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🧏♂️「窓の外に現れた山田」🔢(数学短編小説♥️)
(1)中学3年生3学期
「あぁあ、つまんないなぁ」
中学3年生の冬休みはつまらない。休みであって、休みではないからだ。
せっかくの冬休みも、目の前に迫った私立高校の受験のせいで、楽しい気持ちとはかけ離れている。
塾の冬期講習と滑り止めに受けた高校入試のおかげで、ぼくはまったく休んだ心地がしなかった。というか、休んでいない。そして、中学生生活最後の3学期をむかえた。
中学3年間で習うべきことは、一応2学期までに終了している。3学期の授業は、ほぼ問題演習に当てられている。
今日は1時間目から数学の授業だ。ぼくの最も苦手な科目だ。憂鬱な1日が、さらに憂鬱に感じられた。
(2)数学の授業開始
「では今日は、相似の問題演習をします。相似条件は3つありますが、証明問題では、2つの角がそれぞれ等しい、以外の条件はほぼ出題されない。仮定で述べられたこと。もうひとつは、明らかに等しい角を探すのがポイントだったね」
福田先生の授業が始まった。
「で、今日は証明問題ではなく、相似を使って、長さ、面積、体積を求める問題演習をやろう!」
ぼくは「勝手にやれば」と思った。ぼくは数学は捨てている。何度やってもよくわからないし、こんなことをやって何の役に立つんだか、って感じ。
ぼくはウトウトし始めた。
(3)山田、あらわる!
ぼくがこれから熟睡モードに入ろうとしていたら、急に教室全体が騒がしくなった。目を開けると、みんな窓際に集まっている。そういえば、さっきまで明るかった外が、急に暗くなっている。なにが起こったのだろう?
「あれって、山田じゃね?」
「どうみても山田だよね?」
クラスメートたちが叫んだ。私も窓際に駆け寄って外を見た。
校庭の真ん中に、巨大化した山田が立っていた。となりのクラスのあの山田が...
(4)白熱教室
「なんで山田くんが...」福田先生が呟いた。しかし、次の瞬間、我にかえった福田先生が叫んだ。
「おーーい、山田くーん。君はそこでなにをしているんだい?」
ぼくは「なんで大きくなったの?」と聞くべきではないかと思いつつ、事の成り行きを見守った。
「おーい、山田くん、教室に戻っておいで」と、となりで理科を教えていた佐藤先生の叫び声が聞こえた。
「もとの大きさになって戻っておいで!」佐藤先生は山田にメッセージをおくり続けている。
「佐藤先生、山田はいったいどうしたんです?」福田先生が窓から顔を出していた佐藤先生に語りかけた。
「いやー、山田がトイレに行きたいと言ったから一人で行かせたんです。しばらく経っても戻ってこないから、呼びに行こうとしていたんです。そうしたら、巨大化した山田が校庭に立っていて...何がなんだか分かりません」
「そうでしたか。山田はおとなしい生徒でしたよね。急に小さく戻れと言っても、戻れないのかもしれません。とりあえず、3年生は受験を控えた大切な時期ですから、静観しましょう」と福田先生。
「それもそうですね!」と佐藤先生が返事をした。
「みんな、席にもどって!授業を再開します」
(5)山田を推定する試み
「せっかく山田くんが巨大化したから、私たちは今現在の山田くんの体重を推定しようじゃないか?」
えっ、なんでそんな話になるの?、と疑問を持ちつつも、普通に数学するより楽しそうだから、まぁいいか、と思った。
福田先生が話を続ける。
「山田くんのもとの身長を170cmだと仮定しよう。体重を、そうだなぁ、64kgに仮定しておこうか。そして、今現在の巨大化した山田くんの身長は17mだとしよう。巨大化した山田くんの体重は何キロぐらいだと思う?じゃあ、相川くん、答えて❗」
「えっ、ぼくがですか?」
ぼくは驚いてしまった。
でも、単純に考えて、170cmの身長が17mになったのだから、10倍大きくなったってことだから...体重も10倍すればいいんじゃないか?
「はい、640kgぐらいだと思います」
ぼくは結構自信をもって答えた。
しかし、福田先生の顔が曇った。ヤバい😱!。ぼくは大きな間違いをおかしたようだ。
(6)相似比と体積比
「相川くんは、まったく授業を聞いていなかったようだね。では、分かりやすくもう1度解説するね」
いつもの福田先生の口調で言った。
たとえば「相似比」が
m : n
だとすると面積比と体積比は
つぎのような関係が成り立ったね!
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相川くんは身長と体重が比例すると考えたが、果たしてそうだろうか?
「普段の山田くん」と「巨大化した山田くん」は、「立体」だよね?
体重は「身長」言い換えれば「長さ」(相似比)ではなくて、「体積比」を用いて考えるべきじゃないかな?
巨大化した山田くんの体重を計算してみよう!🌠
(7)巨大化した山田の体重は?
つぎのようになるだろう。
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巨大化した山田くんは
640kgではなく、64000kgくらいあるはず。わかったかな?、相川くん。
「はい、よくわかりました😃💕」
(8)大団円
数学って楽しいな💃
あれっ、でも、山田くんはなぜ大きくなったの?🌠
バターン
大きな物音がした。
ぼくの机をたたく音だ。
目の前に福田先生が立っていた。
ぼくは夢をみていたようだ😳💦
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![山根あきら | 妄想哲学者](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/174039065/profile_e6ea683941a127fa2a8f385215c508aa.png?width=600&crop=1:1,smart)