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創業者のいなくなったスタートアップが、なぜ17.8億円を資金調達できたのか?

先日、うちの会社が総額17.8億円の資金調達を発表しました。

BLUEPRINTは、僕を含めた3人の創業メンバーで立ち上げた会社です。ですが、実は僕たちはすでに経営を退いていて、会社は新しい社長に任せています。

つまり、創業者が不在のスタートアップなのにも関わらず、大手のVCさんや事業会社さんが総額17.8億円ものお金を出してくれているんです。

……これだけ聞くと「どういう状況?」となりますよね。笑

この記事では、その裏話となるBLUEPRINTのビジネスモデル資金調達のスキーム経営手法について解説します。

手前味噌で恐縮ですが、かなり革新的な起業のスタイルだと思っています。読んでいただけると嬉しいです!

スタートアップを「量産」する会社

BLUEPRINT社でやっているのは「スタートアップファクトリー」と呼ばれるビジネスモデル。

これは、スタートアップを、まるで工場で大量生産をするかのように次々と立ち上げていき、そのすべてを急成長させ、上場を目指すというものです。

それぞれのスタートアップは、BLUEPRINT社内の新規事業としてはじまります。そこからうまくいく見込みが立ってきたものだけをスピンアウト(子会社化)し、以降は単独での上場を目指していきます。(親会社であるBLUEPRINTは上場しません)

ここでいう「うまくいく」というのは、「時価総額1000億規模での上場が狙える」という意味です。

BLUEPRINTがスタートアップを立ち上げるのは、投資のためですから。「VC(Venture Capital)が、すでにある会社に出資するのではなく、投資先となるスタートアップを新しく立ち上げている」ようなものだと考えると、わかりやすいでしょうか。

こう聞くと「これ、けっこう難しいんじゃないか?」と、疑問に思いますよね。

おっしゃるとおりで、とても難しいです!笑

本来なら、一社スタートアップができただけでも大成功です。それを繰り返しやるのですから、もちろん難しい。しかし、起業のプロセスを丁寧に解きほぐしていけば「絶対にムリ」というわけでもないんです。

徹底的な「型化」と「分業」でゴリ押す

ここで重要になるのが、起業の「型化」「分業」です。これらをどこまで突き詰められるかが勝負です。本当に「工場」みたいですよね。

起業家は会社を立ち上げると、同時にたくさんの悩みを抱えます。

そもそも事業内容はこれでいいのか? どんなプロダクトならいくらで売れるのか? 事業計画書や人事制度はどうつくればいいのか? などなど。

ほとんどの起業家は、これらの問題に「ぶっつけ本番」で対処しなければなりません。しかも、ちょっとでもミスや遅れがあれば、会社が潰れてしまうこともあります。「知識や経験がなかった」たったそれだけの理由で。

これは、あまりにももったいない。

それなら、こうしたお悩みの解決策のすべてを「型化」してしまい、さらにそれを起業家に教えたり、環境を整えたりすることを「分業」してやってしまえば、もっと多くの起業家が大成功を掴むことができるのではないか!?

これが、僕たちの発想です。

BLUEPRINT社内には、セールス、プロダクト、ファイナンスなどの各分野で実績を残してきた、選りすぐりのプロフェッショナルがいます。彼らと実践の中で型をつくり込み、それに沿った分業体制でスタートアップを支援する。

ここまでやって、はじめてこの難題を跳ね返すことができるんです。

投資先の株式を売却して資金を調達

これができるようになると、資金調達の幅も広がります。

実は、このたびの資金調達のスキームは、ほとんどのスタートアップが使っている「第三者増資割当(株式を新しく発行して、投資家に売却することで資金を得る調達手法)」ではありません。

僕たちは、ゼロから立ち上げたスタートアップで高い時価総額を実現させ、それらの会社の株式をVCや事業会社に売却することで資金調達をしました。

一社は保有していた株式のすべてを売却。もう一社は、一部だけ売却しています。そのため、親会社のBLUEPRINTは、現在も100%の独立資本を維持しています。

この資金調達が実現したのは、僕らの立ち上げたスタートアップが、投資家から一定のご評価をいただけたということ。ひいては、スタートアップファクトリーというビジネスモデルが一定の実績を上げられたことの証明になったと捉えています。

僕らが立ち上げたスタートアップは、この2社を含めて4社になりました。資金調達を実施したことで、投資先の支援環境も整ってきました。いまなら、短期的な売却をせずに、上場まで一気通貫で支援することもできます。

スタートアップをどんどん立ち上げて、投資家から高い評価を受け、売却によって資金を得て、それを使ってさらに面白いスタートアップを立ち上げる。

そんな僕らにしかできない好循環を、これからガンガンまわしていきます!

創業者不在でも高く評価される条件

ただ、この好循環をまわし続けるためには、創業者である僕らが、ひとつの会社につきっきりにならないようにしなければなりません。

そのため、すべての会社でスピーディーな「権限移譲」が必要になります。

よく「スタートアップは創業者が最後まで情熱を注がないと、うまくいかないんじゃないか?」と言われることがあります。

たしかに、日本のスタートアップでは、上場するまで、あるいは上場をしたあとも何十年も、創業者が社長を務めることがほとんどです。

しかし、僕は言いたい。会社は「情熱」ではなく「仕組み」で伸びるのだと

「売上や利益を伸ばし続けられる」仕組みや、「メンバーが一生懸命に働き続けられる」仕組み、あるいは「新しい収益源を生み出せる」仕組み。それがあれば、たとえ創業者ではなくても、会社を経営していけるはず。

むしろ、二代目社長の方が会社を伸ばせるということもあります。

創業者は、僕らのように「0 → 1」だけに特化した人が多いです。しかし、会社が「1 → 10」や「10 → 100」のフェーズを迎えたなら、そこが得意な人に交代したほうがうまくいくんですよね。

実際につくった「売れる仕組み」

では、その「仕組み」とは、具体的にどういうものなのか。

僕らがはじめて立ち上げた、株式会社STANDARDという会社の例を紹介します。

この会社では、「DX人材育成」のサービスを起点として、高単価なコンサルティングや受託開発の案件へとなめらかにつなげていく仕組みができています。

会社を立ち上げた当時、DX系のスタートアップの多くは「大企業からの高単価案件」を勝ち取ろうと、難易度もリスクも高い営業活動でしのぎを削っていました。

だからこそ僕らはあえて、そこでの競争を辞めました。

高単価な案件の前に、比較的安価で売りやすい「オンラインのDX人材育成サービス」を噛ませるという戦略をとったんです。

結果的には、これが大正解でした。

まず、新規開拓営業のスピードが格段に上がりました。手軽にできるオンライン教育ツールなら、売りやすさがぜんぜん違いますから。

さらに、教育事業をさせていただくと、いつの間にかまるで「先生」のような立ち位置で、お客さんのDX戦略の立案に携わることができていたんです。

オンライン講座を受けていただき、一緒にアイデア出しやワークショップをすれば、お客さんもだんだんDXのイメージが掴めてきます。「これがやりたい」というアイデアが見つかれば、もうどんどん前のめりになっていくんです。

そうすることで、ムリな売り込みをしなくても、自然とその後の開発までご一緒できます。

しかもお客さんと一体になって、より成功率の高いプロジェクトにすることができる。もはや、お金をもらいながら営業ができている状態です。当然、会社のキャッシュフローも安定します。

STANDARDでは、この人材育成を起点とした「売れる仕組み」を徹底的に磨き込んできました。そのため、権限移譲をしてから約1年が経ったいまでも、売上は前年比で2倍近く伸びていますし、クライアントも650社を超えています

好待遇で、とびきり優秀な経営陣を集める

また、仕組みだけではなく、それをまわしてくれる経営陣がとびきり優秀であることも重要です。

僕らが候補者としてお声がけしているのは、大企業で実績を上げている30歳前後の若手の方々です。

これまでの具体例で言えば、キーエンスで事業部の売上最高記録を持っている人、リクルートでプロダクトオーナーをやっていた人、日興証券で部の4割の主幹事証券を獲得している人など。

それだけ優秀な彼らでも、元々いた大企業では、経営者や事業責任者になる機会は与えてもらえなかったそうです。

大企業のスピード感に悶々としたまま、30歳の節目を迎えて「このままでいいのか?」と危機感を抱いた……。いまBLUEPRINTに集まっているのは、そんな人ばかりです。

僕らは、優秀な人たちに、ちゃんと稼いでもらうことを大切にしています。

生活水準を落とさなくても済むような固定給も出せますし(役員報酬は1200万円から1500万円を保証)、会社が軌道に乗ったフェーズで入社しても普通は中々もらえない比率で、株式やSOを支給します(目標を達成していれば、2.0%から5.0%を保証)

(詳しくは採用サイトをぜひ!)

スタートアップへ転職しようとすると、報酬面がネックになる人は多いです。

ある程度まで成長した会社だと、固定給は高いけど、株やSOは多くもらえない。役職も部長くらいで止まってしまう。逆に、まだ創業したばかりの会社だと、経営陣になって株やSOは多くもらえますが、固定給はガクッと下がってしまう。

このジレンマを解消できているのも、僕たちの強みのひとつです。

大企業で活躍している若くて優秀な人が「経営者」になり、より大きく稼げる環境。まったく新しいキャリアチェンジの選択肢を、僕らは用意しています。

これからは、投資先のスタートアップでもっと大きな実績を上げて、もっとたくさんの優秀な人が、大企業から飛び込んでくるようにしたい。そんな、一種の社会現象を起こしていきたいんです。

創業者は「非連続な進化」に集中する

さいごに、会社を離れたあと、僕たち創業者はなにをやっているのかをお伝えします。

僕らは、これまで挑戦できていなかった新しい領域での起業と、その型化を進めています。

これまではVertical SaaS(業界特化型のSaaS)をやっていましたが、これからはディープテック(高度な研究開発が必要な事業領域)にも挑戦していきます。

たとえば、創薬や新素材、食料品や、宇宙産業など。これらは、上手くいったときの社会的なインパクトは大きいのですが、その代わりに難易度が高い。お金も時間もかかるし、研究開発で失敗するリスクもある。SaaSより各段に難しいです。

僕らは、このような非連続的なステップアップが求められる分野に取り組んでいきます。

新しいものに次々に挑戦し、みんなとやれる仕事を、もっとおもしろくしていく。みんなでできることの次元を、ひとつずつ押し上げていく。それが僕らの役割です。

Vertical SaaSでは「ひとつの産業」を変えるプロダクトをつくっています。今後はそこにとどまらず「世界」を変えていく最新技術さえも生み出していきたいのです。

いまSaaSの領域でできているような「スタートアップを次々に生み出せる仕組み」が、ディープテック領域でも実現できたら……。

すごくおもしろそうだと思いませんか?

ディープテックのスタートアップが次々に立ち上がっていく「ディープテック版のシリコンバレー」を創ることもできそう。シリコンバレーや深圳のように、世界中の若くて優秀な人材を一ヶ所に集めるんです。

人さえ集めてしまえば、あとはこっちのもの。投資家からお金を引っ張ってきて、法規制を緩和しやすいように政治的なあれこれを整えてしまう。そうすれば、革新的なイノベーションが次々に起こる「実験都市」のできあがりです。人類の歴史は、ここから100倍速で動き出すことでしょう。

正直、いまは頭に浮かぶ青写真を、まだ欠片ほども実現できていません。

こんなスピード感じゃまだまだ足りない。もっともっと早く次へ進んで、人類の退屈を吹き飛ばしていきたいです!

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鶴岡 友也/BLUEPRINT Holdings CTO
最後まで読んで頂いて、ありがとうございます!(^^) Twitterでも事業開発のコツをつぶやいてます。フォローしていただけるとうれしいです!https://twitter.com/tsuru___chan

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