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美術館と博物館への旅:歳を重ね、フランスで育まれた新たな趣味

いつからだろう。

美術館や博物館を訪れることが、こんなにも心地よい時間になったのは。

十数年前、何となくフランスに移り住むことを決めた時、まさか自分が美術館通いを楽しむようになるなんて想像もしていませんでした。

日本にいた頃の私は、美術館というと修学旅行や海外旅行で必ず立ち寄る観光スポットという印象で、自分から進んで行くような場所ではありませんでした。

でも今は違います。

時間があると、自然と近所の美術館や博物館に足を運ぶようになっています。

パリまで足を延ばして、ロダン美術館やオルセー美術館を何度も訪れることもあります。

以前は「有名だから行かなきゃ」という義務感があったけれど、今では純粋な楽しみになっています。

特に印象に残っているのは、オルセー美術館でのこと。

ミレーの「落穂拾い」を初めて間近で見た時の感動は今でも忘れられません。

教科書やポスターで見ていた時とはまた違った印象で、その場に立って初めて、画家が表現しようとした世界の素晴らしさに心を奪われました。

ノルマンディーの地方美術館や博物館も、私にとっては特別な場所です。

パリの大きな美術館とは違って、地元の画家の作品や、この地方の歴史を伝える展示が中心です。

でも、そこにはそれぞれの物語があって、訪れるたびに新しい発見があります。

歳を重ねることは、見える景色を変えていきます。

四十代後半になった今、私はようやくそれを実感できるようになりました。

おそらく私たちは、歳を重ねることで『時間』の重みを少しずつ理解していくのかもしれません。

それは、過去のものに対する敬意や興味となって現れます。

絵画や遺物に触れることで、自分が生きているこの瞬間が過去から続く長い歴史の一部であることを実感します。

そして、それを感じるたびに、私の中の「今」をもっと大切にしたいと思うのです。

フランスという国に住んでいることも、大きな影響があると思います。

日本では美術館に行くのに「特別な理由」が必要な気がしていましたが、ここでは日常的な楽しみの一つとして自然に受け入れられています。

近所のパン屋さんで買い物をするような気軽さで美術館に立ち寄れること、入館料の手頃さも、この国ならではの素敵な環境だと感じています。

最近は、美術館で見た作品について調べたり、関連する本を読んだりすることも増えました。

そうすることで、作品への理解が深まり、より一層鑑賞が楽しくなって、時には友人と一緒に行って、それぞれの感想を話し合うのも楽しみの一つです。

四十代後半になった今、こんな形で新しい趣味が見つかったことを嬉しく思います。

美術館通いは、私にとって単なる暇つぶしではなく、心を豊かにしてくれる大切な時間となっています。

これからも、この静かで贅沢な趣味を大切にしていきたいと思います。


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