グローバルという言葉にふさわしい料理があるとしたら、それはカレーだ。 『カレーの歴史』 #カレースタディーノート
コリーン・テイラー・セン『カレーの歴史』を久しぶりに読み直してみたので本の内容を要約して紹介してみます。9000文字くらいになってしまった。
『カレーの歴史』は、カレーという料理がどのようにして現在のようなグローバルな存在となったかを解き明かす本です。世界中にあるカレーの多様な形態やその起源、そして世界各地への広がりについて詳細に説明しています。
本の概要
本書では、まずカレーの起源を探ります。カレーという言葉の由来は南インドの「カリル」や「カリ」に遡ると考えられていますが、インドでは本来「カレー」という言葉は使われていませんでした。各地の料理にはそれぞれ固有の名前があり、例えば、コルマやローガンジョシュ、モイリーなどが挙げられます。
カレーの定義は非常に曖昧で、世界中で異なる解釈が存在しますが、本書で挙げているカレーの定義はこの二つ。これはいわゆる広義のカレーの概念であって、多くの料理をだいたいこの中に含んでしまうような雑な概念ではあるのですが、実際カレーという料理の射程はこのくらいの広さをたたえています。
定義の後はルーツとしてのインド料理の歴史を中心に細かく紹介しています。とはいえヴェーダ期まで遡ったりしているわけではなく、主にはムガル朝やコロンブス交換あたりから。インド亜大陸の食文化の多様性についても触れられています。インドは地域ごとに独自の食文化を持ち、それぞれの地方が地元で生産された食材を使った伝統的な料理を保っています。そのため、インド全体で共通する調理方法や国民的料理は存在せず、インド料理は多様性に富んでいます。
それからカレーが世界中に広がった経緯について説明されます。15世紀後半にポルトガルが香辛料貿易を支配し、世界中に一大貿易網を築いたことから始まり、ポルトガルの植民地であるアメリカ大陸、アフリカ、オセアニア、インド亜大陸間で植物の交換が行われました。特に唐辛子はすぐに広がり、カレーに欠かせない材料として重要な役割を果たした(いわゆるコロンブス交換)のは有名な話です。
さらに、17世紀から18世紀にかけてイギリスが植民地支配を強化しインドから多くの労働者を他の植民地に送り出したことで、インドの食文化が世界中に広まりました。これにより各地でインドの影響を受けつつローカライズした「カレー」が誕生し、独自の進化を遂げていったわけです。特にイギリスでは、カレーが一般市民に広まり、現在も多くの人に食べられています。
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