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エッセイ | AIと英語教師の役割。「読む」が1番大切なこと。
(1) 英語を話すことってそんなに大事?
口の悪い人は言う。「英語が出来なくても英語を職業に出来るのは英語の先生だけだ」と。
確かに、英語を話すという面ではそんな気もするが、じゃあネイティブに直接教わっていたら英語がペラペラ話せるようになるかというとそれは違う。
たとえば、英語を全く知らない人に「post office」という言葉を教えるために、「手紙を出したり、お金を預けたり、云々するところ」とネイティブ・スピーカーに英語で説明されてもわからない。日本語で「ポスト・オフィスとは郵便局のことだ」と、ひとこと日本語で言われれば足りる。
英語を自然に覚えましょうとか、幼児期に英語を学ばないと身に付かないとか主張する人もいる。しかし、英語の非ネイティブ・スピーカーにとって1番大切なことは母語の習得であって、母語能力が十分獲得できていない段階で英会話に力を注ぎ過ぎると、母語能力の向上がおろそかになる。
加えて「英語が出来る」という場合、なぜか「話す」という技能ばかりに焦点を合わせて議論するのも大きな間違いだろう。
日本語だって、ペラペラと日本語を話す人の国語力が、寡黙な人の国語力より上だとは言えない。ペラペラと道案内することが出来るだけの人が、シェイクスピアを読みこなせる人の英語力より上だなんて到底思えない。
(2) AIと英語教育
前にも何度か書いているが、語学の技能は大別すると、「話す」「聞く」「読む」「書く」の4つがある。
どの技能も偏ることなく向上させることが理想だが、外国語を学ぶ場合、私は「話す・聞く」より「読む・書く」の能力向上に重きを置いたほうが良いと考えている。
決して「話す」「聞く」を軽視しているわけではないが、きちんとした内容を語るには、たくさんの文章を読み、理解して、それらから使える表現を覚えて、つなぎ合わせて書くということが必要不可欠だと考えるからだ。
職務上、英語を常態的に使えば、それなりに必要なことは話せるようになるかもしれないが、その他の分野で応用することは難しいだろう。
一見すると実用性に乏しいと思われる、英文学や専門書を読み込めるようになれば、基本語彙は日常生活でも応用出来るものが多い。
あいさつなどの定型文をいくつも覚えるより、日頃から自分の気持ちを表すために必要な使えそうな表現をストックしておくこと。遠回りのようでいて、1番確実な方法だと思う。
(3) AIに代替不可能な語学力とは?
英語を話すことに力を入れて、英会話などを学ぶことは、それ自体悪いことではない。しかし、日常的に話すわけでもない英語にお金を使うなら、海外旅行するときに、必要ならば通訳を雇ったほうがいいようにも思う。
「リスニング力」も、さほど必要ではない。通訳がいれば事足りるし、なんなら筆談したって英語が読めるならば問題ない。
「書く力」も、急速なAI技術の進歩によるおかげで、意思を伝えるだけなら十分だ。今のところ、細かなところでは人間の目によるチェックが欠かせないが、そう遠くない時期にAIだけで用を足せるレベルに到達するだろう。
このように、「話す」「聞く」「書く」という3技能は、アウトソーシングしようと思えば可能だ。
しかし、文章を「読む」という能力は、たとえ英語が日本語に訳されたとしても、その人が自分の頭で理解するより他ない。
結論
「話す」「聞く」「書く」「読む」という英語四技能のうち、AIの技術がどんなに進化したとしても、代替できないのは「読む技術」だろう。
現在の学校教育では、コミュニケーションという旗印のもと、「話す」ことに力を入れている。
それはそれで結構だが、本来ならば現在の英語教育では毛嫌いされている「訳読」こそ最も大切だと個人的には考えている。
きちんと英文を読みこなせた上で、表現をきちんと音読するなりして体で覚えていくこと。これこそ今1番求められる力ではないだろうか?
「日本人は英語を読めるけど、話せない」という「神話」のような話を聞くが、それはウソだ。
英文科を卒業するような学生でさえ、きちんと原書をまるまる一冊覚えるくらい読み込んでいるだろうか?
持論だが、英語の原書を100冊丁寧に読み込み、そこで使われている表現をマスターしたら、ネイティブさえ凌駕するほどの高い英語力が身に付くと信じている。
読め!読め!音読!音読!
これが最強の語学学習法だと思う。英語が話せないと言う人は、高校の英文法もマスターしていないし、原書一冊すらまともに読んだことがない人にちがいない。
だいたい口を動かすことなく話せるようになると信じている人が多いのはなぜだろう?
とエラそうに言ってみたが、語学に天井はない。毎日細々とでも、つづけることが何より大切だろう。
ついでに最後に元も子もないことを言えば、英語より専門知識を習得することのほうが大切だ。
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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします