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映画『Cloud クラウド』 黒沢組は常に廃工場を探してるんだろうな(ネタバレ感想文)

監督:黒沢清/2024年 日(2024年9月27日公開)

困ったな。
正直に言いましょう。私は面白くなかったんです。
ま、ナンダカンダ言いながら黒沢清の長編映画はほぼ全て観てるんで、初めてのことではないですけど。特に最近は口に合わないことが多い。

何だろう?怖くないんです。何が原因なんだろう?現場が楽しかったのかな?なんとなく和気あいあいの雰囲気が伝わってくる。harp_tone 琴音ちゃんなんか伊右衛門のCMの方が不気味じゃない?

いろんな解釈が可能かと思いますが、私は「人としての何かを失っていく物語」だと思います。
いやまあ、物語を紡ぐ気は無いと思いますけどね。
いや、あるのかな?画面の作りは緻密だけど話運びは出鱈目なんですよ。
出鱈目すぎてコントにしか見えない。

黒沢清作品のいい所は、現実的なオチや辻褄合わせで「なーんだガッカリ」ということがない。
でもね、最初っから現実的ではない。というか現実味がない。人の気持ちが不自然。誰の気持ちも分からない。気持ちの分からない人達の集団劇。唯一気持ちが分かるのは山田真歩くらいしかいない。

いや、分かるんですよ。半分以上分からないけど分かるんです。
荒川良々のキャラはまるで『クリーピー』(2016年)ですし、腕の立つ謎の部下(佐野君だっけ?)は『ドッペルゲンガー』(03年)ですよ。
なんなら、若手俳優大集合的な感じが『アカルイミライ』(03年)すら彷彿とさせる。

私は黒沢清を「この世界は不安定であることを描く作家」と評していて、この映画もまた、その大きな物語の延長戦上にあるように思うのです。
これまでは「不安定なコッチの世界」が「アッチの世界」に侵食される話が多かった。でも本作は、「人として何かを失った者」が「アッチの世界」に足を踏み入れていく話のように思えるのです。
おなじみの「半透明ビニールびろ~ん」からの無人の世界。私は「黒沢清の黄泉よみの国」と呼んでますけどね。そのアッチの世界に踏み込んでいく話。

あ、そうか!
もしかすると黒沢清は既にアッチの世界に召されてしまっていて、アッチの世界からコッチの人間界を見ると、この映画みたいに「出鱈目」に見えるのかもしれないな。
なんだか納得した。

(2024.10.06 TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞 ★★☆☆☆)

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