あなたは本番に強い
これまでのストーリーで、母や先生からの影響について散々語ってきたが、私が唯一と言っていいほど感謝している洗脳は「あなたは本番に強い」だ。
幼い頃はそんなこと知る由もなかったが、脳には潜在意識に刷り込まれたセルフイメージへ帳尻を合わせようという働きがあるという。
私は母からずっと「あなたは本番に強い」と言われ続けて育った。おかげで本番は緊張しなかった。
発表会では、袖で初めて一緒になった前後の子たちと直前までペラペラ話し、「じゃーねー行ってくる」とばかりにステージに出ていっていたと記憶している。
今考えたら根拠はおそらく何もない。
最初の方の数個の成功体験から、親バカもいくらか手伝って、本番に強い本番に強いと刷り込んだ結果、私のセルフイメージとして君臨したのだと思う。
無論、私もいつから本番に強かったのだか全く覚えていない。
ちなみに言うと、私はこの洗脳をぶち破ったことがある。
洗脳は洗脳が破るのだとその時に気がついた。この洗脳を破った洗脳は、「緊張する〜」と連呼する"一般的な"常識だった。
高校に上がると、ふと"人に評価される"ための承認欲求に目覚めた。高校から変わるんだと思って、これまでの自分自身がやってこなかったことをするようになった。
それがよく働いたこともあったけれど、この「緊張する〜」に関してはそれがマイナスに働いた。
あまりに周りが「緊張する〜」と言っていると、不思議なことに「緊張する〜」側にいた方がいいような気がしてきてしまう。同調圧力とまでいかないけれど近いものかもしれない。
せっかく「本番に強い」私だったのに、「緊張する〜」と言いながら本番ビシッと決めた方がかっこいいような錯覚に陥り、気がつくと本当に緊張するようになってしまったのである。
その後、ピアノではないステージもたくさん経験し、2000人規模のステージにも立て続けに立つようになり、「緊張する〜」からは抜けることができた。
どちらの洗脳も経験して感じることは、結局自分の脳の使い方次第だったということである。
この体験はちゃんと脳の使い方で説明することができる。
次回は、THE GATEでの学びをもとに、その背景を綴ってみたいと思う。
疲れきって、何も考えたくない夜のおともに。