怨念が時を超えてやって来る『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021年)感想
★2.5/5
イギリスの魅力
「ソーホー」って何?ということは、ひとまず置いておくとして、舞台であるイギリスの魅力が存分に発揮された作品だと思います。片田舎からロンドン、そしてソーホー地区まで、アメリカンな雰囲気と違ってどこか洗練された感じが気に入りました。バーではなく「パブ」が登場し、二階建てバスもしっかり登場します。下宿先の雰囲気にも、イギリスっぽさを感じます。シャーロックホームズが住んでいたのもこのような建物でしたし、イギリス、特にロンドンではリーズナブルに暮らそうと思うと定番なスタイルなのでしょうか。
上京物語
進学や就職、転職などで上京した人にとっては、胸が痛くなるシーンばかりだと思います。私も似たような経験をしましたので、主人公のエリー(トーマシン・マッケンジー)を観ていて辛いものがありました。イキったルームメイトやプライバシーの守られない空間、都会の怪しい空気感など、非常にリアルに表現されていると思います。きっと共感する人も多いかと思います。個人的には、タクシーを途中で降りてしまうシーンが印象的でした。運転手の言動は親切心からなのか、下心があってのものなのか…。コーラ1本を仕方なく買うエリーを思わず応援したくなりました。こうした導入がある故、イメチェンしたりデザインが褒められたりとうまくいっているパートは、気持ちが良かったです。
というより、トーマシン・マッケンジーがびっくりするほどかわいいです笑。
非力過ぎでは?
さて、本作の核ともいえるエリーの能力についてです。雰囲気やビジュアルは良いものの、エリーがあまりにも翻弄され過ぎなのではないかという印象を受けました。過去の追体験というのは、やはり『シャイニング』(1980年)っぽいですし、自身の能力に苦悩するところは、『シックス・センス』(1990年)に通ずるところもあり、王道で悪くないと思います。サンディの夢がぶっ壊れていく過程も悲劇的で観応えがあります。しかしながら、エリーが非力過ぎてややストレスです。恐怖に立ち向かう姿が心を打つと思うのですが、本作は真逆です。心打たれません。女性の警官が気にかけてくれたからこそ真犯人の自白に繋がったわけで、偶々に過ぎません。ラストシーンのファッションショーがうまくいったのも理由がよくわからないですし、鏡に映る母親は一体どう捉えたらいいのか、なんだかよくわからないまま気づいたらハッピーエンドに突入して終わった感じです。
やや偏りがあるかも
本作は、男たちによって身も心も壊されたサンディの悲劇が中心となっているので、多くの場面で「男」を敵役として描いています。そのため、男女で鑑賞後の感じ方が違うのではないかと思います(お互いに感想を共有・比べてみるのもいいかもしれませんね)。私としては、「男」という存在全てへの嫌悪感を露骨に感じてしまって居心地の悪さを感じました。
蛇足ではありますが、エリーが黒人の友達と下宿先に帰ってくるシーンについてどう思いますか?私は「ざけんな!」と思いました笑。殺人事件のビジョンが見えたからといって、あんなに大騒ぎされた上に拒絶されたら男としてショック以外の何でもないですね…。帰宅するまでの雰囲気が素敵だっただけに、よりモヤっとしました。
以上
一言
ホワイトハウスコックスよ永遠なれ
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