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Coの時代のキャリアデザイン #印刷まわりの連続起業家

「コワーキング」という言葉がまだ知られる前、その面白さを直感的に理解し、別で契約していた仕事場を解約、PAX Coworkingの初期のメンバーとなった堀江賢司さん。彼は、コワーキングの人の動きをフルに利用して、次々と新しい仕事を生み出す。そんな堀江さんから見た、場を作った僕へのインタビュー。

チャレンジすることで何かが生まれる。それが堀江さんと僕の共通認識。

1つやるまではハードル高いんですけどね。やってしまうと、チャレンジのハードルは下がります。というのと、新しいことは盤石ではなく脆弱だから、いくつかのネタを組み合わせてポートフォリオを組んでおかないと、下手したら一気に崩れちゃうこともあるでしょうし。「なんでそんなにいっぱいやってんの?」とか「集中しろよ」とか言われることがあるのだけど、これは起業家の防衛本能でもあるんですよね。

株式会社旅と平和がターゲットにしている「旅人」の像について。

旅行しても「旅人」ではない人がたくさんいます。ツアーに行って、観光地の確認をして、写真を撮って無責任に感想を言うだけの人たちは「旅人」ではないです。そこにいる人に話しかけるとか、文化や習慣を調べたり聞き出したりして理解するとか、与えられるのを待つのではなく、自分で動いて吸収していく人、それが「旅人」です。もっというと、海外にまで行かなくても、積極的に自分の意志を持って喜んで学校や会社にいく人、社会に対して自分の思いを持つ人も広い意味で「旅人」と呼んでいます。

パクチーハウスに来る人は「旅人」が多かった。店の知名度が向上するに従い、そうでない人も増えたが。そういう「非旅人」について。

飲食店で「オススメは?」とかすぐに聞いてくる人が結構いますよね。僕が好きで作った料理とか、その日売りたい料理とか、もちろんあるんですが、その人のことを何も知らないのにオススメするのは無責任だし、そういうの聞かれるの大嫌いなんですよ。自分で考えろよって思っちゃうんです。
店を作った背景とか、一つひとつの料理に込められた意味を考えたり知りたいと表現したりしながら、ゆっくりコミュニケーションを取ることが、僕とお客さんのあるべき関係です。その上で、その人なりの意見を表現してくれ、アイデアなりインスピレーションをいただく。そういう対等な関係でありたい

お客さんと店、生産者と消費者、店舗責任者とスタッフ。これらがフラットであることが僕の願いです。支配しても面白いものは生まれない。

店の雰囲気は、店がコントロールできるのか。

お店って店主やスタッフがデザインし、物を配置し、雰囲気づくりをします。でも、僕が思うに、来る人によって空気感がガラっと変わるものなんですよ。ヤクザみたいな人が来て大声出したら、一瞬で雰囲気が悪くなるじゃないですか。そこまで極端じゃなくても、周囲に気遣うことができない人とか、店のスタッフに対してやたらと高圧的な人などは、少しずつ、しかし確実に、店にダメージを与えていくんです。それに対して毅然とした態度を取るべきだし、自分たちの方針に従って、その人をうまいこと追い出さないと致命傷になります。

あらゆる人と対等な関係を築こうと思わないと、そこから綻びが生じる。

お客さんに自由な行動をしてもらうほど、新しい発見があり、新しい境地にたどり着けると、僕は10年間の飲食店経営の経験から学びました。

飲食店のセオリーより、自分が相手の立場に立つことを重視してみたら、自分の発想を超えるヒントが毎日もたらされた。

肩書に代表される名刺に書いてあることって、「何で稼いでるか」でしかなくて、その人のやりたいこととかキャラクターとはほとんど関係ないです。僕の関心事はその人の所属ではなく、本当は何を考えていてなにをやりたいかってことなんです。

「肩書で人を判断しない」のは、そこに本質的に意味がないから。

続いて、企業は永続すべきという「常識」について。

目的がもしお金だけでなれば・・・。創業者と継承者の温度感は全然違うんです。どちらが優れているとかではなくて、続けばいいっていうもんでもないと思うようになりました。
パクチーハウスなんていう変な店を作ったので、常に変じゃないとがっかりされることが分かってきました。僕と話したいという人は、僕がいないとがっかりします。もちろん、僕がいなければスタッフにお客さんがつくし、僕より他のスタッフとの相性がいい人もいるので、それはそれでいいのですが、いろいろ試した結果、薄くなってはいけないのだ、人に任せるだけが全てじゃないなと結論づけました。

自分の組織のほかに、地球や宇宙について考えると・・・

すべての会社が本当に、日本にとって、地球にとって価値があるのでしょうか。競争の勝者であることは間違いないけれども、続けばいいというものではない
組織を守る、家を守るというのは気持ちとしてよく分かります。分かるんですけど、僕の場合は自分のプライドとかよりも結果として日本にパクチーが食材として定着したり、「パクチー料理」というジャンルが確立する方が目的にかなっていると判断したわけです。その方向に向かっている限り、それを僕が独占しなくてもいいし、他の誰がやっていてもいいのです。

そして、店舗を閉じたことがYahoo!で大炎上。

無責任に発言する人がネットにはいかに多いか、僕を知る人たちは炎上をみてよくわかったそうです。

自分の理解を超えたことに対して突っ込みたい人が、インターネットには多いじゃないですか。発表の前に僕もPAX Coworkingのメンバーとして説明を受けたし、事前にどのぐらい丁寧に閉店に向けた作業をしていたかを垣間見ていたので、ネットのコメントって無責任だなぁと実感できました。
閉店の発表は89日前だったけど、実際の閉店計画には2年かけましたので。そんなことは知らないし、知ろうともしない人がコメント群を構成していました。

閉店はすべての終わりではない。

パクチーハウス東京という店舗は経堂の商店街から消えました。でも、お客さんは、単に食事でお腹を満たしただけでなく、初めて見る料理を食べたり、隣の人と友達になったり、店内の展示から世界を垣間見たり、さまざまな経験をしてくれました。彼らの経験は店舗の消滅で消えるものではないんです。そういう意味では、コミュニケーションを起こすことを目的に10年以上運営したパクチーハウスは、永遠に消えることはないんです。

堀江さんが、PAX Coworkingやパクチーハウスで出会った人と新たな仕事を生み出し続けているのが何よりの証拠だ。

ビジネスの相談に来た人に取るスタンスについて。

気をつけているというか、僕自身の特質かもしれないけど、相手が言ったことを否定しないです。
相談に来る人のほとんどは「やりたい」んです。そのためのハードルが、会社員であることとか、今の給料がなくなったらどうしようという情緒的なことだったりする。僕はそんな制約を取り払ってあげようと思うからこそ、二言目には「会社辞めれば!」というんです。

その根拠は。

「会社辞めれば」というアドバイスをするとみんな喜ぶんです。誰もそんなこと言ってくれないからでしょう。そして、決断は自分でします。
新しいことを始めた人は後悔しません。うまく行くかどうかは分かりませんが、起業は修正の連続だし、真剣に頭と身体を動かしてみて、アイデアを軌道修正して、それまで見えなかったものが見えてくるからです。パッションを燃やし始めると幸せになります。自分の行動に満足できるからです。

僕の行動を、堀江さんは「他人の人生をこじらせる」と表現した(笑)。

僕らの世代は「会社に入るのがアタリマエ」という、すでに崩れたことがいまだに盲信されているので、それから逃れられた自分たちを「こじれてる」と表現しちゃっていますが、今の学生の大部分とは言わないけど「会社に入らない」って決めている人、昔に比べるとだいぶ多いと思うんですよ。新型コロナはそれに追い討ちをかけると思います。会社がどうなるか分からないということがよくわかっているし、自分で人生を組み立てることがやっとアタリマエと思われるようになりつつあります。まぁ、この50年ぐらいがおかしかっただけだと僕は思います

「働き方改革」感について。

「働き方改革」って、働くのは「悪」だからできるだけ短い時間にしましょうっていう思想が根底にある気がするんです。
自分で動かない人は、「搾取される」という発想が根底にあるんでしょうね。世の中の流れでしょうし、格差も広がってきたし、そうした中で最適な満足を与えるということで調整が必要ということにすぎないと思います。嫌だったら会社辞めればいいんですけどね。

余白があればその改革はいらない。

旅することはキャリアにとって大事。散歩するとか、山を歩くとか、すぐできることも含めて、キャリアのなかにそう言う余白がないと、苦境に陥ったときに自らの意志で抜けられないということになります。
社会が行き詰まって来たから、「働き方改革」という概念もでてきたんですよね。イケイケドンドンの時代にも悩む人はいたはずだけど、そういうひとは無視されて闇に葬られてお終いです。

イノベーションは連続性からは生まれない。

常識で考えるとクリアできないことが、世の中にはたくさんあると思うんです。便利で豊かだと、なにかをする必要を感じないという感覚は分かると思うんですが、なんらかの制約があると、発想が飛躍したり、大きなハードルを乗り越えざるを得なくなります。続けることができない、とか、意図的に流れを遮断することで、はじめてイノベーションの萌芽が生まれるんです。

コロナはチャンス。

いろいろな人としゃべっていて、コロナで生活がガラリと変わったとか、考え方を変えざるを得ないと嘆いている人と、全くやっていることは変わらないという人がいることに気づいたんです。例えば、ミュージシャンがライブハウスで活動できない状況ですが、それを嘆いて補償を求めたり同情を買おうと言う人がいる一方で、ライブハウスに行けないならYouTubeに演奏動画を投稿して新たなチャンスを掴む人もいるわけです。やり方を変えざるを得ないのは確かです。が、自分のやりたいことはあるなら、それをやり続ければいいだけです。
いろいろなものが変わるチャンスってそうそうないですよね。楽しくなってきました。これまでの発想でできないことが多いから、どんどん新しいことをやらなきゃいけない。


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パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。