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参謀長、室長としての最後の仕事完全版 PM × PdM × MBA | 金輝俊、Hwi Jun KIM

参謀長、室長としての最後の仕事完全版 PM × PdM × MBA | 金輝俊、Hwi Jun KIM

目次

  • イントロダクション

  • 本論

  • 会社の危機とギリギリの所での増資

  • 事業計画と執行役員 経営企画部 部長との1 on 1

  • 会社名変更と減資。そして、室長のexit戦略

  • VC、社外取締役とガバナンス

  • 2016年末の中期経営計画の一部とシナリオの分岐

  • 結言

  • 著者略歴

イントロダクション

外資ITのProject Manager(PM)の仕事は四方八方からプレッシャーがかかってきて、しかも毎日朝9:30から東京オフィス、クライアント、中国の開発センターとの3拠点ボイスカンファレンスがある。コロナ前の話で、まだリモートワークは許容されない時の話である。プロジェクトメンバーは10数人。開発を担当する中国との時差は1時間。時差は少ないが、ボディブローのように微妙に効く。ワークロードが凄すぎて、ちょっと疲れた。もう、ゆるく働きたいからシンガポールかイギリスでも行っちゃおうかな。British Upper Master、日英バイリンガル、ITでイギリスの労働許可証は多分、取れるし。昔、一度調べた時は多分OKだったし。

えっ、何?業務委託で週3日、Webのサーバーサイドエンジニアで常駐なんてありなの?よし、個人事業主に戻ろう!

ファッションテックベンチャーに週3勤務のお気楽プログラマとして参画。相変わらずのLAMPスタックでPはPHP。バージョン管理は鉄板のgit。報酬も結構あるし、これいいじゃん。会社サイズは確か10人前後だったと思う。何とかリーダーシップで引っ張れる限界。参画初日に会計データをある程度、執行役員CFOから教えてもらって、Google Analyticsのアカウントを2日目からこちらから言って、貰った。開発とデータ分析両方できるし、いいじゃん、これ。

あれ、外部スタッフなのに、本番サーバーのアクセス権限、貰えるの?まあいいや。公開鍵、誰に渡せばいいの?あ、もう一人のサーバーサイド?よく考えたら、この人も外部スタッフの常駐だし。ウケるな。まあ、いいや。

開発ミーティングに参加。メンバーはサーバーサイド、フロントエンドエンジニア、デザイナー、社長など。私以外の外部スタッフもいて、結構な人数。10人前後だったかな。あれ、企画いないの?実際の開発フェーズに移ると、企画書無しで、エンジニアとデザイナーで話し合って、バンバン物事が進むし、興味深いね。

全体会議に参加。各部門、各人で何となく進んでいく。あれ、もしかして、他の部門の人、開発が何やってるのか理解してなくない?どうしようかな。よし、部門のサマリーをここに書いて。全体会議でサマリーを部門の最初の発表者として、口頭で共有。これだけじゃダメかな。ロードマップも作ろう。これも、Google Driveでシェアしてと。リンクをYammerに貼り付けて、と。口頭でもシェアしようかな。PMやる気なかったのに、何だか、ちょっとPMっぽくなってきた。まあいいや。

週3勤務のため、平日も休みがある。平日、会社のYammerをチェックしていたら、オウンドメディアが落ちているっぽい事が分かった。報告者はインターンの学生。二人でワーワーやって、サーバーを増強すればいいじゃん、という結論に落ち着いた。AWSだし、余裕でスケールアウトできるじゃん、と思ったけど、流石に外部スタッフの立場じゃAWSのアクセス権限はもらえない。しょうがないので、翌日、正社員のフロントエンジニアにAWSのコンソールでWebサーバーの数を増やしてもらった。

あ、システム開発部長候補入るんですか?それはよかった。最初はリーダーなんだ。リーダーよろしくお願いします。このロードマップと各種資料、引き継ぎ資料です。よろしくお願いします。よし、これで、開発とデータ分析に集中できる。

3ヶ月が流れた。その間、疲れが取れたから、週5に戻した。すぐに承認が出て、翌月から、週5日の常駐。ついでに、12時からコアタイムが始まる事実上のフレックスになった。

中途で部長が入り、部長昇格の人も出て、組織図が改められ、人数が増えた。利益管理の手法が軽い筆者の指摘で変わった。だんだん組織立ってきた。15人くらいだったかな?リーダーシップだけでは引っ張れず、マネージャーが必要な時期。

えっ、部長面談、やるの?俺、外部スタッフなんだけど。まあ、いいや。部長、何か改善ポイントはありますか?えっ、そのまま、突き進んで欲しい?それはありがとうございます。えっ、正社員になって欲しい?役員の総意でもある?ちょっと考えさせて下さい。

結局、正社員の話は一度、丁重に断った。やはり、週3日だけ働くとか半年働いて、半年休む、とかのスタイルを維持したかったから。そして、数週間。考え直して、やはり、正社員を選択する。まあ、本気出してもいいかな、と思ったから。

年棒はさらに釣り上げようかと一瞬、思ったが、報酬が同額でも、社会保険の会社負担分もあるし、バーンレートを上げたくないので、今までとあまり変わらずにした。こちらの要求は通った。内定通知書をすぐに貰った。その後、雇用契約書にサインした。

この会社、何かおかしいな。システム開発部長との一致した見解、COO不足。役員が若すぎるのかな。システム部長がCOOっぽくなるのかな?自分の仕事をしよう。

あれ、そうでもないのかな。システム部長はCOOの方向性にはいかないのか。なんか、部長は何人かいるけど、システム部長以外に自分しか管理できない気がしてきた。PMは疲れる。もうやらない、と思ってたけど、やっぱ、会社のためにやろうかな。外資ITのPM時代、一勝一分だったけど、何が上手く行って、何がダメだったか、ちょっと考えてみた。二個目のプロジェクトは組織設計を微妙にミスった。それで歯車が狂ったのかな。よし、今度はできるかも。やってみようかな。

それからしばらくして、社長から何をやってもいいと言われた。筆者は実はProduct Manager(PdM)もやった事がある。よし、PdM制を導入しよう。PdMとPMの混合体を想定して、組織構築のための資料を作成。役員承認が出て、グロースハックチームが組成された。最初はチームで筆者はリーダー。部下は最初、1人ついた。私のサポート役で、集計や簡単な分析係。チームメンバーは地方国立の機械系修士。筆者は筑波大学 機械システム系学士、Coventry University大学院 制御工学M.Phil。グロースハックチームは地方国立で固めた。

最初の役員とのミーティングでチームは室と同等と言われた。リーダー入りはこの会社の通例みたいだ。

グロースハックチーム リーダーはPMとPdMの掛け合わせとし、MBA性を取り入れる。PdMとしてはプロダクトロードマップを作り、複数の執行役員相手に横串を刺した経験。PMとしては外資ITで手に入れた、諸々の可視化と分析のテクニック、例えば、リスク分析やカラーチャートのテクニックを導入した。

その後、チームは室に格上げされ、グロースハック室 室長 兼 システム開発部 スペシャリスト 兼 マーケティング部 スペシャリストに。室員ももう一人増えた。地方国立 経済学学士。相変わらず、グロースハックは地方国立で固まっている。多部門編成になり、全社員は30人くらいに膨れ上がっていた。部門は、システム、マーケティング、生産、生産傘下に商品企画、店舗のライン4部門と経営企画部とグロースハック室の2スタッフ部門。そういう状況下で室長として、執行役員 経営企画部長と共同で参謀長として振る舞った。

その後、会社はどうなったのか?以下に記述したいと思う。

本論

会社の危機とギリギリの所での増資

グロースハックチーム リーダー、後に、グロースハック室 室長、つまり参謀長として、どのように会社を回したのであろうか?約6部門ある組織を分析と戦術、リスク管理を軸に横串を指した。この役割は先述のようにプロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャー、両方の要素を取り入れている。指揮官も不足していると思ったので、室長としては異例だが、徐々に現場の最高指揮官に近くなって行き、事実上の参謀長 兼 現場の最高指揮官に近くなった。多少、室長 兼 COOに近かったと思う。実際の部門毎のデイリーのオペレーションは各部長が取った。

グロースハックチーム リーダーになった当時は会社はアーリーステージだったが、2017年1月ごろにミドルステージに到達できたと思っている。2017年1月にかけて、会社は億単位の資金調達を成功させた。

資金調達はスムーズに行ったのであろうか?2016年4月頃に2億円の株式による資金調達が行われた。当時のメンバー数とPLから行って、妥当だと思っていた。夏に不意打ちを食らった。室長会議で執行役員から残キャッシュを知らされる。ヤバい。少なすぎる。いつの間にかメンバー数が増え、バーンレートが上がっていた。PL上の計画通り行ってない。自分自身、バカだと思った。これまで、何回かベンチャー経験があるのに、初歩的なミスを犯した。

一瞬で、何がどうなるのか、直感的に感じ取った。いつ、資金ショートになるのか、計算。ここから、大回転し出す。かつての当時から約10年前のC2cubeのように資金ショート、つまり、残キャッシュがゼロになって、給与支払い遅延を引き起こし、メンバーを不幸にし、会社が紛糾で雰囲気最悪の状況にしてはダメだ。いくら、C2cubeが3ヶ月後に2億円の増資を達成したとしてもね。ギリギリの所ででもいい、緊急増資でもなんでも仕掛けてみせる。そう思った。

その後、ぶっ続けで考え続け、いつもより増して、ますます、仮説立案、集計、分析、検証のサイクルへ。最後、夜中の5時まで自宅ベッドで考え続け、カチリとはまり、常に家に持ち帰っている会社のMacBook Proを立ち上げ、Google SlideをGoogle SpreadSheetと共に一気に書き出す。マーケティング戦術である。これまで散々、会社組織、サービス、ユーザーを解析にかけてきた。ビジネスの全貌が見えた。1時間ほどで終了し、コンビニへ。ご飯を買い、食べ、シャワーを浴び、寝る。当日14時に出社。資料をSlackで共有。

残業代申請?プロフェッショナルにはそんなものは関係ないね。スペシャリストとしては専門職裁量労働制だし、室長としては管理監督責任者にあたる。時間はあまり関係ない。それを抜きにしても、そんなもの、どうでもいい。ベンチャーにおいては成功が全て。

そして、しばらくして、諸々の増資が決まった。会社のショートは回避された。

室長としての第三者割当増資への貢献度はだいたいにおいて、60%程度であると考える。あとは他の経営幹部及び、業務委託の方や派遣社員を含む一般従業員の方たちの努力の結果であると考える。室長としての全てをつなぐ役割及び、他の経営幹部と一般従業員、両者の働きがなくては、上記の結果は得られなかったと考える。

事業計画と執行役員 経営企画部 部長との1 on 1

室長としての最後の仕事は以下の通りである。マーケティング戦術立案の後、経営企画部の事業計画、すなわ ち、戦略がおかしいのでは、という仮説の元、exitの方法を含む、事業計画の修正及び試算を始めた。経営企 画はそれとは別にシリーズCの事業計画を出してきた。経営企画側の事業計画にはいくつかの問題点がある が、決定的に間違っている点が2つあった。問題点について考察すると、問題点はさらに一つに集約されると考 えても良い。メインポイントは早すぎる黒字化の時期である

それを展開すると、高すぎるバーンレート、ECではあるが店舗が絶対必要なので、元々は売上 / 地代家賃を既 存のスーツ屋より高くするという、ビジネスモデルの根底を覆す、ありえない店舗計画、それに紐づく、店舗関連 従業員の採用計画と店舗従業員に対する予想される扱い、とそこから予想されるクレーム率の高騰、及び、そのありえない事業計画を支えるジェットコースターのような資本政策である。

2016年秋から2017年1月にかけて、何度も経営企画部長と一対一で議論を重ねた。しかし、その決定的な間違いを認めず、その後となる。2017年になって何度も一対一で議論を重ねても無駄なので、株主及び、全役職 員の事を考えて、2017年1月19に全社員の前で公開で議論を挑む。その間違いを認めなければ、普通に考えて、会社は破綻への道を突き進むか、会社は残っても、実質的に超低ROIあるいはマイナスのROIとなるか、債務超過となるであろう。数値上は事業計画を変更可能であるが、仮に、その事業計画上の間違いを認めたとし ても、他の要素を勘案すると、事業計画は実質的に修正不可能に近い問題点をすでにはらんでいた。そして、 会社は破綻への道を突き進んでいく可能性が高いと判断している。役職員から見たら、そのうち、会社は倒産。 株主から見たら、exitは不可能である可能性が高い、というのが私の予想である。

しかしながら、2017年1月19日の時点では元室長として、株主との議論に及んででも、資本政策を含む、事業 計画を変更してみせようと考えていた。

そして、2016年10月から会社を仕事事由、おそらく、仕事上の過負荷での病気で不定期な出社となる。病名は自律神経失調症である。2016 年10月以降の事は上で述べられているとおりである。

そして、色々あって、会社を辞めた。

会社名変更と減資。そして、室長のexit戦略

2020/6/1に株式会社Fabric Tokyo (旧株式会社ライフスタイルデザイン)の会社情報を見ると資本金が5000万円まで減っていた。私が在籍していた当時は約13億円ほどあったと記憶している。それがなぜ減ったのであろうか?よくある勘違いの一つにキャッシュを使うと資本金が減る、というのはあるが、それは間違い。純資産が減るだけである。

ではなぜ、資本金が減ったのであろうか?おそらく、答えは100%減資処理が入って、事実上の倒産処理が走った後、 5000万円が株式として入ったか、債権の一部のデットエクイティスワップが実行されたものではないかと予想す る。かなりの数のデットが入ったはずである。デットで会社を回したのだろう。

どちらにせよ、会社は一度事実上の倒産をした。私の予想通りである。私の予想通りになってしまった。実に残念な事である。

皆で頑張って勝ち取った10億円の資本金を溶かした旧ライフスタイルデザイン経営陣の罪は重い。悔い改めな さい。必ず、exitすること。株主に適正レートで配当を出す事。無茶なハイグロースな事業計画を作らない事。従 業員に高負荷をかけないこと。お客様、取引先、従業員、銀行、株主に感謝する事。なぜ、あの会社が生き残れ たのかきちんと考える事。カッコつけたホームページを作っていますが、もうそういうベンチャー遊びを止めて、きちんとした大人の組織を作り出す事。私ほか数人の初期の功労者に対して、数千万円から数億円のベスティング付きのストックオプションを出す事。

当時の私のexit戦略は以下の通りである。1. 会社を優良中小として育て上げる。2. 株式上場はさせない。代わりに配当を出す。 3. 配当と同時に適正レートで内部留保も積みます。正直銀行はあまり信用していないの で、短コロすら出さないのでは?と思ったので、何かあった時のために、キャッシュをため込んで置くことは必要 であると考えたからである。 4. 株式は非上場でも相対で取引できる。したがって、売りたい時は相対で投資家 同士で売買してもらう。ただし、長期ホールドすれば絶対儲かりますよ、という発想であった。そういった事を盛り込んだ、財務モデルの資料も作っていた。もちろん、ROIも計算していた。しかし、当時、自律神経失調症になっ てしまい、株主や経営陣、そして全従業員に対してプレゼンをする機会が無かったのが残念である。

VC、社外取締役とガバナンス

ニッセイ・キャピタルに対して警告を出します。なぜ、あんなふざけた2017年のバーンレートと 資本政策を認めたのでしょう?確かに、2017年初頭の数億の第三者割当増資を引き受けたくれたのは事実です。感謝します。とはいえ、旧LSDはぶっちゃけ、最速で2016年12月末で資金ショート(残キャッシュがゼロになる。すなわち、倒産)する可能性がありました。

ただし、2016年秋に約1.5億円の資本増強があり、なんとか、しのげました。一度、株主会議(正式名称NCC Report。代表取締役と執行役員、ニッセイ・キャピタルの担当VCの会議。通常 は室長も部長も出席しない。取締役会は当時は存在しなかった)にグロースハック室 室長として出た事がありま す。そこで、担当VCが執行役員経営企画部 部長 兼 CFOに向かって言ったセリフを今だに覚えてます。「何々 君、強気だね」当時、私はバーンレートが高すぎる、最速で2016年末に資金ショートする可能性があると認識し てました。なぜ、バーンレートの設計に問題があると、早期に気づかなかったのでしょうか?なぜ、気づいていた のなら、早期に修正しなかったのでしょうか?

2016年初夏に一回、人斬りを実行に移しました。しょうがないのかもしれません。しかし、人斬りの数が少なくて、あまり効果がありませんでした。

なぜ、取締役会を設置しなかったのでしょうか?なぜ、VCで取締役陣を複数送り込まなかったのでしょうか?な ぜ、代表取締役 執行役員 CEO 兼 マジョリティ投資家などというありえない設定を許すのでしょうか?これは、 私が経験してきたベンチャー通例です。日本にWeb系ベンチャーができて20年ほど経っているかと思います。なぜ、同じミスを繰り返すのでしょうか?情報共有はしていないのでしょうか?

過去に、ハイテクベンチャーの研究開発のトップを勤めた事があります。ハイテクベンチャーに対応できるVCがいないに等しいのはしょうがないのかもしれません(とはいえ、実はダブルマスター、すなわち、機械/情報/物理、いずれかのマスターとMBAホルダーなら対応できるかもしれません)。

私の一般のWeb系ベンチャーあるいは、IT系事業会社に対するVCの見解は以下の通りです。ビジネスモデルは理解できるでしょう。色々足りないことは横の繋がりを生かして、繋げてくれるかもしれません。でも、なぜ、同じミスを繰り返すのでしょうか?なぜ、いつも過少資本しか入れないのでしょう?なぜ、いつもバーンレートの設 計でミスるのでしょう?なぜ、いつも代表取締役 執行役員 CEO 兼 マジョリティ投資家という存在をゆるすのでしょうか?

委員会等設置会社はご存知でしょうか?ぜひ、一度、会計、ファイナンス、システム、組織論、アントレについて学ぶ事をお勧めします。

とは言え、VCは必要だと思います。なぜでしょうか?答えは産業あるいは企業の育成と勃興だと思います。 つまるところ、産業の創造です。単に金を儲ける事だけがVCの目的でしょうか?もちろん、私も含めて金儲けは 誰でも必要です。でも、それだけではないと思います。産業の創造に賭けているVCがいると信じたいです。

負の所得税の話しオペレーションの話しはあくまでも日本の守りの戦略です。では、攻めの戦略、すなわち、成長戦略はなんでしょうか?答えの一つはVCによる新規事業あるいは産業の創造だと思います。

また、何処かで会うかもしれません。その時はよろしくお願いします。

その、ニッセイ・キャピタルのリードインベスターは後に社外取締役になったが、その後、辞めたようである。解任されたのかもしれないし、自分で降りたのかもしれない。また、たまにこの会社の社外取締役は総入れ替えがあるようである。リーダー陣もそうだし、創業後結構経っているのに、いい加減会社が安定しない。経営幹部は何をやっているのかと、正直思う。

2016年末の中期経営計画の一部とシナリオの分岐

2016年秋冬、旧LSDでシリーズCの中期経営計画を練っていた。LSDは一回、事実上の倒産をしているし、経営戦略をかなり変えたので、当時の目算の一部を記述したいと思う。

結論から言うと、今頃、資本金約60億円。今から5 - 10年後に年間売上高100億円。営業キャッシュフロー率10%だったかもしれない。

月間だと季節変動がかなりあったが、当時の年間売り上げ高は誤差があるものの約1億円くらい。シリーズCで在庫リスクを取り、季節変動を抑え、CVR改善の施策を打って、リピート率を3回以上リピートの第一種リピートをそれなりにグロース。3 - 5年に一度買い直す第二種リピートもそれなりにグロース。それらの施策をPDCAサイクルを5年間回し、解析をかけ、両リピート率を向上させ、CVR10倍にして、シリーズCは終了。

ただし、本社地代家賃、店舗数と従業員人数は極小に抑えるが、一人辺り従業員人件費は厚めに設定する。少数精鋭の良い人材を集めるが、固定費を抑えるのはベンチャー経営の鉄則だと思う。

シリーズDのロードショーにシリーズCの結果を持って挑み、15 - 50億円の大規模増資をし、大規模マス・コミュニケーション戦略に打って出る。広告宣伝費10倍。CVR10倍で売上高100倍。年間売上高100億円、営業キャッシュフロー率10%。年間営業キャッシュフロー10億円を目指す。両リピートがついてくるので、疑似ARPUとLTVが上がり、サーバー代もあまり要らない。それでも、あえて中小優良なんだけどね。

そして、シリーズEで株式あるいは債権あるいは、その組み合わせで100億円から1000億円を調達し、工場を垂直統合する。工場買収代金はCFOマターで私は把握してないので、あくまでもワイドレンジでのアテである。なぜ、工場の垂直統合なのであろうか?答えは工場納期の短縮である。例えば、工場納期を1日に減らし、注文からお客様納期まで、3日でこなせば、この会社の参入障壁になるし、お客様もついてくるはずだと踏んだ。そして、競合他社をぶっちぎる。これは当時既に、アイデア自体は室長会議で執行役員 経営企画部 部長と共有していた。

これが、当時の戦略。現在はまったく違う戦略を取っている。誠実で堅実なビジネスを行い、是非とも、2015 - 2016年のオリジナル組と過去の投資家を今後の利益で儲けさせて頂きたいと思う。御社の御成功を心からお祈り申し上げます。

結言

何故、このような事を書くのであろうか?その後のベンチャーの生態系を考えての事である。多額の増資後のこのような無茶苦茶な資金の使い方と、経営戦略を野放しにしたら、後続のベンチャーが真似して痛い目に合うか、VCが保守的になって、エクイティファイナンス市場が冷え込む、そう思ったので、筆を取った。それだけである。

その後の私?起業して、NMD Soft, Principal, 戦略コンサルタント 兼 ITアーキテクトとして活動を開始した。日本のターンアラウンドのための国家戦略立案(MBA Thesis: The Modern Strategy from Japan)や日本の労働環境改善、働き方改革2のためのビジネスWebアプリケーションフレームワーク、ToyFrameworkの開発などを行なっている。

PS: 余談だが、室長は部長相当なのだろうか?それとも、執行役員相当なのだろうか?当該会社の場合、組織頭上、室は部より上に存在し、経営企画部より下に存在する。チームの時は経営企画部と同列だった。経営企画部は執行役員により運営される。従って、室長は執行役員と部長と中間体と考えることもできる。グロースハックチームを作るとき、最初はチーム定義書類で部長にお願いベースで指示を出せる事と定義し、それが通った。それが、徐々に指揮権限に近くなっていった。室長は室員に諸々の作業を頼みながら、戦略立案をしていく(たまに戦術と言っているが、それは執行役員が戦略担当で、それを立てたまで)。あれ、戦略立案をするのって取締役では?部長に対する指揮?執行役員では?

では、執行役員 グロースハック室 室長はあり得るのだろうか?それはおそらくない。ヒントは経営企画部が経営企画室でないことにある。つまり、部長の正式なタイトルは執行役員 経営企画部 部長 兼 CFOであるところにある。執行役員はおそらく、執行役員性と室長性がコンフリクトすると踏んだのだろう。

でもね、執行役員になると下手すると経営責任を負いかねないし、常に株主に対する説明を考えなければならない。株主を気にして、実務に身が入らなくなる可能性がある。決して、無責任を貫きたいのではなく、仕事がとどこっては困る、そういう事である。実際、株主対応は主に執行役員と代表取締役(取締役は当時一人のみ)が行なっていた。取締役会非設置会社であり、毎月、リードインベスターへの説明の会議が行われていた。一度だけ、アドホックに出席したが、普段は役員が対応している。その会議以外にも役員はFBメッセやメールで株主対応をしていたのだろう。

役員達のおかげで、筆者は戦略立案に集中できた。その点は役員に感謝している。

自分なりの結論はグロースハック室 室長あるいは経営企画室 室長は権限は執行役員級であるものの、執行役員でないので、経営責任を負わない。経営に準ずる権限を持たせ、かつ、機動性を持たせるため、あえてそうしているのではないだろうか。そういうポジションだと思っている。まあ、事実上、役員に近いんだけどね。非役員の雇用契約のトップなんじゃないかな。週3勤務の業務委託のお気楽プログラマとして入って、数ヶ月後に、会社のNo.3で非役員のトップに。

我ながら、面白い話だと思う。これは全て、実話である。

著者略歴

金輝俊 / Hwi Jun KIM
戦略コンサルタント 兼 ITアーキテクト

ハイテクITベンチャーのProduct Manager / Chief IT Architect、Webベンチャーのグループリーダー、外資系IT企業のProject Manager 兼 Systems Architectなどを経験。会社を離れて数年後、Webベンチャーと外資系IT企業グローバル本社は、それぞれ東証マザーズとNYSEに上場した。

ファッションテックベンチャーのグロースハック室 室長 兼 システム開発部スペシャリストに。30人4部門を参謀長として指揮統括し、約10億円の株式による増資に成功。シーリズCへと導く。その後、起業。NMD Soft, Principalとして活動を開始。

社会貢献活動として、原爆の実相を伝えるためと、東日本大震災の解析のために、Nagasaki Archive、Hiroshima Archive、Mass Media Coverage Map of The East Japan Earthquakeなどの開発と一部企画に関わった。

主な著作にThe Real M.Phil Thesis: The Mathematical Foundation of Smart Material Systems / Yet Another Mori-TanakaMBA Thesis: The Modern Strategy from Japanがある。

筑波大学 第三学群 工学システム学類 学士(工学) First Class (イングランド基準。70%以上がA評価)

Coventry University大学院 Control Theory and Applications Centre, Master of Philosophy (Upper Master, Research Degree)。飛び級入学。返済義務無し奨学金付き。

主な受賞にアレスエレクトロニカ展Honory mention、経済産業大臣賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。

詳細なプロフィールはこちら:https://www.khj1977.net/profile/

以上

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