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神話物語 | 霧の女⑨


前話はこちら(↓)

いま私は
とある町の図書館にいる。

ここで起こったことを
私は繰り返して語る必要を認めない。

最初の『霧の女』との邂逅と
まったく同じことが繰り返されたからだ。

霧の女は閉館間際の郷土史料室に現れ、翌朝、私は投函された手紙を受けとる。
そして倒れ、新たな霧の女が私の心臓の一部となって語りかける。

私の心臓にはすでに何人もの「霧の女」が宿っている。

「あなたはどの『霧の女』がいちばんお好きかしら?」

私の心臓に宿る『霧の女』たちは、私こそは本物の霧の女だと、争うかのように、青い光を発するようになっていった。

「あなたは『霧の女』を匿うために生まれて来たのよ」

最後に私の心臓に入り込んだ霧の女が呟いた。

「そうなのかもしれない、いやおそらくそういうことなのだろう」

私の心臓は、幾多の霧の女の避難所になっていった。

気がついたときには、私の全身は青の虚空に溶け込んでいた。



…次回最終話

最終話はこちら(↓)


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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします