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映画『DUNE/デューン 砂の惑星』 (ネタバレ感想文 )1万年経っても争いの絶えない世界に失望する。

どういうわけだかデヴィッド・リンチにもアレハンドロ・ホドロフスキーにも縁がなく、このままだとドゥニ・ヴィルヌーヴとも無縁になりそうだったので映画館に足を運びました。DUNE小話。

この手のいわゆるハリウッド大作を最近あまり観ないんですよ。壮大なスケールの話よりも『君の名前で僕を呼んで』的な私小説の方が好きなもんで。シャラメ小話。

アジア系の医師役が誰か分かる?というヨメの問いに「土屋嘉男だろ?『七人の侍』の。嫁をとられた役。」「『牯嶺街少年殺人事件』の少年だって。」「ええっ!」「それに『黒衣の刺客』で狙われる官僚。」「ええっ!刺したり刺されたり大変だな。」これは何小話だ?

教母がシャーロット・ランプリングで驚きました。そういやリンチ版はシルヴァーナ・マンガーノでしたね。大女優担当パートなのでしょうか。
そういや爆笑スティングの役はどこへ消えたんだろう?

この映画、シャラメ君が直接「手」で自然に触れます。
草花に触れ、水に触れ、砂に触れる。そしてその「手」が苦痛に耐える。
いずれ世界を救うであろう彼の手は、痛みも美しさも含めて世界に触れ、世界を知っていくのです。
大味になりがちな話を、個人の物語に落とし込もうとする監督の意図なのでしょう。繊細で丁寧な演出に好感が持てます。

当然、シャラメ君の成長物語が一つの軸になります。
ところが成長しないまま映画は終わってしまう。
『ゴッドファーザー』で言えばマイケルが初めて銃を抜いた辺り。愛のテーマすらまだ流れていない。
そうやって突き詰めていくと、成長譚じゃなくてボーイ・ミーツ・ガールの物語に見えてしまいます。ナイーヴな御曹司が闘う女子に恋をする。まるでラノベ。華奢な文系男子だと思ってたら腕っぷしも強いのね、いやぁん。まるで少女マンガ。

そもそも、1960年代に書かれたこの話は今でも面白いのか?

1万年後でしょ?
人類の幼年期は終わってるはずなんだけどなあ。まだ利権争いなんかやってんの?
どんな科学的進化を遂げたら「中世ヨーロッパ風」に逆戻りするかな?
だいたい1万年後なんて雑な設定、もはや未来じゃなくて異世界だよね。

1940-50年代にアシモフが発表した「ファウンデーション」シリーズがそうですが、欧米って「ローマ帝国衰亡史」好きですよね。日本人の戦国時代or幕末好きと一緒。ちなみにゲームは三国志が多過ぎない?みんなそんなに三国志好きなの?

欧米人が大好きな「ローマ帝国ロマン」に、これまた欧米人大好き『オイディプス』的「父親超え」の話が加わります。典型例は『スターウォーズ』。
そして前述した男の子の「成長譚」。
おそらく今後考えられるのは「復讐劇」に「救世主」。もしかすると「自然との調和」も語られるかもしれません。
おそらく、小説「DUNE」自体が、SFというより「架空歴史スペクタクル」に近いのでしょう。読んでないけど。そしておそらく、複雑で強烈なスパイスで多数の読者を魅了したのでしょう。
でも結局、黒人やアジア人の前に「白人救世主」現るって話なんでしょ?
以前ならいざ知らず、今となっては欧米人のベタな好みが詰まった話。やだベタベタするわ。

なので、少し前なら「こんな凄い映像が撮れるんだ!」と思ったかもしれませんが、今や「まだこんな話撮ってんの?」というのが正直な感想。

でもきっと、ドゥニ・ヴィルヌーヴはSF好きでSFへの造形も深いのでしょう。撮る画面(えづら)全てに「心得ていらっしゃる」感がある。
この星の衛星が二重惑星だなんてちょっと痺れる。
そういた意味では、この監督の「やりたかった!」意欲は感じます。
シャラメ君も観てて飽きないし、嫌いじゃない。

(2021.10.24 TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞 ★★★☆☆)

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監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ/2021年 米(日本公開2021年10月15日)

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