短編小説 | 述懐
(1)
旧友が突然私のもとにやって来た。かつて、大親友だったが、お互いに多忙で長い間会っていなかった。
「おお、懐かしいね。急にどうしたんだい?」
私は懐かしさとともに、親友の突然の来訪を不思議に思った。
「ごめん、悪いけど中に入れてくれないかな?」
親友は一刻を争うような悲壮な表情で私に懇願した。
私は戸惑いながらも、親友を中に入れた。
(2)
「実は、殺人容疑で、警察に追われているんです」
私は彼女の言葉に驚いた。かつての彼女しか知らないが、人を殺せるような人ではない。
「どうして君に容疑がかかっているんだい?君は人を殺していないんだろ?」
彼女は首を縦に振った。
「だったら、警察に行って事情を話せば、分かってもらえるんじゃないか?」
「いいえ。たぶん私にはそれはできない」
「できないってどういう意味?」
(3)
彼女はゆっくりと話し始めた。
「私は、殺された人に直接手を下してはいません。でも、たぶん、私が殺したんです」
私は、不可解に思った。
「直接手を下していないのに、なぜ逃げているんだ?」
彼女は言った。
「私が心の中で、『こんな奴は消えてしまえばいい』と念じると、みんな死んでしまうんです」
「まさか!そんなこと、考えられない!」
私は思わず大きな声で叫んでしまった。
「あなたも、私の言うことを信じてくれないんですね」
その言葉を聞いた途端に、私は急に息苦しさを感じた。意識が遠のいていく中で、彼女のつぶやく声を、私ははっきりと聞いた。
「こ、ん、な、や、つ、は、き、え、て、し、ま、え、ば、い、い」
おしまい
フィクションです😊。
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします