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小説 | 天才少女ルナの物語①

 今となっては昔のことだが、ルナという一人の天才少女がいた。

 Lunaが生まれたのは、古代遺跡が多く残るイギリス・オークニー諸島。

 この島々には、数多くの古墳が点在しているが、非常に謎の多い地域だ。

 シーザーがルビコンを渡るよりも、もっとずっと遥か遠い時代。いや、それどころか、フェニキア人が交易により栄えた頃よりも、もっと古い時代の遺跡が眠っている。

 時折、古墳から土器や石器が発見されることがある。もちろんその当時は、英語という言語は存在しなかった。フェニキア人より前のことだから、アルファベットの原形すら存在していなかった。

 点在する島々から数多くの文字らしきものを伴う発見が相次いでいたが、どの島から発見される文字も、どれひとつとして共通点がなく、その解読は困難を極めていた。

 学者たちは口々にいった。

「せめて、聖書のように、共通のテキストがあれば比較することが出来るのだが。これでは、解読の糸口すらつかめない」と学者たちは嘆いた。

「バラバラな断片的な史料がいくら集まっても、解読のしようがない」

 学者たちは途方に暮れた。目の前に揃っている出土品の文字がすべて解読されたならば、古代史の空白はかなり埋まるはずなのだが。


「あっ、こら、ルナ。出土品に勝手に触っちゃダメよ」
 ソフィア博士は、同伴していた娘のルナをたしなめた。

「お母さん、このパズル、面白いね」
 無邪気にルナが笑った。

「ルナ、これはパズルじゃないの…」と言いかけたとき、ソフィアは閃光のような衝撃を受けた。

「ルナ、これは?」ソフィアが叫んだ。

「ルナね、こうやって並べてみると、なんかのお話になるような気がしたのよね」

 ソフィアが驚愕したのも無理はなかった。ルナが並べた出土品から浮かび上がった絵画は、遥か後世の時代に発見された女神ビブリオン・モーヴの絵画にほかならなかったからである。


 
…つづく

第2話はこちら(↓)

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