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読書❄️雪のひとひら

 ポール・ギャリコ(作) [矢川澄子(訳)] 「雪のひとひら」(新潮文庫)を読みました。以下に感想を書きます。
⚠️ネタバレを含みますので、ご注意ください


 「雪のひとひら」は童話のような話です。主人公は「雪のひとひら」、女性です。
 「雪のひとひら」は雪だるまになったり、川に流れて湖にとどまったり、火を消すために汚れたり。「雨のしずく」という男性に恋もして、子どもも四人授かりました。
 
 物語全体を貫いているのは、運命あるいは宿命というものだと私は思いました。わけのわからないまま、この世に誕生して、明確な答えをつかめぬまま消えていく。
 「雪のひとひら」の疑問は、最後までハッキリと解決したわけではありません。けれども、すべて疑問ばかりなのに「雪のひとひら」は、不思議なことに最後には、答えの中に包まれているかのようでした。この物語を読んで想起したのはリルケの次の言葉でした。

「今はあなたは問いを生きて下さい。そうすればおそらくあなたは次第に、それと気づくことなく、ある遥かな日に、答えの中へ生きて行かれることになりましょう」


 なんと言ったらよいのか分かりませんが、とにかく美しい物語でした。


 原作の英語タイトルは「SNOWFLAKE」です。

 なぜ「雪のひとひら」が女性で「雨のしずく」が男性なのか?
 英語で書かれた物語なので、関係はないかもしれませんが、「snowflake」(雪のひとひら)はドイツ語では「Schneeflocke」(シュネーフロッケ)という女性名詞で、「rain」(雨)はドイツ語では「Regen」(レーゲン)という男性名詞です。


 「雪のひとひら」は最初から最後の解説まで一気に読みました。
 解説によれば、この物語はポール・ギャリコが50代の時の作品だそうです。新潮文庫にはギャリコの顔写真が出ていますが、ギャップがある。この顔の作者がこんなに美しい物語を紡いだのかと思うと微笑ましい感じもします。

 物語の最後は次の言葉で結ばれています。

「ごくろうさまだった、小さな雪のひとひら。さあ、ようこそお帰り」
 原文は解説によれば、
"Well done, Little Snowflake. Come home to me now." 

 ポール・ギャリコの作品を読んだのは、今回が初めてで、作者について何も知りませんが、「雪のひとひら」に登場する最後の言葉には、ちょっと仏教的なものを感じました。
 「雪のひとひら」は、空と地上をずっと行き来しているように思えて、輪廻的というか、豊かな循環の中で生き続けているような感じがしました。


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山根あきら | 妄想哲学者
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