プチドラ

40代後半一般庶民 140字以内で纏められないフランスでの日常生活記録。 文才はありませんが、食べ物、文化、風景など、感じたことを素直にお伝えします。  https://petitedragonne.com/

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フランスの朝ごはんのはなし

フランス人の夫は毎朝同じものを食べる。 コーヒーとビスケット。 それだけ。 たまに前の日のバゲットが残っていると焼いて それにバターとジャムを塗って食べる。 夫にとっては普通の朝。 私にとっては不思議な朝。 「朝ごはんどうする?」と聞かれて 「いらない」と答えると 「日本人なのに?」と不思議そうな顔をされた。 日本人は朝ごはんをきちんと食べる人たち というイメージが根付いているらしい。 確かに実家では 焼き魚に味噌汁 納豆にご飯 卵焼きに煮物 お新香に海苔。

    • 曇りのパリで - バンクシーと私

      今日も、パリの空は曇っていた。 グラン・ブルバールの喧騒を抜け、フォーブール・モンマルトル通りに差し掛かると、控えめな「The Art of Banksy」の看板が目に飛び込んできた。 オペラ座の近くのうどん屋さんで早めの昼食をとってから、私は何度もグーグルマップを確認していた。 劇場やレストランが立ち並ぶこの9区の通りに、ストリートアートの巨匠の展示が、こんなにも日常に溶け込んでいることに驚いた。 チケットを買う際、若い男性が親切な目で私を見た。「Tarif réd

      • セーヌ川に揺れる美の余韻

        今日も私は、旅の途中で迷っている。オルセー美術館に入るまで、パリの空は鉛色だった。 チケットを手に取ると、若い警備員が微笑んだ。その目は、何千人もの旅人を見てきたようでありながら、不思議と疲れの色がない。 足を踏み入れた瞬間、息をのんだ。かつて鉄道駅だったオルセー美術館は、見事な改装を経て、芸術の殿堂として輝いていた。 スマートフォンを構え、最高の角度を探す人々。その光景自体が、現代のアートツアーの一部のようだった。 5階上がってすぐにある巨大な時計の前には、写真撮影

        • 冷たい夜と温かい肉まん:15区の帰り道

          夜のパリ、15区。 アジアンスーパー「タン・フレール」に買い物に出かけた。 「ホテルから徒歩15分だから、たくさん買っても大丈夫だろう。」 そう思ったのが、甘かった。 リュックの中身はこんな感じだ: インスタントラーメン(8個) ラー油 干し椎茸(2パック) 麺つゆ のり などなど 会計を済ませた頃には、リュックが登山帰りのようにパンパンになっていた。 店に着いた時にはまだ空がほんのり明るかったけれど、出る頃にはすっかり夜の帳が降りていた。 薄暗い道を、

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        フランスの朝ごはんのはなし

          幸せはうどんの器の中に:パリにて

          パリのオペラ座の近くに、美味しいうどん屋さんがあると聞いた。 フランスで暮らしてもうすぐ10年。 私はノルマンディーの小さな街に住んでいる。 パリに行くと決めた夜、なんだかそわそわして眠れなかった。 それはきっと、うどんが食べられるからじゃない。 明日、日本に少しだけ帰れるような気がしたから。 「12時半過ぎると混むから。」 友達のアドバイスを思い出し、12時ぴったりに到着。 お店の前に着いた。 「KAMAKIRI HAKATA UDON」 入り口を開けた瞬間、私の中で「

          幸せはうどんの器の中に:パリにて

          日々の食卓にオーガニックを取り入れる選択

          フランスでは、化学肥料や農薬の多用による食の安全性への懸念が以前から強く、オーガニック食品への関心が日本以上に高いと感じます。 日本でも近年、書籍やYouTube、テレビのドキュメンタリー番組などで、食の安全やオーガニックについての情報が発信され、意識が少しずつ広がっている印象です。 ドキュメンタリー番組などでは、人体に有害な農薬や、抗生物質の多用が問題視される養殖サーモン、食品添加物の実態が取り上げられています。 「子どもには安全な食べ物を」、「口に入れるものは安心で

          日々の食卓にオーガニックを取り入れる選択

          日本人としての想いを異国で巡らす

          オテル・デ・ザンヴァリッド、通称アンヴァリッドのフランス軍の歴史に関する国内最大のコレクションがある軍事博物館。 その最後の展示室には、第二次世界大戦時の日本軍にまつわる展示がありました。当時の装備品や武器、そして写真や映像を目にするうち、胸の内に重いものがじんわりと広がっていきます。 日本人として、この場所で祖国の激動の歴史と向き合うと、何とも言えない複雑な気持ちがわき上がってきます。多くの若者たちが戦場で命を落としたことを思うと、自然と涙がこぼれそうになる一方で、彼ら

          日本人としての想いを異国で巡らす

          海外で暮らす日本人女性が勝手に期待されがちな7つの珍事

          こんな私でも、今フランスで、面白おかしく暮らしています。 きっと海外で生活している皆さんも、似たような経験をされているのではないでしょうか?そして、これから海外生活をスタートさせる方にとっても、少しでも参考になればと思います。 まずは、世界的ベストセラーのあの著名人、近藤麻理恵さんの話から。通称「こんまり」さんは、片付け術で絶大な影響力を誇っていますよね。 ある日、フランス人のママ友が、こんまりさんの折り畳み術を自慢げに披露してきたんです。それだけでなく、ロシア人のクラ

          海外で暮らす日本人女性が勝手に期待されがちな7つの珍事

          「ジュマペル アキラ」:80年代東京発、ノルマンディー行きの名前

          フランス語教室で出会った女の子の名前が「AKIRA」だった。 初日の自己紹介で「ジュマペル アキラ」と彼女が言った時 私の中で何かがきらりと光った。 フィラデルフィア出身の彼女の両親は日本のアニメ「AKIRA」の大ファンで その作品への愛を娘の名前に込めたという。 「AKIRA」という作品は世界中のアーティストたちの創造性を刺激し続けていた。 カニエ・ウェストは音楽「Stronger」のMVで、 ネットフリックスの「ストレンジャー・シングス」は物語に、 「パシフィ

          「ジュマペル アキラ」:80年代東京発、ノルマンディー行きの名前

          教科書の中の『考える人』に会いに行く

          パリの空は曇っていた。彼に会いに行く朝、まるで水彩画のように色あせた空が、静かに街を包んでいた。 私は芸術とは縁遠い人間だ。美術の教科書で見た「考える人」以外、ロダンの作品など知らなかった。 ロダン美術館に向かうメトロの中で、スマートフォンで検索した情報を読み返す。 ここには、日本人女性・「花子」という作品があるという。 森鴎外の小説に登場する花子の存在が、この美術館との距離を一気に縮めてくれる気がした。 共通点はただ私も彼女と同じ日本人ってだけなんだけどね。 正

          教科書の中の『考える人』に会いに行く

          異国での食卓の物語「クスクス」

          最初の招待 フランス語教室での出会いは、思いがけない食との出会いにもなった。 アラビア語なまりのフランス語で、いつも優しく話しかけてくれていたアイシャが、ある日私を家に招いてくれた。 「クスクス作るからうちに来ない?」 そう言われた時、正直なところ、クスクスが何なのかさえ知らなかった。 引っ越してきたばかりの私は、まだフランスの食文化さえ理解していない頃だった。 フランスの街角で見かけるクスクス専門店の看板の意味も、スーパーマーケットの棚に並ぶ小麦の粒々の正体も、

          異国での食卓の物語「クスクス」

          ノルマンディーの小さな農場で出会った至福の味

          歴史の重みを今も静かに伝えるサント=メール=エグリーズの近く、コタンタン湿地の懐に抱かれるように佇む小さな農場がある。 「レ・ブイユ・ド・コーキニー」という響きの優しい名前は、1812年にアンフレヴィルに統合される前の村の名前、コーキニーから受け継がれている。 農場を営むクリステルさんとヴァレリーさんは、何十年もの間、この地に根付いてきた家族の想いを大切に守りながら、環境との調和を重んじた乳製品作りに心を注いでいる。 牛たちは年の大半を青々とした牧草地で過ごし、冬も餌の

          ノルマンディーの小さな農場で出会った至福の味

          見た目に騙されてた「きのこ界の貴公子」

          秋になるとスーパーマーケットの野菜売り場は、きのこ一色 きのこ好きな私にはたまらない季節 いつもなら素通りしていた黒々としたキノコの群れが、この日は違った運命を辿ることになった。 私の中の「きのこ図鑑」に、新しいページが加わる予感もないままに。 「これ見ると子供の頃を思い出すんだ」 夫の突然の一言に、私は目を丸くした。 クロラッパタケ、 フランス語では、トランペット・デ・モール(trompette des morts) 直訳すると「死のトランペット」。 その

          見た目に騙されてた「きのこ界の貴公子」

          腹時計とサマータイムの終了 

          人間の体内時計って、まったくもって不思議なものです。 目覚まし時計は電池切れを起こすこともあれば、スマホはフリーズすることもある。 でも、私の腹時計だけは、さながら高級時計のように正確に「お腹空いた」を刻み続けてきました。 そう、少なくとも昨日までは。 昨日、2024年10月27日。 ここフランスではサマータイムが終了し、標準時間に戻る日でした。 秋のゆったりした日曜日、突然の「ぐぅ〜っ!」というお腹の合図と 「あー、お腹空いた〜」って 時計を見ると、まだ12

          腹時計とサマータイムの終了 

          夕日に染まる城壁の街で、フランス風焼肉を味わう

          秋の夕陽が城壁を赤く染める中、13世紀の城壁を一周して、へとへとになった私たち。 「そろそろ夕ご飯にしない?」とエーグモルトの城壁内をぶらぶら歩いていると、 レストラン『Le Galion』が目に入りました。 黄昏時のほの暗い通りに、店の温かな明かりが漏れています。 看板を見ると、どうやら開店したばかりのよう。 入口で「ボンジュール!」と笑顔で迎えてくれるお店の人の雰囲気も良くて、 夫の「ここ、いいんじゃない?Pierradeも美味しそうだし」という提案で、店内に

          夕日に染まる城壁の街で、フランス風焼肉を味わう

          フランス田舎の「信頼のシステム」とファルシ作り

          暮らして初めて分かることって、たくさんある。 テレビやネットで見る「フランス」と、実際に住んでみての「フランス」は、やっぱり違う。 治安の話なんかは特に。 でも、都会から少し離れた田舎町に来ると、また違った顔を見せてくれる。 それが... 無人販売所との出会い。 なんと驚きの「値段設定なし」! お客さんが良心的に支払う金額を決められるシステム。 しかも全部オーガニック! 看板には「100% Naturel, 0% Traitement」(100%自然、0

          フランス田舎の「信頼のシステム」とファルシ作り