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映画『私がやりました』 ワイルダーならどうする?(ネタバレ感想文 )

監督:フランソワ・オゾン/2023年 仏(日本公開2023年11月3日)

映画の舞台は1935年。
劇中で主人公たちが映画を観に行きます。
作品はビリー・ワイルダーの『ろくでなし』(1934年)。
正直言って、今回初めてその名を知った作品です。
そもそもビリー・ワイルダーがこの年に映画を撮っているとは思っていなかったんです。やはり1950~60年代のイメージでしたから。
調べたら、監督デビューしてまだ間もない頃で、当時フランスに亡命していて、フランスで撮った作品のようですね。

何が言いたいかというと、この『私がやりました』は、フランソワ・オゾンの「ビリー・ワイルダーやってみよう!」の巻だと思うのです。
特に60年代にI・A・L・ダイアモンドと共に脚本を書いていた辺りのワイルダー的コメディ。
実在するビリー・ワイルダー作品を持ち出すのは、オゾンによるオマージュであり「ビリー・ワイルダーやってみよう!」宣言の証です。

ビリー・ワイルダーを敬愛する日本代表は三谷幸喜ですから、本作は「三谷幸喜っぽい」と考えると腑に落ちると思います。
いや、腑に落ちない話なんだよ。
荒唐無稽と言うか、無茶苦茶と言ってもいい。
でも、しょうがないよね。ワイルダーってそういうもんだから。
映画史上名作と名高い『お熱いのがお好き』(1959年)とか超バカバカしい話だから。傑作だけどね。超大好き。ププッピドゥ。
『あなただけ今晩は』(63年)とか最高にトチ狂ってるしね。
『ワン・ツー・スリー/ラブ・ハント作戦』(61年)も好きなんですよ。
あ!いま調べたら、オードリー・ヘップバーン主演『昼下がりの情事』(57年)なんか、好きすぎて、この15年で3回も観てたよ。

そういうわけで、このオゾンの新作は楽しく観たのですが、「ビリー・ワイルダーだよね」ってこと以外に語るべきことがあんまりありません。
強いて言えば、女性の権利を主張する辺りがオゾンらしい特徴ではありますけど。

フランソワ・オゾンは多作ですし、その作風も幅広く、特徴が捉えにくいのですが、自身がゲイであることを公表しているせいでしょうか、「性」を強調した作品が多い印象があります。
単に同性愛を扱った作品が多いというだけではありません。
「男性と女性」という関係においても、単に惹かれ合う(自然な)関係という位置付けになく、性(あるいは性差)が物語やテーマの核となっている場合が多いように思います。

そう考えると、オゾンの映画で称賛されるのは常に女性で、死ぬのは常に男のような気がするな。違うかな?

さらに、そう考えると『お熱いのがお好き』の時代の先取り感は桁外れだな。完璧な人間はいませんからね。

(2023.11.05 渋谷WHITE CINE QUINTにて鑑賞 ★★★★☆)

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