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中原道喜 | マスター英文解釈(聖文新社)

 英文法書は何冊も持っているけれども、お気にいりの本は限られています。

 私は主に文学作品を読んで、英語学習をつづけています。当然のことながら、学校の教科書ではないので、非標準的な言葉の使い方やスラングも登場します。

 私の母語は英語ではありませんから、微妙なニュアンスはつかみきれません。なんとなく「こういう意味なのかな?」ということはわかっても、余計な誤解は招きたくありません。それゆえに、なるべく規範文法に基づいた英語で書いたり話したりしたいと思っています。

 文学作品は論文とは異なり、専門用語を覚えていれば読めるというものではありません。難しい専門用語が出てきても、自分が学んだことのある分野の論文的な文章なら、英語が苦手でも内容は把握しやすいものです。それに比べると、小説をはじめとする文学的な文章をきちんと読み取るには、きちんとした文脈把握と正確な文法理解が欠かせません。文脈を踏まえた上で、文法的にどう解釈できるのかを常に考える必要があります。


 文法書は、小説とは異なり、最初から順番に最後のページまで読むことは多くありません。たまに頭の整理をするために部分的に読み返す程度です。

 学校の試験では、関係代名詞や不定詞、完了形、態、前置詞、仮定法などが重要項目です。もちろん、そういった事柄も大切ではありますが、小説を読む時に重要度が高いのは、副詞の使い方や話法の転換です。

 小説を読んだり、英文を書く時には、副詞って大切だな、としばしば思います。

 前置きがだいぶ長くなりましたが、この記事では「注意すべき副詞」について書きます。例文は主に私が愛用している、中原道喜(著)「マスター英文解釈」(聖文新社)から引用します。


解釈で誤りやすい副詞


 前掲書の220頁には、解釈で誤りやすい副詞がいくつか紹介されています。

 それをもとに、問題形式にしてみました。
 最初に英文を掲げますので、頭の中で和訳してみてください。
 模範解答は下に書きます。


問題 

以下の文章を「和訳」してください。


(1)
(a) I can do it alone. 
(b) I alone can do it. 


(2) 
(a) He spoke simply and to the point. 
(b) He said so simply to please her. 


(3) 
(a) Crime doesn't necessarily pay. 
(b) Crime necessarily doesn't pay. 


(4) 
(a) He saw the difference clearly. 
(b) Clearly he saw the difference. 


(5) 
(a) He is managing the matter wisely. 
(b) He is wisely staying at home. 


解答と解説


(1) 
(a) 私は(それを)ひとりでできます。
(b) 私だけが(それを)できます。

alone は文末に置かれるときは、「ひとりで」の意味。
「I alone」のように、名詞・代名詞の直後に置かれると「~だけ」の意味。


(2) 
(a) 彼は簡潔で的を射た話し方をした。
(b) 彼は彼女を喜ばせる(だけの)ためにそう言った。

(b) のように「不定詞」の直前に置かれると「~するだけのために」という意味になる。


(3) 
(a) 犯罪は必ずしも得にはならない。
(b) 犯罪が得にならないのは必然だ。

(a) はいわゆる「部分否定」。
基本的に副詞は、その後ろに続く部分に意味が係る。
「not」は「necessarily pay」に係るので、「『必ず得する』では『ない』」となる。だから、「必ずしも得にはならない」「必ずしも得するとは限らない」と訳される。

(b)では、「necessarily」が「doesn't pay」に係るので、「『必然的に』『得しない』」という意味になる。だから、「得しないのは必然だ」と訳される。


(4) 
(a) 彼はその違いをはっきりと認めた。
(b) 彼が違いを認めたのは明らかだ。

(b) のように、文頭にある「clearly」は、そのあとに続く文を修飾する。
書き換えれば、
It is clear that he saw the difference. となる。


(5) 
(a) 彼は賢明に(その件・事案)を処理している。
(b) 彼が外出しないでいるのは賢明だ。

(b)は書き換えると、
It is wise of him to stay at home. 


まとめ


副詞に限ったことではありませんが、「副詞」は基本的にその後ろにくる部分を修飾します。意味を暗記するよりも、置かれている場所に注目すると、使い分けることができます。

例えば「not」(~ではない)も「副詞」ですが、置かれた場所によって意味合いが変わります。

The rich aren't always happy. なら、
「not」は「always happy」に意味が係るので、
「『いつも幸せ』ではない」ということなので、「幸せとは限らない」という部分否定の意味になります。
訳「金持ちは幸せだとは限らない」

もしも、
The rich are always not happy. だったらどうなるでしょう?
この場合は「always」が「not happy」に係るので、「not happy」が「always」だ、ということになりますね。

「幸せでない」のは「いつも」のことだ、ということになるので、「金持ちは
常に不幸だ
」という意味になります。

副詞は前に置かれたら、後ろの部分を修飾する」「いちばん最後に置かれたら、文全体を修飾する」と覚えておくとよいでしょうね。





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単に学習法だけを取り上げるのではなく、英語の周辺の知識と身につける方法を考えます。また英語を学ぶ意義について、時折振り返ります。

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