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私の映画鑑賞録2021(ネタバレ感想文)

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2021年新作映画のマイベストは『トムボーイ』。いや、日本公開が今年だっただけで本当は2011年の映画だけど。
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2021年10月の記事一覧

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』 (ネタバレ感想文 )1万年経っても争いの絶えない世界に失望する。

どういうわけだかデヴィッド・リンチにもアレハンドロ・ホドロフスキーにも縁がなく、このままだとドゥニ・ヴィルヌーヴとも無縁になりそうだったので映画館に足を運びました。DUNE小話。 この手のいわゆるハリウッド大作を最近あまり観ないんですよ。壮大なスケールの話よりも『君の名前で僕を呼んで』的な私小説の方が好きなもんで。シャラメ小話。 アジア系の医師役が誰か分かる?というヨメの問いに「土屋嘉男だろ?『七人の侍』の。嫁をとられた役。」「『牯嶺街少年殺人事件』の少年だって。」「ええ

映画『未来世紀ブラジル』 (ネタバレ感想文 )映画史に残るレトロ未来感

私はテリー・ギリアム好きなんですが、ウチのヨメからは 「最初に特大場外ホームランを見ちゃったからファンになったけど、実は打率が低いんじゃないか」疑惑をかけられています。 その特大場外ホームランがこの映画。午前十時の映画祭のおかげで約30年ぶりの再鑑賞。 まあ、「世界一コスパの悪い監督」だとは思いますよ。 独特のビジュアルイメージは、言わば「昔考えられていた未来」。名付けて「レトロ未来感」。 これ、アニメやゲームは多いと思うんです。宮崎駿なんかもこれに近い。 ところが実写でや

映画『小さな恋のメロディ』 (ネタバレ感想文 )子供はよく走り、大人はよく食べる。

実は観たことなかったんです。微塵も。 ほら、ビージーズと言えば「メロディ・フェア」より「ナイト・フィーバー」や「ステイン・アライブ」の世代だからさ。 嘘。『サタデー・ナイト・フィーバー』(77年)も『ステイン・アライブ』(83年)も観てない。 てゆーか、日本人、この映画やたら好きよね。英米じゃヒットしなかったそうだけど。 近所の映画館でデジタルリマスター版を観たのですが、微塵も知らないもんだから、オープニングテロップで脚本にアラン・パーカー(<それは薄々知っていた)、製作

映画『トムボーイ』 (ネタバレ感想文 )世界は君に微笑んでいる。

なんて素晴らしい映画! 昨年観た『燃ゆる女の肖像』(19年)がとても読み解き甲斐のあるいい映画でした。そのセリーヌ・シアマ監督の以前の作品。日本公開は今年ですが、製作は10年前の2011年。彼女が32歳頃に監督した長編2作目。 この主演の子役をよく見つけたなあ。これ、1年違ったら身体つきもだいぶ違ってしまったでしょう。奇跡としか言いようがない。 ニルヴァーナ「ネヴァーマインド」ジャケットの「世界で最も有名な泳ぐ赤ん坊」が性的虐待だか児童虐待だかで30年も経った今提訴したとい

映画『恋文』 (ネタバレ感想文 )倍賞美津子はいい女。燃えろいい女。

2003年に連ドラになってたんですよ。 主演は渡部篤郎、水野美紀、和久井映見。脚本は岡田惠和。水野美紀とか和久井映見とか好きよね。 岡田惠和フリークなので当然そのドラマを観ていたんですが、「いつかショーケンの映画も観たいね」と夫婦で話して早18年。ついにその「いつか」が来ました。だいたい我が家はこれくらい呑気に暮らしています。そして今調べて分かったんですが、その連ドラの際の子役が後の「ひよっこ」の三男でした。これが歳月の恐ろしさ。 「ショーケンの映画」という認識でいたのです

映画『それから』 (ネタバレ感想文 )淋しくっていけないから、また来て頂戴。

私、森田芳光信者です。 当時高校生だった私が入信する決定打となった作品が本作です。 しかしなんてことでしょう。 ネット上に映画感想の駄文を書き散らかして四半世紀になりますが、その間一度も再鑑賞しなかった。『そろばんずく』(86年)なんか3度も観てるのに。なんで3度も観てんだよ。 今回、神保町シアターでの上映を偶然見つけ、 「宿は神保町だ。あれに乗って帰るよ」という小林薫の名台詞(<全然名台詞じゃない)にならって神保町で観るべき映画だと急に思い立ち、 「明日はダメだ。今日はど