見出し画像

青い闇をまっさかさまにおちてゆく流れ星を知っている


朝、白菜を茹でて食べてから、バルコニーで本を読む。
花たちにだけ読み聞かせてやるような細い声で読み上げながら、自分のなかに物語の世界を組み立てていく。
ちょうどトリュフ犬について読んでいるところで、上階の飼い犬がベランダに出てくる。
鳴き声につられて見上げると、干された布団が裾を翻して空に向かって手を伸ばしている。
飛行機が真白な層積雲に呑み込まれてゆく。

単行本も綺麗だったけど文庫も良い表紙


寝巻きではすこし肌寒くて、一時間弱で朝の読書の時間はおしまい。
友人の女の子に頼まれていたヘッドドレスをささっと作る。ものを作ることが得意でほんとよかった。


夕方、はじめて会う人が遠方から来てくれた。
古い漫画の話や、おもちゃの基板を修理する話、おたがいの暮らしのがさつさを笑いあったりした。
彼と僕はつとめて対等な関係であるよう試みた。
お互いにとって安全な位置にある言葉を拾っては静かに手渡す。
ぬいぐるみを作って贈る約束をした。

喫茶店でコーヒーを飲んでから、知らない街を歩いてみる。
冬の煌びやかな装いにまだ慣れていない様子の街は、そこかしこで居心地悪そうに電飾を光らせる。

あ、犬!(手を振る) あ、落ち葉!(蹴る)
また犬がいる!犬かわい!街光っとるなー

同じ速度で、似ている瞳で、街を眺められる人だった。僕たちは今日おそらく友人になった。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集