映画『首』 アウトレイジかと思ったら風雲たけし城だった(ネタバレ感想文 )
北野武監督作品は、『アウトレイジ 最終章』(2017年)以外は全部観ています。
なので、北野武作品を観るのは『龍三と七人の子分たち』(15年)以来。
また、観た作品の中で、唯一映画館で観ていないのが『アウトレイジ ビヨンド』(12年)。有り体に言うと『アウトレイジ』(10年)が死ぬほどツマラナかったので、北野武作品から離れていて、この映画も予告を観る限り『アウトレイジ』の匂いがしたので、心配だったんです。
ちょっと話は脱線しますが、映画マニアに言わせれば、『首』と言えば橋本忍脚本、森谷司郎監督、小林桂樹主演の『首』(1968年)なんですけどね。
いえ、私はマニアじゃありませんよ。
で、まあ、『アウトレイジ』かと思って観に行ったら、「風雲たけし城」でした。
たけしが周囲の人間にあれこれやらせて、自分は高みで笑っている話。
小林薫のコント影武者とか、荒川良々のコント切腹とか、遠藤憲一のコントBLとか。大森南朋と浅野忠信なんかアドリブで振り回されてるしね。
そう考えると、この2人はダンカンとガダルカナル・タカなんですよ。
あるいは、『スター・ウォーズ』(1977年)R2-D2とC-3POでパクられる『隠し砦の三悪人』(58年)の千秋実と藤原釜足。
そうか!コント『影武者』(80年)とか、黒澤明オマージュだったんだ!(<そうか?)。
やっぱり、いま改めて感じるのは、たけしの笑いは「不謹慎を笑う」ってことなんですよ。そういった意味では「赤信号みんなで渡れば恐くない」から変わっていない。
ここでまた話が脱線しますが、この「不謹慎を笑う」って高いスキルが必要だってことを最近知りました。
東京オリンピック直前に叩かれた小林賢太郎。
私はラーメンズ好きなので、何故叩かれたのか、何故開会式の演出を降ろされねばならなかったのか、当時はおろか今でも分かりませんが、世の中の大多数は「笑いのスキルが低いんだ」ということを知りました。
それはね、笑っちゃいけないようなことだから、可笑しいんですよ。
少し真面目なことを書くと、たけし演じる秀吉が自身を「百姓出だから」と言うのが2,3度あるんですよね。でも、本当の秀吉のプライドだったら絶対に言わなかったと思うんです。
でも北野武は、わざと出自をネタにして、成り上がった自分自身を秀吉に重ねたんだと思うんです。
そしてそれをもう一世代若い世代、つまり中村獅童の役に受け継ぐんです。
ある意味、「若者よもっと成り上がれ」「君たちはどう生きるか」という話なのです(<そうか?)
ただ残念なのは、たけしも年老いたし、もう中村獅童も若者じゃない。
役者の起用は適材適所なんですが、全体的にちょっと年をとりすぎ。
10年前、いや20年前に観たかったというのが本音。
この映画が「構想30年」だそうですから、遅きに失した感はあるんですよね、ちょっと。
余談
たけしは時折(というか結構な頻度で)「これがホントのニッポン芸能史」的なことをやるんですよ。『座頭市』(03年)のタップとか。
そう考えると、落語の始祖と言われる曽呂利新左衛門を出した(ある意味核である)のは必然のような気がします。
(2023.12.17 ユナイテッド・シネマとしまえんにて鑑賞 ★★★★☆)