発売日に100個完売した 「元祖筋育専用干し芋ゴリタマ」のストーリー
元祖筋育専用干し芋ゴリラ印の玉豊、通称「ゴリタマ」のストーリーです。
悩み
フィジーカーは悩んでいた。
頭が痛い、力が出ない、体にハリが無い。
近づきつつある低気圧が原因ではない。
(減量の影響か・・・。)
「・・・。たかが趣味に悩むなんてね。」
引ききれないケーブルを眺めながら我に返った。
自分の中に冷静さ探してみるが、見つかるのはジンジンする焦りだけだ。
「ダメだ、今日は切り上げよう。」
親父
「なんだ?浮かない顔して。」
立ち寄った実家の作業場から、喉を鳴らす低い声が聞こえてきた。
そういう親父も仕事の疲れが顔に出ている。
休憩室の窓から刺す夕日でできた陰でシワがより深くみえる。
「ほれ!食え!元気出るぜ。」
ゴリタマか・・・。懐かしいな。栃木のじいちゃんの干し芋だ。今はおじさんが畑を継いでいる。
「アニキが送ってくれたんだ。」
親父は懐かしげな目をしてほおばった。
粉が剥がれて唇が真っ白になっている。
「アニキと一緒に芋ほりだの皮むきだの手伝ったな~。嫌だったけどな。」
次男坊の親父は、東京で機械工となり、俺が生まれてすぐに独立して川崎で町工場を営んでいる。
「まだまだアニキのやり方に口を出すらしい。オヤジらしいな。もう90だぜ(笑)。」
ゴリタマ
「あの人さつま芋が大嫌いなのに、自分で栽培するなんて変わっているでしょ。」
七輪で干し芋を焼きながら、ばあちゃんがよく言っていた。
正月は毎年栃木で迎えた。
真っ赤になった炭がカラカラと甲高い音を立てて干し芋を焦がしていく。
あちぃあちぃといいながら一気にたいらげた。焦げた香ばしさの後に、ゆっくりと芋の香りが鼻を抜けるのが快感だった。
戦時下を生きた人は、さつま芋が嫌いな人が多いと聞く。
だからじいちゃんには、嫌いな理由は敢えて聞かなかった。
「戦後で何も無いから、子供たちが腹をすかしているだろう?」
おかわりの干し芋を焼きながら、ばあちゃんが続けた。
戦争から引き揚げてすぐ、食うや食わずでさつま芋の栽培を始めたらしい。
育ち盛りの子供たちが、“ゴリラのように強く大きな筋肉に育つようにように”と袋にゴリラの絵を入れたのが始まりとのことだ。
「ほら、あの人単純だろう(笑)?、子供たちが喜ぶから調子に乗って売れ残りを全部あげて帰ってくるのよ。でもねホントに真面目に作ってたよ。」
人間の体はエネルギー源である糖質が足りないと筋肉を分解して補おうとする。だから、成長期に炭水化物をしっかりと摂ることは重要だ。
じいちゃんは経験でそれをわかっていたから、子供たちに干し芋を食べさせたかったんだろう。
じいちゃんは無農薬にこだわった。今では有機栽培と呼ばれるが、戦後、化成肥料や農薬などの技術が進歩しても、自家製の肥料にこだわり、炎天下に雑草を手で抜き続けた。そして、じいちゃんのつくる干し芋は厚切りだ。天日乾燥はただでさえ大変なのに、厚切りだから倍の日数がかかる。男体おろしと言われる栃木の冬の空っ風で二週間かけてしっかりと乾燥させたのだ。
「子供たちが取り合いをして喧嘩になるだろう?だから小分けにしてあげたんだよ。それに、小分けになっていれば、遊びながら必要な分だけ食べられるからね。何でも工夫するのは、あんたの親父に受け継がれているよ。」
ばあちゃんは優しく笑った。
こうしてじいちゃんが作る干し芋は”ゴリラ印の筋育干し芋”として人気を博した。
その後、さつま芋の品種を玉豊に変えて、以来”ゴリタマ”の愛称で呼ばれている。
「リアカーひいて売り歩いていたな、オヤジ・・・。昔はビンボーだったから、とにかくな・・・。」
親父の真っ白な唇がボソッとつぶやいた。
「アニキも朝早く駅前でこれを売ってさ、毎日毎日、オレの修学旅行の金を貯めてくれたんだよ。オヤジの想いを継いでよくやってるよ。よくケンカしているみたいけどな。」
目じりが夕日を浴びて光っている。
手渡されたゴリタマを口に含むと、なつかしく土臭さにも似た豊かな芋の香りが鼻の奥に広がって、さわやかに抜けていった。
Chest day
職場は上場を間近に控えた緊張感の中、月末業務でバタバタと忙しかった。なんとかこなして、雨の中、駅の途中にあるジムに足を運んだ。
カーボは39.7g腹に入れてある。ゴリタマ一袋分だ。約160Kcal、トレ後のカーボ補給までまでとして丁度良い。
Chest dayのウォームアップはディップスと決めている。
1set目、力感が・・・イイ感じだ。
2set目、5reps目くらい、胸まわり、肩まわり、肩甲骨の奥まで血が送り込まれてくる。
「キタキタキタァ!!!これだ、この感覚!」
ベンチプレスを数セットこなして、インターバルに入っても心臓の鼓動と共に血が送り込まれている感覚が続いている。
体が沸騰するように熱い。腹から力が入る。
炭水化物は体の中で糖質と食物繊維とに分解される。糖質は代謝のエネルギーになるのと同時にグリコーゲンとして筋肉や内臓に取り込まれる。その際、グリコーゲンはその3倍の量の水分と結合する。そして、筋肉に刺激を与えた際に出る代謝物が浸透圧を高めて水を引っ張ってくる。筋肉が膨張(パンプアップ)するのはこのためだ。
いずれにしても筋肉を大きくするには良質の炭水化物が必要だ。
パンプした胸を鏡に映しながら、ばあちゃんの言葉を思い出した。
「あの人(じいちゃん)は、さつま芋をみると辛い戦争を思い出すけど、子供たちにはそんな想いをさせたくなかったんだね。人間は美味しいものを食べると幸せな気持ちになるだろう?自分のさつま芋で作った干し芋を食べた人がみんな幸せになって欲しいと願っていたんだよ。」
バッグから顔をのぞかせるゴリラ印が目に入ると、胸の奥が熱くなった。
コンテスト前、最後のそして最高のChest dayとなった。
こんな感じです。
よかったらショップへどうぞ。
文:戸崎泰秀