短編|ですか?ですです
桜を照らすライトが消えた瞬間、二人を照らすのは月明かりだけになった。気が付けば、辺りにはもうすでに人気がなかった。
「実は君に言っておかなくてはならないことがあるんだ」
さっきまで一言も発していなかった彼が突然、真顔で私に語りかけた。
「どんなお話でしょう?」
私はプロポーズに違いないと直感した。
「君の茶髪は、暗いところでは真っ黒に見える。不思議だ」
「はぁ?言っておかなくてはならないことってそんなことですか?」
「ぼ、僕はマジなんだ」
「はぁ?マジとはどういう意味ですか?」
「マジとは、真面目の短縮形であり、『真剣な』という意味なのです」
「それは存じ上げていますが、『君の茶髪は夜は黒く見える』なんて、あらたまって言うことでしょうか?進次郎構文*じゃあるまいし」
「僕は言わざるを得なかったのです。もしかして、僕の言葉は君を傷つける結果になってしまったでしょうか?」
「傷つきはしませんが、単純に意味がないな、と思った次第ですが…」
「どうやら僕はなにか間違ったようです。これからは気をつけます」
「間違ってはいないのですし…気をつけても、どうなるものでもないと思います」
「それもそうですね」
「ですです」
「サクラ、きれいですね。あなたもそれに劣らず美しい」
「いえ、間違いなく劣っていると思います。比較されましても、何も申し上げることはありません」
「ですか?」
「ですです」
脚注
進次郎構文*
→小泉進次郎さんに由来する言葉。基本的に「A=A」であるというトートロジーを指す場合が多い。
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