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映画『ベルリン・天使の詩』 宇宙人ジョーンズみたいなもの?(ネタバレ感想文)

監督:ヴィム・ヴェンダース/1987年 西独=米

『ことの次第』(1982年)の感想でも書いたのですが、私はヴェンダースが苦手です。んー、過去形でもいいのかな?苦手でした。

この『ベルリン・天使の詩』は過去に2回観ているはずなんですが、ほとんど記憶にない。
ピーター・フォークがピーター・フォークとして出演していることしか覚えていない。ちなみに私、隙あらば『刑事コロンボ』の再放送を観ているんですが、ウチのカミさんがね、過去に一緒に観たって言うんですよ、この映画。
最初に観たのは大学生の頃(公開時だったかな?)に一人で観たはずですが、2度目はいつ観たんだろう?名作と名高いのに、それくらい忘却映画。

『ことの次第』の感想文で、後半ちょっとしたハードボイルドで「まるで『ロング・グッドバイ』(73年)だ」って書いたんですが、そしたら本作の台詞で「フィリップ・マーロウのように猫に餌をやりたい」って言うんですよ。なんだ、やっぱりヴェンダースは『ロング・グッドバイ』好きなんだ。

そんな台詞を言わせるということは、本作はヴェンダースなりのハードボイルドなのでしょう。ま、私のハードボイルド定義からしたら恋愛要素が強すぎますけどね。私は、SFはハードSF指向、ハードボイルドもハード・ハードボイルド指向なんです(<ハード・ハードボイルドってなんだよ?)。

ただ、ハードボイルド要素の一つである「アウトロー」という観点で言えば、ブルーノ・ガンツ演じるこの映画の主人公はアウトローなんですよ。
まさか彼が、後々ドイツ映画で初めてヒトラー役を演じるとは思わないだろ?
ついでに言うなら、まさかこの映画製作の2年後にベルリンの壁が崩壊し、その翌年に東西ドイツが統一されるとは、お釈迦様でも知らぬ仏のお富さん。あ、天使だった。

まあ、ベルリンの壁崩壊は後の者だけが知る結果論ですが、製作時点のヴェンダースの意図はドキュメンタリー的なことだったような気がします。
映画は「寓話」の形をとっていますが、1961年にベルリンの壁が作られてから約四半世紀が過ぎた、当時の「リアル・ベルリン」をカメラに収めたかったのではないでしょうか。

天使同士が、人類の歴史みたいなことを語らいますよね。
群衆から石が投げられてから戦争の歴史が始まったみたいな。
この頃のヴェンダース、能書きが多いんですよ。途中でテレンス・マリックかと錯覚したもん。こういう所が苦手なんだ。

でも、最後に「安二郎、フランソワ、アンドレイに捧げる」的なメッセージが出てきて、なんだか全て腑に落ちた感じがしたんです。

おそらくこの映画が描く「庶民」「市井の人々」は小津安二郎的なことなんでしょうし、恋愛要素はフランソワ・トリュフォーを意識しているのでしょう。
そして映画全体は、アンドレイ・タルコフスキー。
そうか。タルコフスキーの影響だと思ったら、全部納得がいく。

「能書き」たれてるだけの「傍観者」にすぎない天使が(天使は必ずしも人を救えるわけではない)、地に足を付けて前向きに生きていこうとする話なんだと思うんです。
天使が地に足を付けて、人間が空中で舞ってるんですけどね。
いずれにせよ「人生悪くないぜ!」って話。
で、「地に足を付けて前向きに生きていきましょう」というメッセージを、当時のリアル・ベルリン=ドイツ国民に向けて発した映画のように思えるんです。

そう考えると、2年後にベルリンの壁が崩壊する予兆のような「空気感」を、何か感じ取っていたのかもしれませんね。

(2024.11.16 TOHOシネマズシャンテにて再鑑賞 ★★★☆☆)

3度目の鑑賞にしてだいぶ理解できるようになりましたけど、好きな映画ではないね。
あと、どーでもいいけど、図書館に屯(たむろ)しすぎじゃね?

あれ?俺、『PERFECT DAYS』(2023年)でも「BOSS」のトミー・リー・ジョーンズを語ってるな?

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