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asagi_2020
短編小説 | 伝書鳩
風の章
すべて破壊された。あたり一面、瓦礫の山だ。通信手段はすべて失われた。おまけに手足も瓦礫に押し潰されて使えない。声も出ない。かろうじて呼吸しているだけだ。
「終わったな」
心の中でつぶやいた。
「このまま寝てしまおうか?」
もう戦うことに疲れていたところだ。
林の章
異常な寒さで目が覚めた。体は血だらけだが痛みは既に感じない。
なるようになれ!
どうせもう助からないのだから。
せめて死ぬ瞬間まで、この世の風景を眺めよう。
火の章
俺はあと、何時間生きていられるのだろう。それはわからない。直感的に言えば3時間程度だろう。太陽が、あの山の頂を通過するくらい、といったところか。
私は残り3時間を1時間ごとに分割した。最初の1時間は友人との別れ。次の1時間は家族との別れ。最後の1時間は自分自身との別れのために。。。
山の章
あっという間に、残り1時間になった。生まれてから今に至るまでの生涯を振り返った。
頭の中の回想シーンが現在にたどり着いたとき、耳元で、ポッ・ポッ・ポッという鳴き声が聞こえた。
「ハト?」
鳩の足には、輜重班(ロジスティクス・パーティー)の使っている紐が見えた。ピジョンのマーク。伝書鳩か?
最後の力を振り絞って口笛を吹いてみた。鳩は私の大佐の勲章を口に咥えて、一直線に飛んでいった。
太陽は刻一刻、山頂に近づいていた。
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