京都小旅行(2日目)
朝目覚めるとまだ早朝の5時ころだった。テーブルには「MICHAY」が残っている。それを迎え酒にして何気なくテレビを見ていると、京都の花街の番組をやっていた。私は京都に来る前から花街、特に舞妓さんの世界に興味があって、YouTubeでいろんな動画などを見ていたのだが、ここは京都である。舞妓さんの本場だ。昨夜、酔いに任せて祇園か先斗町をうろついたら出勤途中の舞妓さんに遭遇できたかと思うとちょっと残念だ。
部屋のユニットバスを見てみると、浴室テレビが付いていた。時間は7時半。4チャンネルのMBSでは「サワコの朝」をやっていて、京都の3ツ星料理店「菊乃井」の村田さんが出ていたので、湯船に浸かりながらそれを見る。体を洗うタオルがなかったので頭だけシャンプーで洗ってユニットバスから出た。湯冷ましと喫煙と水分補給のために民泊の近所のセブンイレブンに行ってジャスミン茶と煙草と厚切りベーコンと豚のタンを買って民泊に戻った。室内は禁煙のため、タバコを吸うならこうやって外に出るしかない。
厚切りベーコンと豚のタンを食べながら、ジャスミン茶を飲みながらテレビを見ていると10時前になった。チェックアウトは11時でいいのだが、今日はauの支払額が確定していて、いつも金額が確定したらauショップで先に払っていたので、昨日見つけておいた烏丸御池のauショップへ行くために連れの2人を残して私だけ出発した。烏丸通を南下して、セブンイレブンを過ぎると間もなく京都国際マンガミュージアムが右手に見える。それを通過して交差点を渡るとauショップがあって、私が到着すると同時に開店した。
今月のauの支払いは20071円。電気、ガスともにauでまとめてしまったものの、2万円を超えてしまった。この出費は大きい。7月の電気代が7850円ほどだったので、仕方がないといえば言えるのだが、来月は8月の電気代10850円がかかるので、何かを我慢しなければならない。先月はブックオフオンラインで岡崎京子の漫画10冊と、夜想とWAVEのバックナンバーを買ってしまってもなんとかなったのだが、今月と来月はブックオフオンラインで何も買えない。タバコに関しては510円のマールボロから400円のキャメルボックスに変えた。一日1箱吸うと考えて、1ヶ月3300円の節約。あとは飲酒を控えるということなのだが、これがちゃんと控えられるかが問題だ。業務スーパーの321円の「SIEMPRE」を1ヶ月我慢すると、それだけで1万円の節約になるのだが、最近また飲酒の癖が出てきてしまっているので難しそうだ。
Auショップで支払いを済ませると、昨日の京都文化博物館の別館と、その隣にモダニズム以前の近代建築をリニューアルしたホテルが建設中だったので、その現場を見に行く。ちなみにそのホテルの設計は隈研吾とのこと。最近、建築業界を見ているとこの名前がよく出てくる。木材を多用したり、「和」のデザインを取り入れたり、木材の使用では現在建設が進められている東京の国立競技場が有名だろう。また、現代アートのインスタレーションのようなスターバックスもある。大阪だと、大阪ミナミの新歌舞伎座跡地の「(仮称)ホテルロイヤルクラシック大阪」がまもなく竣工するが、個人的にはあのデザインは好きじゃない。村野藤吾の新歌舞伎座の意匠を踏襲しているらしいのだが、歌舞伎座じゃなくてホテルのデザインに破風屋根のデザインは悪く言えば悪趣味だ。
その他にも京都にはモダニズム以前の近代建築が多く残っている。大阪だとどうしても高層化しないといけない事情もあって、いわゆる腰巻きビルになってしまうが、京都では高層ビルは不可能なので、比較的ちゃんとした形で残っている。京都国際マンガミュージアムも古い学校をリニューアルしたものである。他にも旧校舎をそのまま活かしたホテルの計画も進められている。
ホテルといえば京都の街を歩いていると至る所でホテルや宿泊施設の建設が進められている印象を強く感じた。なにせ年間5000万人の観光客が来る街だ。以前、テレビで京都でホテルを探している外国人観光客がホテルの空室がなく、大阪のホテルを紹介されているニュースを見たことがあるが、最近の統計では、大阪のホテルを拠点に、京都・奈良を日帰りで観光する傾向が高くなっているとのこと。ただ、京都の観光スポットは市内各地に散らばっており、1日で観光して回るには無理がある。なので、京都のホテルも必要になってきているのだろう。
大通りの烏丸通を歩いても味気ないと思い、高倉通りを歩いて錦市場に向かった。四条通りの1本手前に錦市場があった。錦市場は狭い通りの両側に130軒もの店が並び、鮮魚をはじめとした生鮮食品や加工食品、京料理の食材などなんでも揃う京の台所。試食ができる店舗やそのままお店で食べることができる店舗もある。京の漬物が人気だそうだが、外国人(ここでも欧米人の観光客が目立った)はもっぱら食べ歩きや京小物が目当てなようすに感じられる。だんだん暑くなってきたので店から流れ出てきた涼風が気持ちいい。暑さに我慢できないと観光客を装って店内で涼んだ。買い物は興味がないので涼んだあとはどんどん進んでいき、寺町通を超えて新京極の錦天満宮に突き当たり、右折して新京極を通って四条通りに出た。
ここでトイレに行きたくなったので地下の阪急河原町駅の地下通路から高島屋に入ってトイレを借りる。ほとんど二日酔いの状態で迎え酒もしているので、食欲はなく、auショップを出たところにあったローソンでWalletに現金をチャージするついでに買ったジャスミン茶をずっと飲んでいたのでトイレが近くなったのである。助かったことに地下1階のデパ地下に男子トイレが見つかった。
高島屋を出て、河原町駅の休憩スペースで座ってちょっと休憩したあと、木屋町で地上に再び出て、鴨川の河川敷に行ってその時読んでいた「皇女アナスタシアの真実」を数ページ読んだところでYから電話がかかってきた。どうやら四条河原町までの来方がわからないらしい。丸太町から地下鉄四条まで地下鉄に乗るように指示しておいて、私はというとまたトイレに行きたくなったので、マルイに向う。今度は下痢に襲われたのである。アル中にはよくあることなので慌てない。トイレで座っているとまたYからの電話。次は四条烏丸から河原町に来るのに迷っているという。来方を教えてやって待ち合わせを約束する。
連れの2人と合流すると何も食べてなかったので、何か食べようとするのだが、意見が合わない。木屋町のところにすき家があったので、そこへ入ろうというのだが、私は牛丼を食べられる状態ではない。だから隣のドトールに入ってジャーマンドッグとアイスコーヒーにした。2人はドトールにも入ってきそうな雰囲気だったのだが、後から聞くと四条通りを挟んだ向のラーメン屋でつけ麺とラーメンを食べたそうだ。
再度合流して、今日の一番の目的地である清水寺へ向かう。僕ちゃんはバスで行こうと言うのだが、京都のバス事情をご存知ないらしい。観光客と地元客でいっぱいのバスで座って行こうなんてほぼ不可能である。四条大橋で鴨川を渡り、南座を越えるとそこは祇園である。時間は13時半。どんどん気温は上がっていって、はっきり言って暑い。その上、祇園といっても舞妓さん・芸妓さんの出勤の時間ではなく、遭遇する確率は0に等しい。祇園の花見小路や八坂神社への行き帰りの観光客でごった返す四条通から花見小路に入っても観光客、特に外国人観光客の列が出来ていて、ガードマンが交通整理していた。
四条通から建仁寺までの花見小路沿いにはお茶屋や置屋はほとんどない。祇園を売りにしたお店が並んでいて、価格だけ祇園価格である。5000円のお昼のステーキコースはさぞ美味しいのだろう。祇園甲部歌舞練場の隣にWINSがあったのには笑ってしまった。観光客でいっぱいの花見小路で競馬競輪で勝負するんだろうか?
建仁寺の入口を左に曲がって、八坂倶楽部を横目に東大路通りを越えて突き当りまで進むと高台寺やねねの道が近いが、ダイレクトでは行けない。法観寺(八坂の塔)を通り過ぎて坂道を上がっていくのだが、そろそろ体力的にヤバくなってきた。暑さや日差しも厳しい。もう着ているTシャツは汗でびっしょりである。途中、度々座り込んだり、土産物屋で涼んだりしながら産寧坂(三年坂)まで来たあたりで疲労はピークを迎えた。無料休憩所があったので、涼んでタバコを吸っていると震えと頭のしびれがやってきた。熱中症で倒れる前触れである。しかも汗まみれのTシャツは冷房で冷やされて今度は寒気もしてくる。Yの調子もイマイチだ。思い切って清水寺まで一気に行ってしまおうと呼びかけて、途中、有名な七味屋で七味を買ってようやく清水寺の門前にたどり着いた。
3人とも疲労と達成感と金欠でいっぱいだったので、本堂(舞台)が工事中で見られないということを口実に拝観するのはやめておいて、記念の写真だけ撮って一服することにした。私はというとちゃっかり近くの土産物屋でサッポロ黒ラベルをゲットして喉を潤した。朝の迎え酒を別にするとこの日最初のアルコールである。350円したが文句は言わない。ビールが五臓六腑に染み渡る。
休憩が終わるとあとは五条坂を下って京阪清水五条の駅に行くまでである。東山五条の交差点を渡ると国道1号線沿いに歩くのだが、日陰というものが全くなかった。西日が容赦なく突き刺してくる。私とYは扇子で顔を翳すものの、その程度ではこの暑さから逃れられないので、思わず向き合って笑ってしまった。
1号線沿いには何軒もレンタル着物屋があって、清水寺に着物で観光している観光客の多くはここでレンタルするのだろう。もうちょっとで清水五条というところでセブンイレブンがあったので、そこに入ってタバコと「ザ・ブリュー」ロング缶を1本購入する。500mlのロング缶だがすぐに飲み干してしまった。さらにもう1本購入。イートインコーナーで飲みながら3人でこれからどうするか話し合ったのだが、Yは当初、どうしてもアスタルテ書房に行きたがっていたのだが流石に疲れたのだろう。食事して帰ろうということになった。
京阪の清水五条の駅前に100円ローソンがあり、Yはそこで赤ワインを買う。とりあえずラーメンが食べたいと言っていたのだが、ローソンの隣のチキン定食屋でマウンテンチキンを見ると今度はそれが食べたくなったようだ。さて、どうするか話し合っているうちに僕ちゃんは先に1人で帰りたいという。好きにさせておいて私とYはとりあえず飲もうということで、鴨川の遊歩道にある車よけに座って、京都タワーを見ながらワインを飲み始めた。たわいのない会話をしながら飲んでいると雲行きが怪しくなり、ポツポツと雨が降りだした。急いで駅に駆け込んで、残りのワインを京阪の特急の中で飲み合い、天満橋で降りると、Yはどっかで飲んで帰りたいというのだが、財布の中は心もとない。結局、今里のガストに入って100円のグラスワインで乾杯し、唐揚げとコーンバターを食べると、疲れきっていた私は先に帰らせてもらった。マンションに着くと部屋には直行せず、自転車で近所のローソンへ向かい、「MICHAY」を買う。
ようやく部屋まで帰りついてテレビをつけっぱなしにして「MICHAY」を飲んでいたら、またしても酔いつぶれてそのまま眠ってしまった。