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【映画の中の詩】『白い蘭』(1934)

共に年老いていこう!    最良の時はこれからだ

Grow old along with me!
The best is yet to be,

"Rabbi ben Ezra" by Robert Browning

エリザベス・バレットとロバートのブラウニング夫妻の文学史に残る愛の物語。
寝たきり同然で死を待つのみだったエリザベスがロバートとの出会いと詩の力で生命力を取り戻してゆく。
1957年にジェニファー・ジョーンズ主演でリメイク(というか原作戯曲があるので「再映画化」)されています。

当時評判を取ったという、ルドルフ・ベジアの戯曲『ウィンポール街のバレット家』が原作です。
特筆すべきは、この戯曲を観たであろう、ヴァージニア・ウルフが映画にも準主役(?)として登場している、エリザベスの愛犬であるフラッシュが主人公の中編を書いていることでしょうか。

参考リンク:
『フラッシュ ―ブラウニング夫人の愛犬』ヴァージニア・ウルフ 著, 大沢実, 柴田徹士, 吉田安雄 訳
https://dl.ndl.go.jp/pid/1694429/1/36

『ウヰンポール街のバレツト家 : 五幕喜劇 』ルドルフ・ベジーア 作, 神戸女学院英語師範科三年一同 [訳]
神戸女学院の学生さんの共訳本。〈映畫化されましたものが「白い蘭」と題して今夏、阪神地方に來て居りました〉というので数ヶ月で翻訳、出版したのでしょうか。すごいですね。 https://dl.ndl.go.jp/pid/1037429/1/2


『十四行詩(ソネット)―ポルトガル語からの―』(石井正之助訳) 世界詩人全集 第3巻 河出書房 https://dl.ndl.go.jp/pid/1335731/1/91

『夢で逢いましょう』はドリス・デイとダニー・トーマス主演。作詞家ガス・カーンと夫人で作曲家のグレースの物語。
恋愛詩など取るに足りないものと思っていたカーンがグレースの父親の朗読するエリザベス・ブラウニングの詩に打ちのめされるシーンがある。
詩は映画『欲望という名の電車』(1951)でも読まれた『ポルトガル語からのソネット』の43番。

《追記 2024/11/14》
『ある書誌学者の犯罪 : トマス・J.ワイズの生涯』〈第7章 E・ブラウニング『ポルトガル語より移された十四行詩』〉
によるとエリザベスの『ポルトガル語からのソネット』の28番はこの出会いの日にいたる彼女のこころのゆれうごきを綴ったものです。

#28
私の大事な手紙、みんな生命のない紙片(かみきれ)、 …… 物も言わず眞白な。――
しかもそれらは生きて慄えているように思われるのです
今宵紐をといて膝の上に落す
私の手のおののきにこたえて。
これには書いてありました、 …… あの方が私を友達としてひと目見たいと
望まれたことが。この手紙であの方が春の一日を選んで
私の所に見え 私の手にお觸れになつた …… ただそれだけのこと、
それなのに私は泣いた。――これには …… この手紙の輕いこと ……
こうあつた、「いとしい人よ、私は君を愛します、」と。そして私はくずおれて慄えた
まるで來世が私の過去の上に雷となつて落ちたように。
この手紙は語つた、「私はあなたのものです。」――そしてそのインクの色は
あまりにも速い私の胸の動悸のそば近く身を伏せたために褪せてしまつた。
それからこの手紙 …… ああ愛よ、あなたの言葉は仇となつたのです、
よしやこの手紙の言葉を、私が逐に怺(こら)えきれず敢て繰返えすとしましても。

『十四行詩(ソネット)―ポルトガル語からの―』(石井正之助訳) 世界詩人全集 第3巻 河出書房https://dl.ndl.go.jp/pid/1335731/1/91

※ショートバージョンです 
 


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