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映画『ロスト・イン・トランスレーション』 ソフィアの東京見聞録(ネタバレ感想文 )

監督:ソフィア・コッポラ/2003年 米

2004年の公開時以来の再鑑賞。いまや貴重な35mmフィルム上映でした。
そういや、女性映画監督の歴史の中で重要な位置を占めるという話を書きましたね、『バービー』(2023年)で。

今やソフィアと呼んで、欠かさず観ている監督です。大好きソフィア。
こっちをお向きよソフィア(<それは山下久美子)。
でも、当時は「コッポラの娘」と呼んでました。
まあ、親の七光りと軽く馬鹿にしてたんですよね。
ほら、彼女は女優としてラジー賞も獲ってるし(笑)

ところが、この映画のファーストショットで度肝を抜かれたんですよ。
ベッドに横たわる女性のパンツ。
異国のホテルで一人残されて退屈と孤独を感じている女の表現を、こんなショットで切り取るとは。
まさか、女の尻が孤独と退屈を物語るとは思わなんだ。

いやもう、ソフィアは子供の頃から8mmカメラとかで遊んでたんじゃねーの?ってくらい抜群のセンス。

そのセンスのまま、彼女の視点での「東京見聞録」。
そういった意味では、ソフィアの次作『マリー・アントワネット』(2006年)もヤンキー娘のおフランス見聞録なんですよ。

そう考えると「オジサマ好き」もソフィアの等身大なのかもしれませんけどね。
いや、あれだな、父親とかその周囲の「素敵な大人」に囲まれて成長したんだろうな。
もしかすると、センスと言うよりも「目が肥えている」と言う方が正しいのかもしれません。

話としてはシンプルな、男と女が「すれ違う」物語なんですが、その距離感、手を伸ばせば触れられるのに触れない僅かな距離感。
これはやっぱり男には描けないし、やっぱりセンスだと思うんです。
変にオリエンタリズムに溺れない(当時の)東京の空気感の切り取り方ともそうなんですけど、「自然体」なんです。

肩の力が抜けた自然体の映画。
うまく言えないけど、そういう映画です。

(2023.11.19 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて再鑑賞 ★★★★☆)

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