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「珪藻土のファド」
黒実 音子


ポルトガルの漁師が
漁場に積み上げた貝殻を見て、
私はそれを[死骸だ]と思う。

ああ、まさに
シャルニエというやつだ!!
命の死骸だ!!

ワインはね・・
キリストと葡萄の遺骸だよ。
そして、この世は
命の残骸で作られている・・

だからファドを歌うのだろう?
あれはね、
過ぎゆくものの、
失ったものの為の葬儀なのだよ。

あの夜、
サンタ・アポローニャの駅で
泣いていた若者は、
あの日からずっと死に向かって、
孤独にここまで歩いて来たのだ。

我々は魂は満たされても、
少しずつ欠けていって、
いつかは白い骨になっていくから、
その白い砂を拾い集める者が、
この世に図太く生きる命と、
かつてそうだったのに
忘れ去られた死者達を想って
珪藻土の様な
乾いたファドを歌うのだ。

だからギターラも、ほら、
あれは木の躯なんだよ。

いつか我々も
歌わぬ躯になると知りながら、
我々はポルトガルの土の上で歌うのだ。

あの凍てつく雨の夜、
サンタ・アポローニャの駅で
私は確かに
命無きファドを聴いたんだから・・






「墓の魚」オーケストラの
映画の様な配信コンサート・第一弾

スペインの魔女達、南米の迷信、
熱帯雨林の夢、独裁政権と社会主義など、
様々なテーマが入り乱れる
音楽で奏でる幻想文学
「死んだ珪藻とマキシロポーダのミサ」
こちらで公開中です↓↓↓

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墓想の作曲家による海洋生物の死のオーケストラ「墓の魚」記事
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