映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』お前がJ・エドガーだったろ?(ネタバレ感想文 )
私は熱心なスコセッシファンではないので、彼の新作を追っているわけでもないのに、何故この3時間26分もの長尺を観なきゃいけない義務感に駆られて映画館に足を運んだのか分からないんですがね。
結果、面白かった。
長尺なのに全然飽きない。あっという間。
何て言うのかな、「映画」でした。
最近流行りなのは小手先が派手な「映像」ばかりなんですが、これは見事な「映画」。
スコセッシ爺さん、さすがに最近お年を召されましたねと思っていたのですが、いやいやどうして、前作『アイリッシュマン』(2019年)より若返ってました。
だって『アイリッシュマン』は思いのほか老後の描写が長くてさ。
当時77歳のスコセッシが、60代の年寄りと80代の年寄りを描き分けた作品だったんですよ(<穿った見方)。
ま、若返ったと言っても、爺さんは爺さんですけどね。
やっぱり、年寄りって歴史好きよね。
最近のスコセッシ作品は、伝記とか歴史とかばっかりじゃない?
ヒットガール=クロエちゃん目当てで観に行った『ヒューゴの不思議な発明』(21年)だって、『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895年)とか『ロイドの要心無用』(1923年)とか、映画史の記念碑的な作品へのオマージュを盛り込んでたもん。
だからもう、アラフィフのデカプーなんか、80歳のスコセッシ爺さんの前では、いつまでたっても小僧扱いですよ。
デ・ニーロも同様。お尻ペンペンしちゃうぞ。
劇中、FBIが登場しますね。
そもそも、この1920年代の先住民の話自体も面白いのですが、フリーメイソンとかKKKとか、アメリカ史を形成する要素をチラっと出してきます。
これ、ガッツリ出してくると重いんだけど、その「避けないけど深掘りもしない」辺りのさじ加減が抜群で、そこも長尺を飽きさせなかった要因ではないかと思っています。
あ、そうそう、それでFBIね。
日本語字幕では「捜査局」と書かれていたかな?
ま、FBIの日本語訳は「連邦捜査局」だからね。
「誰の指示で来た?大統領か?」みたいなことを聞くと捜査官が「ジョン・エドガーだ」って言って、たしかデカプーが「知らんな」みたいなこと言うんです。さらにデカプーはFBIを「探偵」と勘違いまでします。
FBI長官ジョン・エドガー・フーヴァーの半生は、映画『J・エドガー』(2011年)で描かれています。
監督クリント・イーストウッド、主演レオナルド・ディカプリオ。
お前がJ・エドガーじゃ。
ついでに言うと、イーストウッド93歳からしたら、スコセッシなんかまだ小僧なんでしょうよ。知らんけど。
(2023.10.29 吉祥寺オデヲンにて鑑賞 ★★★★☆)