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映画『張込み』 刑事張込み物の手本。あんぱんと牛乳より基本(ネタバレ感想文)
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本当に素晴らしい作品で大好きな作品なんですが、きちんと観るのは30数年ぶりで、その間、ドラマ版とかもいくつか観ているもんだから、記憶がゴッチャになってて(笑)
久しぶりに観たら新たな発見がいっぱい。
おそらく映画内の時代は製作当時の1958年(昭和33年)でしょう。
『ALWAYS 三丁目の夕日』(2007年)という私の嫌いな絵空事映画があるんですが、その作品の時代設定が同じ昭和33年だったはずです。
まあ、当たり前っちゃ当たり前なんですけど、そのリアリティの差に唖然とします。東京と地方の差があるにせよ、絵空事ではないこの時代のリアルは画面の濃度が違う。
特に、長いアバンタイトルで描写される鉄道シーン。この長旅を観客に体感させる手腕。
余談ですが、この映画の鉄道に関する素晴らしい考察をお書きになられているサイトを見つけました。ま、私の備忘録。
それはさておき、この『張込み』、夏の暑さも手伝って、熱量が凄い。
監督の野村芳太郎39歳、脚本の橋本忍40歳。まだまだ若い。橋本忍なんか百歳まで生きましたからね(<それは関係ない)。
製作陣が年寄りだと、視点が老成して、ここまでの熱量を帯びないと思うんです。
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あと、原作は張り込む刑事は一人だったと記憶していますが(珍しく原作を読んでいる)、映画は二人にしたんですよね。
実際の警察も二人で動くそうですが、「ベテラン刑事と若手刑事」という定番の刑事コンビの発祥は日本だという説があります。この映画が発祥・・・と言いたいところですが、それ以前に黒澤明が『野良犬』(49年)でやってます。
二人のポイントって、二人の会話で、観客に事情を説明できるんですよ。
「亭主が出かけます」「まるで判で押したような生活だな」
この会話で、観客に説明ができる。
特にベテランと若手の組み合わせは、「ベテランが若手に教える」体で、会話の流れで観客に解説ができる。
実は「ベテラン・若手コンビ」って脚本の発明なんです。
あと、汗ね。
黒澤明の『野良犬』もそうだし『天国と地獄』(63年)もそうですけど、夏なんですよね。「手に汗握る」サスペンスは、文字通り観客に汗を感じさせようとしているのかもしれません。
あと、改めて観てビックリしたのが、結構カメラが動いていること。
当時のカメラは大きいし重いし、当然、手振れ補正機能なんかありませんからね。なんなら、クレーン使ってるよね。え?佐賀までクレーン運んだの?
でも室内でクレーンは使えないから、手持ち移動してるよね?
野村芳太郎って時折無茶な撮影しますよね。
『砂の器』(74年)は四季(つまり一年)を撮ったり、『事件』(78年)の冒頭ではヘリコプターから超望遠で撮影したりとかさ。
あとあと、やっぱり脚本が素晴らしい。
大枠は、張込みをする刑事の物語です。
その枠の中で、見張られている人妻デコちゃんの物語があるわけです。
退屈な日常と「元カレ」という非日常の物語です。
そして、そんな人妻の「日常と非日常」を垣間見た若い刑事が「自身の結婚(=日常生活)を考える」物語にもなっている。
特に最後の若い刑事の物語は原作にはなく、天才橋本忍の創作と思われます。
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まあ、この若い刑事はその後、名探偵になるんですがね(すいません、京マチ子主演『黒蜥蜴』(62年)の話をしています。気にしないでください)
(2024.07.29 BS松竹東急にて再鑑賞 ★★★★★)