井伏鱒二『川』を読む(唾玉録 二)
またしても雑談である。
前置き
私は、我が『灯台』同人の他の二人とはかなり違う性質だと前々から感じている。だいいち、二人は以前から小説家を目標のように考え、小説を書くことに喜びを感じ、実際書き続けてきたというが、私はというと小説家になろうと思ったことは思い返せばないではないが、その夢を入れた箱は随分昔に何処かにしまって以来、行方が知れぬので、最近になって小説なるものに手を染め始めるに際しては新たに箱を拵えねばならなかったくらいである。書くものの内容にしても、私は二人のもの