「いきなり売上5000万円」のスタートアップをバンバン立ち上げる僕らのやり方
僕らの会社は「スタートアップを量産する会社」だ。
かつてヘンリーフォードは「T型フォード」によって自動車を大量生産できるようにしたが、僕らはそれを「スタートアップ」でやりたい。
僕らはこの1年ちょっとで10以上の事業を生みだし、いくつかを法人化した。今年に入って立ち上げた建材の会社は初月からいきなり6000万円ほどの売上が見えていた。
スタートアップを次々に生み出す「スタートアップスタジオ」というモデルは、今のような先の見えない時代に強い。
事業をバンバン立ち上げて、PDCAを回しまくって、うまくいったものだけを法人化できるからだ。このやり方はアメリカなんかではわりとポピュラーだったりするのだが、日本だとまだまだ知られていない。
そこで今回は、どうやって僕らがスタートアップを生み出しているのか? 「スタートアップスタジオ」の強みについてまとめてみたい。
スタートアップスタジオは「映画スタジオ」に似ている
スタートアップスタジオは「映画スタジオ」に似ている。
映画スタジオには、ストーリーの原案が持ち込まれると、監督、脚本家、演出家、編集、配給、プロモーションなどの専門家がバーッと集まってきて、映画が作られる。
同じように、スタートアップスタジオでも「事業のタネ」が持ち込まれると、それを各分野のプロフェッショナルたちがどんどん仕上げていくというのが基本のシステムだ。
ふつうの人が事業を立ち上げるとき、最初から優秀なチームを揃えられるかというと、けっこう難しいだろう。一人でぜんぶやると時間も労力もかかるし、たいしてアイデア検証もできないまま突っ走ることになる。
当然、成功確率も低くなる。
それが、僕らのスタジオなら「最初から最強」状態で始められる。
事業開発(BizDev)、プロダクトマネジメント(PdM)、セールス、エンジニア、ファイナンスなど、各分野のプロフェッショナルが、事業作りを「分業」する体制が整っているからだ。
とにかく「爆速」で事業作りが進められる。そこがスタートアップスタジオの強みだ。
法人化の「前」にぜんぶやっておく
どれくらい爆速なのか?
参考までに、僕らの「事業立ち上げロードマップ」を載せておく。
このマップで特徴的なのは「法人設立の時点で、5社の契約を取り終えている」という点。わかりやすくと言うと、創業した初月から「5000万〜1億円の売上」が見えている、というイメージだ。
こんな状態で1期目を迎えられるスタートアップは、なかなかないと思う。
一般的なスタートアップで言えば、ようやく2期目が終わって「そろそろ走るべき方向が見えてきたから、3期目から頑張っていこうか……」と言っているくらいのフェーズだろう。
僕らが目指すのは「アイデアが生まれてから6カ月で5000万の売上が見えている」という状態だ。
ふつうは、会社を立ち上げた「後」にビジネスモデルを構想し、プロダクトを開発し、セールスを始めるケースがほとんどだ。
僕らはそれらを法人化する「前」の半年間ですべて終わらせてしまう。起業後に「何のビジネスやろうか?」と言っている会社と比べると、立ち上げ時点で「2年分」くらいリードすることができる。
当然ながら、事業やプロダクトが決まっていて、しかもそれがすでに売れている状態で会社をスタートできれば、失敗の確率は圧倒的に低くなる。
世の中では、スタートアップがうまくいくかどうかは「3/1000」の確率だと言われている。一方、スタートアップスタジオなら、それを「500/1000」、つまり5割くらいにできると考えている。
事業づくりには「5つの壁」がある
具体的にどう進めていくかを解説していく。
まず「事業づくり」からだ。
僕は事業のアイデアを検証するときに「乗り越えるべき『5つの壁』がある」と説明している。
いきなりぶつかるのが、
①どんな顧客がどんな課題を抱えているか
という課題発見の壁だ。
課題には「見せかけの課題」と「ホンモノの課題」の2つがある。ホンモノの課題を見つけられるかどうかで、その後のすべてが決まってしまう。
怖いことに、もし「見せかけの課題」をホンモノだと勘違いして進めてしまうと、どれだけ頑張ってもたいてい失敗する。「お客さんがお金を出してくれませんでしたー」となって終わりだ。
ちょっと前に「ESG(環境・社会・カバナンス)」の話題がガーッと伸びてきていたとき、僕らの会社でも「ESG関連の事業をやれないか」という話が持ち上がったことがある。
そこで生まれたのが「ESGスコアリング」という事業アイデアだった。「企業がどれくらいESGに取り組めているか」を数値化するというサービスだ。
パッと聞いた感じ、いかにも「ありそう」なビジネスじゃないだろうか。でも、こういうときはだいたいイタい目を見る。
「これに困ってるお客さんいそうじゃない?」というノリではやっぱりダメなのだ。そもそも「誰のどんな課題を解決するのか?」が見えていなければ「あとづけ」で事業のロジックをでっち上げることになる。
実際、このESGスコアの事業では、顧客向けのアンケートをつくったり、テスト版のセールスを始めていたりもしたが、いまいち刺さらなかった。
たしかに世の中の企業には「なんとなくESGをやりたそうな雰囲気」があるかもしれない。でも「そもそもESGが何なのか」すらも、みんなよくわかっていないし、とりあえず「やっているふりができればいいかなー」というレベルでしかなかったりする。
このESGの事業の発端は、そもそも「ホンモノの課題」ではなく「でっち上げの課題」にすぎなかった。「見せかけの課題」に足を突っ込んだまま事業をつくると、お金を払ってまで買ってもらうところまではいけない。
結局、ESGの事業は法人化せず、途中で撤退した。
スタートアップスタジオでなければ「とりあえず見切り発車で会社をつくって、死ぬほど忙しい思いをしながら、コストをかけて開発したのに、ぜんぜん売れなかった…」という最悪なパターンになっていたかもしれない。
少なくとも5社にヒアリング
どこに「ホンモノの課題」が眠っているのか?
それを検証するため、僕らは最初の1カ月目に少なくとも5社にヒアリングするようにしている。
アイデアが出てきたらすぐに、ターゲットになりそうな企業のところにヒアリングに行く。それをもとに事業アイデアを改善して、また別の会社を訪問する。1カ月目にとりあえずこれを5回転させる。
アイデアは、最初から完璧なものは出てこない。だからこそ、どれだけ検証を繰り返して改善できるかが大切になる。
こうやって事業開発の段階で自らヒアリングをやって、どんな困りごとが顧客の脳内を占めているのかをつかんでおくと、いざ本格的に営業をかけていくときにも都合がいい。
ここでつかんだ情報は、その後「セールスの武器」にもなる。
「作ってから売る」ではなく「売れてから作る」
5社のヒアリングをやって、まあまあ良さそうなアイデアが見えてきたら、2カ月目からは「セールス」を始めてしまう。
事業開発(BizDev)が作った資料をもとに、法人営業のプロが商談を進めていく。僕らはここで最低20社のアポを取ることを目安にしている。
セールスに手応えがあり、事業がある程度いけそうだったら、プロダクトの「モックアップ」を作る。モックアップとは、最終的な完成形をイメージできるようにした「見本デザイン」のこと。
これはトライアル導入をしてくれるお客さんを探すためだ。
1社からトライアルの内諾をもらえたら、ようやくここで「開発」に着手する。図中のMVP(Minimum Viable Product)とは「お金を出して買ってもらえるだけの必要最低限の機能を備えたプロダクト」のことだ。
これで少なくとも1社はスタートできるようになる。
逆に、1社から内諾が出るまでは、絶対に開発をスタートしない。これは僕らがかなりこだわっているポイントだ。
僕自身もともとエンジニアだし、ものを作るのが好きなので、いいアイデアを思いついたら、すぐに開発したくなる気持ちはよくわかる。だが、そこでぐっとこらえる。この段階ではあえて我慢して、ギリギリまで開発の手を動かさない。
逆に、この段階でどこからも内諾がとれないようなら、そのビジネスには勝算がないということ。こういうときは、開発せずにサクッと撤退を決める。
エンジニアにとっていちばん悲惨なのは、リソースをかけてがんばってプロダクトをつくったのに「誰も買いませんでした」「誰も使いませんでした」というパターンだ。
だから、やっぱり不確実性がある程度下がって「いけそう!」となった段階で、開発リソースを投下するほうが、いちばん無駄がない。また、そのほうがトータルで楽しくなる。
ここの「順序」は間違えないほうがいいと思っている。
法人化の条件は「5社の成約」
MVPの開発をスタートしたら、それと並行してセールスを行い、あと4社に売っていく。そして、計5社に本格的な導入を決めてもらえたら、その段階でようやく「法人化」に踏み切る。
僕らはプロダクトが完成しきる前に、まずは「5社」から内諾を得るところを目指す。
「1社でも十分じゃないか」と思うかもしれないが、1〜2社くらいだと、けっこうラッキーパンチで売れてしまったりすることがあるので、ちょっと危ない。
さきほどのESGの事業なんかも、じつは1社とはふつうに成約できていた。しかし、そのお客さんがたまたま特殊だっただけで、そのあとほかの企業からはぜんぜん引きがなかった。
5社くらいに刺さっていれば、一定の市場規模があるとわかるし、再現性もそれなりに担保されていると考えられるだろう。
ここまでのすべてをやりきったうえで法人化すれば「創業前から5000万〜1億円くらいの売上が見えているビジネス」はちゃんとつくれる。
そして、このブーストがあることで、ふつうのスタートアップには目指せないような「目線の高い目標」を掲げることができる。ちなみに僕らのモデルでは「1期目から売上3億円」を事業計画上の基準にしている。
「圧倒的打席数」で勝つ
いまは「実験」がしやすい時代だ。
とくにSaaSのようなビジネスであれば、どんどん試してダメならすぐやめる、ということができる。
アイデア検証のスピードと回転数に特化し、手堅くビジネスを立ち上げられる組織体制は、僕らのスタートアップスタジオのユニークな部分だと思う。
「起業家」に負ける要素があるとすれば「熱量」かもしれない。スタートアップスタジオでは、どうしても1案件に対する熱量は限られるからだ。
ただこちらには初期段階から優秀なメンバーが揃っているという強みがある。そう考えると「組織としてのパワー」はトントンくらいにできる自信がある。
なによりスタートアップスタジオには「圧倒的な打席数」がある。だからトータルでの成功確率は、一般的な起業よりも高くなるはずだ。
新しいビジネスを立ち上げるために2〜3年準備してきたのに、いざやってみたら全然ハマらない、といった話はよく聞く。長い時間をかけてすごく作り込んだ事業がぜんぜんダメで、片手間につくったものが意外とはねたりする。それが起業のリアルだ。
僕自身は学生起業だったから、テキトーにウェーイとやっていてもうまくいった。リスクというものもよくわかっていなかった。でも、こういうリスクをふつうの人がとれるかと言ったら、なかなか難しい。
スタートアップスタジオは「リスクヘッジをしながら新しい事業を生み出していく」には最適なシステムだと思う。
……起業を考えている人、アイデアがある人。ぜひ、僕らと何か一緒にやってみませんか?
大企業で退屈な仕事をしている人へ
僕からすれば、いまの日本は優秀な人材が「保守的な分野」に偏っているように見える。
「保守的な分野」というのは、すでに確固たるビジネスモデルが出来上がっているような分野。強固な業界のシステムが張り巡らされているような分野。新しいことをしたいと思っても動けないような分野のことだ。
僕はすごく優秀なのに保守的な大企業で退屈な仕事をしている人に呼びかけたい。
保守的で不確実性のないことばかりをやっている人生は楽しいだろうか?
ハッピーならハッピーでいいのだが、もし退屈していて「このままでいいのだろうか」と思っていたとしたら耳を傾けてほしい。
これから人類は、どんどん「不確実性の高いフェーズ」にシフトしていく。そんななかで、いつ侵食されるかわからない保守的な世界に留まるのではなく、どうなるかわからない不確実な世界線を「遊んでいく」ような感覚で生きてみたいとは思わないだろうか?
僕らがやっている「ゼロイチ」フェーズは本当に楽しい。
予測がつかないハイリスクな世界に飛び込んでいって、不確実性をグッと引き下げながら現実に落とし込んでいく仕事だ。この「非連続な変化」を起こす瞬間が僕自身、いちばんエキサイティングで楽しいのだ。「とんでもなくムズいゲーム」をクリアしたときの快感を味わえる。
もちろん最初からフルコミットでなく、「副業ベース」でもいい。むしろ、特定の業界に詳しい副業の人は大歓迎だ。
僕ら自身、特定の業界に詳しいわけではない。プロダクトとか事業を作るプロではあるものの、特定の業界についてはほとんど知らない。事業のタネとか課題は、基本的にその業界に詳しい人からしか出てこない。
だから副業での参画はすごくありがたい。
もし「これいけるんじゃないか?」といった事業アイデアがある人、あるいは「これはいますぐ解決しないとやばい!」といった業界の課題が見えている人、とにかく現状に退屈している人は、まず僕らに声をかけてほしい。
「諸君、狂いたまえ」
なぜ、僕らがスタートアップスタジオの会社を作ったのか?
それは「みんなが遊ぶように生きる世界を実現したい」と思ったからだ。
みんなが遊ぶように生きるためには、目の前の現実に縛られることなく「あるべき姿=青写真」をまず描くことが必要だ。
だから、会社の名前は「BLUEPRINT(青写真)」とした。
究極的に言えば、僕らは「スタートアップスタジオ」だけをやりたいだけではない。「産業」といういちばん身近なレベルで、青写真を描き、変革を生み出していくうえでは、これがベストだと考えたにすぎない。
つまり、スタートアップスタジオは世界を変える「手段」というわけだ。
ここからちょっと話が壮大になるので引かないでほしいのだが、僕はさらに先も考えている。
ゆくゆくはビジネスの領域だけでなく、国家や人類、さらには地球、宇宙といったレイヤーでも、同じような変革を起こしていきたいのだ。
たとえば社会システムが現状のままでいいのかについては、すでに多くの人が疑問を投げかけている。
民主主義とか資本主義といった政治・経済のOSは、もはやWindows XPのように時代遅れになっているかもしれない。「国家」という概念も、いまの時代には合わなくなっているかもしれない。
いずれにせよ、次の30年先とか50年先を考えたとき、新しい政治・経済システムの「青写真」が必要になるのは間違いないだろう。
また、こうして社会がアップデートされていけば、次には「人類(ホモ・サピエンス)」をどう進化させるのかが問題になる。
ビジネスを変革するうえでも、いい社会や世界を作っていくうえでも、そこには「こうあるべきだ」という強固な信念や思想が欠かせない。いま世の中にいちばん不足しているものは、そうした「理想像=青写真」だと僕は思っている。
吉田松陰はかつて「諸君、狂いたまえ」と言った。
この場合の「狂い」とは「目の前の現実にとらわれず、理想を追い求めること」だと僕は解釈している。狂気にとりつかれなければ、何かを成し遂げることはできない。
現実や常識といったものに縛られていてはいけない。
そこに縛られることは「奴隷状態」を意味する。
僕らは奴隷状態から脱し、本当に求めているものに向き合っていなくてはいけない。目指すべき理想に「狂って」いなくてはいけない。
だからこそ僕は「BLUEPRINT」を立ち上げた。
この会社を一人ひとりが自分の理想に向き合い、それを仲間たちと共に磨き上げていくような場所にしていきたいと思っている。
BLUEPRINTとは?
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