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小説 | 許し④
前話はこちら(↓)
だが、ビンタではなかった。僕の左頬を撫でただけだった。
「ははは。これでいいや」
ユキが笑い出した。
「もう、いいや。今の青木のひきつった顔を見たら、どうでもよくなった」
「許してくれるのかな?」
「どうかな?許してもいい、という気分にはなった。もう昔のことだし、謝ってくれたしね」
「ありがとう」
「別に礼を言われることじゃないわ。もしかして、なんだけど、本当は青木は私へのいじめを止めたかったんじゃないかって思った瞬間もあったのよ。みんなで私をいじめているとき、青木だけは寂しそうな表情をしてたから。あの時は理由がわからなかったんだけどね」
「僕はみんなから逆にいじめられることが恐かった。だから、本当は…」
「やっぱりね、そうかと思ったわ。私のことをいじめながらも、みんなの気を逸らそうとしていたのが分かったのよ。小学校を卒業したあとのことだけどね。でも、青木は引っ越しちゃったから確かめることができなくて。だから、工藤くんから青木が盛岡に今日来ることを聞いて、確かめにきたのよ」
「そうだったんだね。理由は何であれ、ユキをいじめたのは事実だ。本当にすまなかった」
「青木ってバカだよね。頭はいいのに。好きな女の子のことをいじめるなんてさ」
「えっ?」僕は驚いた。図星だった。
「青木、もう一回殴らせてくれる?もう一度、目を瞑って!」
「わかった。思い切り殴れ!」
僕は再び目を閉じた。
…次回最終話
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