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#映画
おとっさんのほかに神はなし
"Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu?"
「私たちは神さまに、何をしてしまったの?」
そんなオリジナル・タイトルをもつ、異宗教間での国際結婚をテーマとした上質のコメディ映画が、邦題『最高の花婿』として今春公開された。
主人公のヴェルヌイユ夫妻は、敬虔なカトリック教徒。フランス、ロワール地方の閑静な田舎町に暮らす夫妻には四人の娘がいる。うち
歌でつながる見えない道
ことばは物事の核心をあぶり出しもすれば、覆いかくしもする。
たとえば語としての「絵画」を「絵画」としてフレーミングすることで、あるいは顔料を生の物質ではなく色の「名」により記号化することで豊かになるものと、失われるもの。映し堕されるもの、似て非なるもの。
オーストラリアの先住民アボリジニのもつ神話的世界観を表すことばに、ドリーミング、ドリームタイムがある。誤解をおそれず簡略に説明
借り物の場所、借り物の時間
“Borrowed place's living on borrowed time.”
今年はじめ日本公開となったピーター・チャン(陳可辛)監督最新作『最愛の子』、日本国内ではどれくらい話題になっていたのだろう。原題は『親愛的(亲爱的)』、中国の幼児誘拐を描いた作品で、実話ベースながら誘拐者側の農村夫婦を突き放さない目線が尋常でなく深い。本作で主な舞台となる急激に都市化した深圳は
このくるしみは、だれのもの
“さて私はこうして地獄の底にいる。もし必要なら人は、過去や未来をスポンジでぬぐい去る技術を、すぐにも学ぶものだ。”
第二次世界大戦終盤のアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所には、遺体処理に従事する囚人の特別労働班ゾンダーコマンドが存在した。映画『サウルの息子』は、ゾンダーコマンドに所属するユダヤ人の男サウルが主人公だ。
サウルは、収容所内で偶然見つけた息子の遺体をユダヤ式に弔うこ
あるアルメニア人の旅路
1915年4月、イスラム世界の覇権国であったオスマン政府により、トルコ東部アナトリア地方ではキリスト教徒アルメニア人に対するジェノサイド(民族・集団消滅を目的とする大虐殺)が始まった。この虐殺による犠牲者数は百万人とも百五十万人ともされるが、現トルコ政府はこの事実をいまだ公式に認めていない。映画『消えた声が、その名を呼ぶ』は、この事件によって唐突に妻や双子の娘たちから引き離されたアルメニ