暇な時は必ずと言っていいほどYouTubeを見るからだ。
ヒカキンやSnowManやなにわ男子の動画の他、好きな音楽を聴くのもダンスを観るのも全てYouTubeだ。
見られないとなると娯楽の半分くらいが無くなってしまう。
さらに長女が最近興じている、ロブロックスというパソコンゲームも出来ない。
ネットが使えないので調べものやネットスーパーなどの利用も出来ない。
LINEの送受信も出来ない。
出来ないことだらけやないかい・・・。
Wi-Fiは我が家のライフラインなのだ。
スマホの方はモバイルデータ通信を使えば良いのでは?と思われるかもしれないが、私は最近機種変更をし、料金を抑えるためにギガ数が最小限のプランを選んでしまったので、なるべく使いたくないのである。
モバイルデータ通信は最後の手段にとっておきたい。
しかし我が家のWi-Fi、今までにも突然つながらなくなることが何回かあった。
その時は、スマートテレビを再起動してみたり、Wi-Fiの機械(ルーターというらしい)のケーブルを動かしたりしているうちに、何となく直った。
テレビの再起動はすでに試して駄目だったので、ルーターからケーブルが抜けたり、あるいはコンセントから抜けたりしていないかを確認していく。
一度ルーターの電源を切って再起動も試みたが、変わらなかった。
うーん、何がいけないんだろう・・・さっぱり分からん。
そもそもWi-Fiの仕組みが全然分かっていない機械音痴の身に、Wi-Fiの不調の原因を探ることは、不可能に近い。
Wi-Fiが何なのかすら、ハッキリと分かっていない。
そういった複雑な機械のことは、全て夫に丸投げしてしまっていたのだ。
そして頼みの綱である彼は、現在単身赴任中である。
Wi-Fiの説明は機器を設置する際などに一応聞いていたはずだが、人ってちゃんと理解できていないことはすぐに忘れるものだ。
私にもできることといえば、上述のケーブル・コンセント類の確認が限界である。
得体の知れない敵と戦って、しかも突破口が見えないような状況に、だいぶ精神が疲弊してきた。
私の作業する様子を見守っていた子ども達も、戦況が芳しくないことを感じ取ったのか、無言で肩を落としてしまっている。
・・・そうだ。平穏な日常を取り戻すために、今この家で唯一の大人である私が簡単にあきらめるわけにはいかない。
まだ試していないことはないか。
ふと、ルーターがすごく熱くなっていることが気になった。
機械が熱を持ちすぎるのって何となく良くない気がする。
しばらく電源を切って冷ましてみたらどうだろうか?
電源を落として10分ほど待つことにした。
(まるであの人みたいだな。)
ふいに10年ほど前の、ある思い出が蘇る。
当時私は学習塾で事務のパートをしていた。
その日もいつも通り、パソコンから出力した時間割をプリントしようとしたのだが、どうしてもパソコンがプリンターに指示を送ってくれない。
あるいはプリンターがパソコンの指示を受け取ってくれないのか、いずれにしても、何度試してもプリントができない。
こういうの苦手なんだよな・・・と困り果てながらあれこれやってみるも直らない。
その時、私の他には50代くらいの男性社員が一人いるだけだった。
その人は一見、快活で優しく、怒るべき時は厳しく、子ども達からも人気のある「教育者然」とした先生だった。
しかし実際はルーズな所があり、非常階段でのたばこ休憩が異様に長かったり、保護者との面談に頻繁に大遅刻したり(原因は大体二日酔いによる寝坊)、かなりギャップのある人物だった。
他に誰もいなかったので、何となく嫌な予感がしながらもその先生に相談した。
パソコンとプリンターの様子を一通り見てくれる先生。
そして放った衝撃の一言。
「こいつ(パソコンのこと)、働きすぎてちょっと疲れてるんじゃないかな?
しばらく休ませてあげたら元気になるかもしれない。」
そう言って先生はパソコンの電源を落としてしまった。
私は絶句し、せっかく見てくれたのに申し訳ないが「聞かなきゃ良かった・・・!」と内心激しく後悔した。
聞いてしまった手前、これ以上パソコンに触れるわけにもいかなくなってしまった。
なぜならパソコンを休ませなければいけないからだ。
仕方がないので私は手書きで時間割を書き、壁に貼り出した。
そして案の定、後から出勤してきた塾長(※皆から非常に恐れられている。私が勝手に命名したあだ名は「殺し屋の目をしたプーさん」)から、
ばっちり説教を食らったのであった。
「だ、だってパソコンを休ませろって○○先生が・・・!」等と弁解しても火に油になりそうなので、平謝りしておいた。
ちなみに渦中の○○先生は、授業時間に入ったためすでにその場にいなかったが、いたとしても弁護してくれたかは怪しい。
その後パソコン(プリンターの方か?)は怒り終えた塾長によっていとも簡単に直された。
「いや、あんな簡単に直るとか嘘だろ・・・絶対に機械って人見てるだろ・・・畜生!」と内心憤る。
権威者に弱い(?)機械と、機械に弱い自分自身を呪った。
こういう、機械を擬人化してしまう感じがもう機械音痴だよな、と自分でも思うのだが。
適切な対応さえすれば誰がやったって直るんだよ、ですよねー。
それにしても〇〇先生・・・分からないなら素直に分からないと言ってくれ!
・・・何の話だったか。ものすごーくどうでもいい思い出話をしてしまった。
そう、ルーターが熱いから電源をしばらく落として冷まそうと思ったのだ。
機械を「休ませる」と「冷ます」、意図は多少違えど、結局やってることはあの先生と一緒だよな、と思い脱力した。
機械音痴の成れの果て、最終的に行き着く先は同じだ。
機械音痴達はいたって原始的な方法に縋るしかないのだ・・・だってそれしか思いつかないから。
せめて機械を蹴り飛ばさないだけマシだと思いたい。
ある程度ルーターの熱がとれた。祈るような気持ちで電源を入れる。
・・・つながらない。ほーら、やっぱりね。思った通り。
畜生ぉぉぉ!!!