短編集 | ある夢想家の思い出 / 第2の物語 逆ロシアン・ルーレット
第2の物語
逆ロシアン・ルーレット
「お前たちに生きるチャンスを与えよう」
私たち五人は戦争捕虜となり、明日処刑されることが決まっていた。しかし、刑務官がやってきて次のようなことを言った。
「いま、ここに五発の玉を仕込める拳銃の中に、四発の玉が仕込んである。つまり、20%の確率で助かる者がいるということだ。どうだ、やってみるか?」
このままでは、どうせ明日全員死んでしまう運命だ。たとえ20%でも助かる可能性があるのなら、やってみる価値はある。私たち五人は、刑務官の申し出を受け入れることにした。
「とりあえず、順番を決めてくれ。お前たちに任せる」
私たち捕虜五人は、くじ引きで拳銃で自らの頭を撃ち抜く順番を決めた。私は一番最後になった。
つまり、一番最初に打つ者が、空砲だった場合、残りの四人は確実に死ぬ。私が助かるためには、四人の死を見届ける必要があるということだ。
一番目の男が刑務官から銃を受けとる。
ズドンという銃声。あっけなく死んだ。しかし、恐怖よりも助かる可能性が5分の1から4分の1になったことを喜んだ。
二番目、ズドン。
三番目もズドン。残るは四番目の者と私だけになった。
生き残る可能性は2分の1になった。しかし、ほっとする気持ちよりも二人の内、確実にどちらかは死ぬ。無論、二人には、なにも話すことはなかった。
四番目の奴の順番になった。私は今回も「ズドン」とあう音が響くことを期待していた。
ズドン。四人目も死ぬ。私は助かったという思いに包まれた。私は生き残ったのだ!
私はほくそ笑んだ。これで自由の身になれる。
私は早くこの場所から離れるために部屋を出ようとした。そのとき、ズドンという音が響いた。
「何の音だ?!」と思ったとき、私の心臓から血が湧き出してきた。
「ははは、助けるわけないじゃないか。これで死刑執行する手間がだいぶ省けた」
刑務官の高笑いか部屋にこだました。
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