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成長

ほんの一年前の今日。
自分は何を考え、何をしていたのだろう。
きっと、好きな人に振られたことや、今日のお昼ご飯に何を食べるかということ、もうすぐ開催される文化祭のことなんかで頭がいっぱいだっただろう。
まさか数カ月後にお父さんが自殺するだなんて夢にも思わなかったはずだ。

それから、自分は良くも悪くも随分変わってしまったように思う。
上京時から住んでいた女子寮を出て、中央線沿いでひとり暮らしを始めた。新しいアルバイトも始めて、ゼミやサークルの活動、資格勉強なんかにも一生懸命取り組んでいるつもりだ。
けれど、失ったものも多かった。何かを感じる心、感情、誰かのことまで思いやる余裕。

大切なものだったはずだ。
強くて優しい人になりたかった。

きっと一番の成長は、お父さんが死んだということを認められたことだと思う。
上京してしまえば、お父さんは今でも実家で生きているように錯覚してしまう。帰省すれば、また「おかえり。」と出迎えてくれるような気がしてしまう。
でも、もうお父さんは生きていないんだ。
「ただいま。」の返事はない。写真の中、ただ静かに微笑んでいるだけ。
会いたい、という思いに嘘はつけないけれども、嘘をつかなくなっただけで十分だと思う。会いたい、と思うことは、わがままじゃないかと思っていたからだ。会いたい、と素直に言えることが、お父さんの死を認められたことになるのかもしれないと思っている。

新しい環境、新しい人。
もう一度私の歩みが始まる。

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