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「すべての仕事はクリエイティブディレクションである。」の備忘録

「MY READING NOTEBOOK」は仕事に活かせそうな本を読んだ社員による、知識共有用の備忘録です。手書きのメモと共に、「こんなことが要点だったよ。」と書き留めておくことで、書き手にとっては、復習と記憶の定着になり、読み手にとっては、時間をかけずに本一冊の(内の一部の)知識が習得できる、Win-Winな備忘録です。


今回読んだ本

今回本を読んだのは、ピラミッドフィルム クアドラ(以下:クアドラ)でクリエイティブディレクターをしている阿部です。

読んだのは古川裕也さんの「すべての仕事はクリエイティブディレクションである。」という本。

古川裕也さんは執筆時は電通CDC局長であり、エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターという、日本のトップクリエイターで、2022年に電通から独立し、今では株式会社古川裕也事務所代表取締役・クリエーティブ・ディレクターをやられております。

2015年に初版が発行された本ですが、今でも十分通用する「クリエイティブディレクションとはなにか?」が初めて明確に定義された本です。

手書きメモ

今回はこの本の中でも特に大切な、「クリエイティブ・ディレクターがすべき4つのこと」という章の備忘録を紹介します。

本を読みながら、大事だと思ったことを殴り書きしているので、読みづらい文字があるかもしれませんがご容赦ください。

クリエイティブ・ディレクションとは何か?を考える上で、広告の仕事を「目的芸術」と説いています。目的からすべてを逆算し、「あり得ないこと」を排除、「あり得ること」を明確に狭めていくという作業です。そしてそれは同時に「不自由芸術」でもあります。つまり、いくら優秀な表現でも、はじめに掲げられた目的を果たせない限り無意味であり、そのルールの中で行われる不自由さ(制約)があるということです。

また、クリエイティブ・ディレクションという技術は、
課題→アイデア→エグゼキューション
という方程式の全てを考え、決定し、実行する仕事であり、これと無縁な仕事は世の中にないので、全てにおいて応用可能なスキルであるといえます。

次に、クリエイティブ・ディレクションの方法論を、4つのステップで紹介します。

ステップ1と2は、クライアントのことを徹底的に考え尽くす、論理的な頭の使い方をするフェーズだと感じました。

ステップ1はミッションの発見。
オリエンではクライアントが言語化し切れなかった、本質的な問題を見つけ、言語化することです。クライアントから伝えられる不満や欲望は表面的な状態であり、その状態を生み出している本当の問題を明確に言語化することが大切で、さらにはクライアントの業態の持つ「原罪」を、世界が抱えるミッションに引き上げます。

ステップ2はコア・アイデアの確定。
コア・アイデアを確定する前にしなければいけないことは、ブランドの社会的存在意義を定義することです。ブランドのDNA・普遍的な哲学を、ワンフレーズで凝縮すること。そしてそれは、現時点における自己紹介ではなく、これから世界のそのパートを変えていくことができるのかという意思表示を含んだ、近未来形のコンテキストで語ることが大切です。

こうやって見つけ出した存在意義は不変ですが、コア・アイデアはキャンペーンのたびに変化します。つまり、「今回何をやるか」がコア・アイデアです。その上で大切なのは、具体的な表現アイデアを考えるべき場所を狭く限定し、他の可能性を全て捨て去ることです。時々ありがちな、「全方位で考えよう」「自由に考えていいよ」「あらゆる可能性を残しておこう」はすべてNG。この発言はクリエイティブ・ディレクターの仕事を放棄しています。そして、このコア・アイデアは、「いいものができそう」「表現アイデアを考えてみたい」と、チームメンバーをワクワクさせることも大切です。

また、この「不自由に追い込む」行為は論理的に行う必要があります。「絶対いける」という判断は非論理的で、直感的にならざるを得ず、逆に「これは絶対にない」は、1ヶ所でもダメなところがあれば即0点なので、ほぼ100%わかります。なので、後者を可能な限り論理的に検証し、不確かな「絶対いける」の確実性を高めるのです。

後半の二つ、ステップ3と4は、ターゲットのことを徹底的に考え尽くす、非論理的な頭の使い方をするフェーズだと感じました。

ステップ3はゴールイメージの設定。
このフェーズでは、ターゲットとの接触面を設計します。重要なのは、みんなが自分に関係あると感じること。そして、接触する最初期に、理性を超えて100%感覚的な力が働くようなクリエイティブ・アウトプットにすることで、ポジティブなキモチでコア・アイデアを受け取れるように誘導することです。抽象的でなく、具体的で身体的な「こんな感じ」というゴールイメージを、チームメンバーとシェアすることが大切です。

また、2010年以降、さまざまな広告がフィロソフィーを語り出したのですが、これは、すべての企業がフィロソフィーを表明することを求められるようになったこと、フィロソフィーへの共感が継続的利益に結びつくことが証明されたことが理由だとされています。ブランドは、商品レベル、サービスレベルでの差別化より前に、コーポレート・レベルでの深い共感が必要で、そのためにブランド自らが語ることが求められる時代になっているということでした。

ステップ4はアウトプットのクオリティ管理。
世の中の人が唯一目にするものがこの最終形の部分になるので、ここがダメだと1グラムの価値もありません。すべてのプロセスはここのためにあります。この最後の仕事において、クリエイティブ・ディレクターは、論理を超えた「くる・こない」問題に関する最終責任者として、傑作にならざるを得ない状態に、仕事とチームを追い込むことが仕事です。

その上で、表現の点数を確実に上げる原理が紹介されています。それが「びっくりさせる力」と「納得させる力」をアウトプットに持たせること。びっくりさせる力に必要な要素は、「異常値を発生させる」こと、「対立とそれを乗り越えた成長で驚きを与える」こと。納得させる力に必要な要素は、異常値をもったこの表現が、「こういうことを伝えたいために必要だったのかと説得力を持たせる」こと。

実際はこの4つの工程が常に直線的に進むわけでなく、途中で止まったり、うまく進まなくて後戻りしてやり直したりすることもあるが、クリエイティブ・ディレクションにおいて必要な工程はこの4つに集約されており、この4つは全てやるべきであり、そして、この4つ以外はむしろやらない方がいいとも書かれています。

この本が気になったら

ここで取り上げた内容は、本で書かれている内容の一部になります。また、読み手のフィルターを通した言い回しになっておりますので、実際にどういう書かれ方をしていたのか、その他どういった話が書かれているのかが気になった方は、以下より購入し、読んでみてください。

クリエイティブディレクターの方はもちろんのこと、クリエイティブディレクターと仕事をする方も、その人の然るべき働きを知りながら一緒に動くのと、そうでないのとでは、仕事の仕方も変わってきそうです。

今回は「すべての仕事はクリエイティブディレクションである。」を読んだ備忘録を書いてみました。こんな本もおすすめなので読んで欲しい。まとめて欲しいなどあれば、是非是非コメント欄などでお教えください。

それではまた次回もお楽しみに。

(この記事の内容は2022年9月13日時点での情報です)


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