ぺん

大学院修士2年生。政治思想史を勉強しています。個人経営塾の講師もしています。読書記録、書評、映画や展覧会の感想、論考のネタ、エッセイ、日々の記録、など。

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自分自身について(つまり自己紹介)

こんにちは。クリエイターページにお越しいただき、どうもありがとうございます。 このnoteには、在野研究者を目指す私の読書記録・勉強計画・エッセイなどを掲載する予定です。したがって、少々アカデミックな投稿が多くなるかもしれません。 コメント欄を通じて投稿に対するアドバイスや批判をくださるととてもありがたいです。単なる情報共有でも嬉しいです。 以下は私の簡単なプロフィールになります。 ・国際基督教大学を卒業。現在、早稲田大学大学院修士課程に在籍。来年3月より都内にて就職

    • 「風街オデッセイ」鑑賞記

      昨日の夜から今までずっと、動悸が止まらない...。 中学時代、学校帰りに通いつめたツタヤ。そこで偶々発見したのがはっぴいえんどの1stアルバム、所謂「ゆでめん」だった。おそらく「日本語ロックの金字塔!」とかいうようなPOPが付けられていて、それが興味を惹いたのだろうと思う。 古代ギリシアの彫刻を想起させるような、見事に均整のとれたサウンド。美しくも遊び心に溢れた歌詞。そしてそれが1970年に製作されたという事実。 音楽経験のない僕にも、このバンドの出現が日本の音楽シーン

      • 参照軸としての過去

         ある制度や行為、思想などを道徳的な観点から非難する際に、「古い」「時代遅れ」と評するレトリックが支配的になったのは、いつごろからなのだろうか。  西洋においては伝統的に、過去との接続可能性を示すことこそが、自らの革新的主張の正統性を示す根拠になっていた。たとえば、フランス革命の時点では、封建制度の唾棄を訴える啓蒙主義者の言説の中にさえ、「本来そうであるべき、いつしかの存在した社会」との繋がりを強調するレトリックが一定の地位を占めていた。ルソーの一連の著作は、そうした時代の

        • 椎名さんのこと

           中学生の頃に知った3人の椎名さんが、「椎名」という姓に対する僕の憧れを形成した、という話。    まずは、目下のところ椎名界で最もポピュラーな存在ともいえる椎名林檎さん。  音楽を聴くということに興味を持ち始めた小6のとき、父のCDの棚の中から日本人アーティストを頑張って探して発見したのが、椎名林檎のアルバム、『無罪モラトリアム』と『勝訴ストリップ』だった。林檎さんがこちらを見つめるジャケット写真になんだか不気味なものを感じたのを覚えている。  最初はこの2つのアルバムの凄

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        自分自身について(つまり自己紹介)

          今をときめくトランプ・スタイル

           今年は、「三浦春馬が所属事務所になんとかかんとか」だの、「バイデン不正選挙でなんとかかんとか」だの、とんでもないデマツイートが伸びていくのを目撃した。特に後者に関して、「トランプ票が燃やされた、捨てられた」とか、「バイデン票が不自然に伸びた」だとかいう陰謀論がどんどん出現する様子は、大変興味深かった。  結局トランプさん自身は選挙結果に満足できず、法廷闘争に持ち込んだ。とはいえ司法判断が出たとしても、「司法もグルだった」とは言える(きっと言う)わけで、陰謀論が強化されるの

          今をときめくトランプ・スタイル

          言葉のおもしろさとおもしろい言葉に関する僕のツイート集

          言葉の面白さ編なんで「口が軽い」の対義語は「口が堅い」なの?軽くて堅いものもたくさんあるじゃん。 アレルギーの原因になるもののことを「アレルゲン」と呼ぶのはコトバの奇跡だよね 品川駅は品川区にないのに、北品川駅は品川区にあってしかも品川駅よりも南なのは許せないよね 「早く着きすぎちゃった」。「早すぎ」なのであって「着きすぎ」ではない問題。 「せっかくお風呂にお湯を張ったのになかなか入らないせいでぬるくなってしまう現象」に「湯冷め」ということばを充てていたなら、世界はも

          言葉のおもしろさとおもしろい言葉に関する僕のツイート集

          おじさんへの風当たり一考

           新内閣が「おじいさん内閣」などと批判されている。もちろん女性大臣の少なさなどは由々しき問題だと思うのだけど、それ以上に気になることがある。それは、近年「おじさん」に対する評価が急降下しているように思われる、ということだ。  たしかに「おっさんズラブ」「ナギサさん」ブームはあったが、基本的に「おじさん」という言葉はもはや、「時代遅れの精神の持ち主」「男性的権力を行使する悪しき社会的支配者」「実力を無視した年功序列の非合理主義」といった表象になりつつある。2018年のサッカー

          おじさんへの風当たり一考

          世代の常識

          「シラケつつノリ、ノリつつシラケること、これである。」(浅田彰『構造と力』より) なんだかふざけているみたいで面白い。こうしたいわゆる”ニューアカ”の思想を皆が共通して浴びた世代がいるのだから、もっと面白い。『構造と力』は83年の著作なので、主に58年~65年生まれあたりだろうか。すると2020年の今は、55〜62歳といったところか。 僕は、階級や階層よりもむしろ、世代による思想の違いに関心があるタイプの人間である。 そして、未来に架空の視点をとることによって自らの思想

          世代の常識

          「センセー」

          少し高いパイプ椅子に座る小学2年生の ぷらぷらと揺れる脚が微笑ましかった。 学校での出来事を懸命に伝えてくれる小学生4年生の ことばたちに耳を傾けるのが楽しみだった。 「ちょっと待って!考えるから!」と叫んだ小学生6年生の 真剣な眼差しに心を打たれた。 「先生分かんないです」と自分から言えるようになった中学2年生の 泣きそうな声に何とか応えたかった。 「よく頑張った!」の拍手と紙吹雪に照れ笑いを浮かべる中学3年生が ただ無性に愛おしかった。 テキストを見つ

          「センセー」

          精神分析を勉強しよう

           今日、藤山直樹『連続講義・精神分析』を読了した。本書については、前の投稿にて簡単な読書メモを残しているので、興味がある方はそちらを参照されたい。初学者にとってすごくよい本だった。  さて、12月から2月にかけては、精神分析と啓蒙という2つのテーマを中心に勉強しようと思う。今回の投稿の目的は、テーマの一つである精神分析の勉強に先立って、勉強計画を立てることである。 なぜ精神分析を勉強するのか 今後のテーマである近代批判を勉強するにあたって、精神分析は必ず学ばなければならな

          精神分析を勉強しよう

          読書記録『集中講義・精神分析 上』(藤山直樹)

           読了日:12/9  この本は、精神分析勉強プロジェクトの導入編と位置付けて読んだ。精神分析関連の本を読むのはこれで三冊目だが、フロイト『精神分析入門』は難しかったし、ホーナイ『精神分析とは何か』は内容をあまり覚えていない。したがって、この本を通じて精神分析におけるいくつかの基本的な考え方や用語を学んだ、ということになる。定着のためにもここにまとめておきたい。 用語退行:分析の過程のなかでクライアントが子どもとして立ち現れる部分(82頁) 転移:クライアントのこころのな

          読書記録『集中講義・精神分析 上』(藤山直樹)

          今後の研究テーマについて

          修士論文を書き終えた後に考えたい問題は、「西洋近代をどのように理解し、評価するか」というものである。 生き延びる西洋近代 19世紀後半以降、西洋近代の理性主義、自由主義、進歩主義、個人主義、功利主義、西洋中心主義に対しては様々な角度から批判が投げかけられてきた。特に20世紀、二度の世界大戦を経験した人類は、西洋近代の論理の無力さを実感し、それに対する反省を迫られた。20世紀後半に展開された様々なヴァリエーションの近代批判は、こうした必要性を動機としてなされたものであると言え

          今後の研究テーマについて

          最近読んだ本(2020年11月)

            振り返り―アカデミズムにおけるハウツーについて― この時期は、社会人としてどのように働き、何を目指すべきかを考えるために、ビジネス書を何冊か読んだ。ビジネス書は、章ごとにまとめのページがあったり、問題の階層構造が明確化されていたり、図などのビジュアルに配慮されていたりと、とにかく分かりやすく書かれており、大変勉強になった。  アカデミズムの世界では、木下是雄『理科系の作文技術』・梅棹忠夫『知的生産の技術』・外山滋比古『思考の整理学』などがハウツー本として半ば聖典化され

          最近読んだ本(2020年11月)

          『君の名は』と他者理解

           『君の名は』を初めて観たときに抱いた謎は、「主人公の二人は、どのように恋愛関係に陥ったのか?」というものだった。  この映画のポイントは、三葉と瀧くんが恋愛関係に至るまで、ほとんど邂逅を果たしていない点にある。もちろん一目惚れということはあるし、手紙を交わすという形でのコミュニケーションが思慕を生じさせることもある。実際に三葉と瀧くんは、互いの身体が入れ替わった際には、互いにノートを通じて交流を重ねていた。  しかしながら僕には、彼らの慕情がそうした過程によって醸成され

          『君の名は』と他者理解

          00年代のノリと「パリピ」の誕生

           2006年にリリースされたmihimaruGTの『気分上々』、そして2007年にリリースされた大塚愛の『PEACH』の歌詞のなかに、面白い表現がある。 Hey DJ カマせ yeah yeah yeah 気分上々↑↑の針落とせ 音鳴らせ パーリナイ 飲もう ライ ライ ライ みんなで踊れ! Hip-Pop ピーポー かけてよミラクルNumber(mihimaruGT『気分上々』) 太陽サンサン 盛り上がる今年は 歌いたい 気分ルンルン 飲みたい放題 笑いたい(大塚愛『P

          00年代のノリと「パリピ」の誕生

          新井紀子『AI』シリーズを読んで

           昨日、新井紀子『AIに負けない子どもを育てる』を読んでそれなりに感銘を受けたわけだが、ネットブログなどに挙がっているいくつかの批評の読んでいくうちに、いくつか疑問点が出てきた。以下に、ラフな形ではあるが疑問点のメモを記しておく。 RSTの結果を見ただけで、本当に読解力が下がったといえるのか? RSTの設問は基礎的な論理スキルを問うための文章であるが、筆者は「そもそも人はどのようにして文章や論理を理解するか」という認知プロセスの問題について論じていない。果たしてそうした前提

          新井紀子『AI』シリーズを読んで