食について語るときに僕が語ること
こんにちは!
パティシエの鈴木です。
オンラインでケーキ屋を運営しています。
○お取り寄せチーズケーキ専門店 パティスリーベル
○ガトーオペラ専門店 クインテットドペラ
先日とある天ぷら屋さんに行ってきました。
商業施設に入ってるテナントで風情ある佇まいのお店です。
注文したのは1,200円の天丼定食。
1,200円の天丼定食の中身ってどんなのを想像しますか?
北海道とか北陸だったらすごいのが出てくるのかもしれないですけど、都内で1,200円の天丼定食を頼むと大体こんな感じです。
海老1匹〜2匹
かぼちゃ1カット
ナス1カット
紫蘇1枚
の天丼に味噌汁と漬物がついて1,200円。
こんなのを想像して、このお店でも1,200円の天丼定食を頼みました。
出てきた天丼定食はこちらです。
ジャジャーン!
写真が下手で見えにくいのですが、中に入ってた内容はこちら。
海老2匹
万願寺とうがらし
イカ1きれ
かぼちゃ1カット
海苔
ホタテの貝柱ゴロゴロ
芝海老4匹
ナス1カット
これにほうれん草と油揚げのおひたし柚子風味
漬物と佃煮
味噌汁
ご飯と味噌汁はおかわり自由。
これで1,200円です!
コスパ最高です!
天ぷらは揚げたてサクサク、タレも濃すぎずほどよい甘さ、付け合せのお浸しと漬物は天ぷらの口直しとしてぴったりの味。
味も抜群。
しかもサービスも良いです。
スタッフの皆さんが丁寧で、心地よいおもてなしをしてくれます。
いやー!最高だぁ!
消費者としてはこんな良い店ほっとけないので、早速行きつけのリストに追加します。
一方で、
自分は食の生産者でもあり販売者でもあります。
そこで複雑な気持ちになってしまうのです。
消費者を甘やかしている!
こんなに良い店が乱立してしまうと、消費者はこれがスタンダードになってしまう。
お値段以上の内容、味、サービス。
この店の高いクオリティーの天丼定食1,200円は、もう価格破壊です。
価格破壊が当たり前な世の中になってしまうと、日本の食のデフレはどんどん進んでしまうと不安になってしまうのです。
例えば他の国を参考にしてみると、
オーストラリアではスーパーの野菜や果物は日本よりも安く購入できますが、レストランでの食事は日本の倍近くします。
(もちろん店によってピンキリですが)
朝食だと、日本ではワンコインでコーヒー、トースト、なんならサラダか果物もついてくるけど、
オーストラリアでこのセットを頼んだら2,000円から3,000円します。
それがスタンダードなので、値下げ競争をしないし、卸業者や生産者に値下げを迫ったりもしないです。
高い最低時給(2,000円近く)も守られています。
もちろん良い面と悪い面、それぞれあるので一概に良い悪いと言えないですが、
食の生産者という立場で考えると、良いクオリティーの製品を継続的に提供するためには、そうしていけるだけの対価が必要だと思うのです。
なので、この天ぷら屋さんは消費者としては毎週でも通いたい最高のお店ですが、
同じ食を生業にする生産者としてはこれがスタンダードになってしまったら困るな、という気持ちになるのです。
複雑な気持ちです!
自分のオンラインショップでもたまに割引セールや送料込みのキャンペーンなどを行いますが、
製品の値段は自分とスタッフ、工房のオーナーさん、長年付き合っている業者さん、皆とこれからもずっと一緒に商売していける価格に設定しています。
そして購入してくれたお客様が、この値段と味ならまた買おうと思ってくれたら本当に言うことなしです。
天ぷらを食べながら、
自分の考えが20年後もやっぱり正しいと思えたらいいなと、
そしてこの天ぷら屋さんには来週また来ようと思ったのです。
2021年9月2日
パティシエ 鈴木 崇志